83:セレスティアとハインツの相談事
今日はユージィン邸に、セレスティアとカイエルとハインツはユージィンに相談事がある為、訪れていた。セレスティアとハインツはテラスに向かったが、カイエルは先に姉に用があると、姉たちの気配のする部屋に向かった。そこは台所であった。
「・・・姉貴何やってんの?」
「見てわからぬか?お菓子を作っておるのじゃ。」
「・・・なんでそんなことやってんの?」
「ここに通いで来ているメイドのジェシーに教わったのじゃ。興味本位でいろいろと学んだのじゃが、なかなか面白くてのぉ。端的に言えば、ハマったのじゃ。」
日中はラーファイルだけでなく、アンティエルもユージィン邸にいる為、通いのメイドであるジェシーにアンティエルも家事を教わっているのだ。二人とも家事は性に合うらしく、特にアンティエルはお菓子作りにドはまりしていた。
「カイエル、姉さんの料理はかなり美味しいんだよ。この間はフェルディナント王子も『美味しい美味しい!』すごく喜んでてさ、姉さんそれから気をよくしてかなり料理にハマっちゃってね。中でもこのお菓子作りがかなり得意なんだよ。できたらテラスに持っていくからさ楽しみにしてて!」
そう言うラーファイルも、ユージィン邸を出れば、ハインツと暮らすことを夢見ている為、家事のスキル上げには日々研鑽していた。
「で、何の用じゃ?何か聞きたいことがあって、妾の元に来たのであろう?」
アンティエルはカイエルを見ず、お菓子の生地を作りながら自身の後ろに立っているカイエルに聞いてみた。
「あぁ、実は500年前のことなんだけど・・・」
カイエルは記憶が戻って思い出したことがあり、それを確認するためにアンティエルやラーファイルにその後のことを聞きたかったのだ。
ユージィン邸、テラスでは____
「そうだね、セレスティアとハインツでは少々事情が異なってしまうね。」
4人はテラスでお茶を飲みながら、相談事を話していた。セレスィアはカイエルの記憶が戻ったことから、寄宿舎を出ようと考えていた。さすがに記憶が戻ったカイエルをいつまでも竜の厩舎に居させる訳にいかなかったからである。
「そうなんです。セレスティアはカイエルが相棒である飛竜ですから、寄宿舎を出ても問題はありませんが、僕はすでに相棒のフィンがいますからね。ラーファイルが一緒だと、見つかった時に、規約違反になってしまうので、僕は5年待ったほうがいいのではないかと思っています。」
「その事なんだけど・・・」
イシュタルが口を挟んだ。
「フィンは私の眷属の子だからね、あの子からも話を聞いているのだけど、辞退しても構わない、と言っているのよ。」
ハインツの相棒のフィンは火属性の飛竜であるため、イシュタルから目を掛けられていたのだ。
「フィンがそんなことを・・・」
ハインツは流石に飛竜の言葉を理解することはできないが、最近フィンの様子が少し遠慮気味であるのは何となくわかっていたが、イシュタルの言葉を聞いて合点がいったのだ。
「僕としては短い間でとはいえ、フィンとはバディを組んできたのでそう簡単に切り捨てられるものではないんですがね・・・」
ハインツはフィンに気を使わせてしまったことを申し訳なく思っていた。
「ふふ、優しいのね。そんな貴方だから、ラーファイルもフィンも貴方の事が大好きなのね、きっと。」
イシュタルは敬愛の目でハインツに微笑んだが、イシュタルはかなりの美女なので、ハインツは恋愛感情はないとはいえ、真っ赤になってしまった。
「で、貴方はどうしたいの?」
「・・・欲張りかもしれませんが、僕はフィンを切るつもりはありません。だから・・・」
「いいよ、僕待つよ?あと4年と少しでしょ?それぐらい僕待てるから大丈夫だよ。」
その時、ラーファイルは、トレイに出来立てのお菓子を載せて、会話に入ってきた。
「ラーファイル・・・いいのか?」
ラーファイルはトレイの出来立てのお菓子をテーブルに載せながら、言葉を続けた。
「うん。ハインツは優しいからさ、無理にフィンと切ったりしたらシコリが残るでしょ?それに僕、フィンとも仲がいいんだよ?彼にはちゃんと僕からもお願いしとくからさ。5年経ったら、寄宿舎と厩舎出て3人で暮らそ?それまでに僕は家事スキル上げておくからね!」
ラーファイルは満面の笑顔でそういった。ハインツは堪らなくなり、いきなりラーファイルを抱きしめた。
「!!」
いきなり抱きしめられると思っていなかったラーファイルは真っ赤になった。その時持っていたトレイは落としてしまったが、床に着地するまでに寸でのところで、セレスティアがキャッチしていた。
「ラーファイルありがとう!ごめんな!5年経ったら絶対すぐに一緒に住もう!絶対に」
ハンイツのそんな言葉に、ラーファイルは嬉しさが込み上げていた。
「うん、約束だよ。絶対に一緒に住もうね。僕待ってるから。」
ラーファイルは嬉しかったのだ。自分の男でもあり、女でもある身体をすんなりと受け入れてくれたハインツが。だから、ハインツを困らせるようなことはしたくなかったのだ。
「ふふ、ではハインツはこれで解決かな?」
抱き合う二人の様子をユージィンもイシュタルもセレスティアも温かい目で見守っていた。
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