57:カイエルの失踪
_____あれから、1週間が経った。
セレスティアは本当に訳が分からなかった。あの時、カイエルは頭を抱えて苦しんでいた。アンティエル達も『竜の祖』の本来の姿を見て、きっと記憶が揺さぶられたのであろうという見解を示した。まだ第二の封印は解けてはいないことから、カイエルは全てを思い出せてはいないとイシュタルから聞かされていた。そして別途に、現実的な問題としてセレスティアは竜騎士なのに、相棒である飛竜がいない状態となっているのだ。本来であれば。
「ラーファイルさんごめんね。」
『ギャウギャウ。』
セレスティアは飛竜に乗っていた。黒い飛竜であるが、カイエルではない。あの場は箝口令を敷かれて、カイエルがあの日から行方不明になっていることは、極秘事項となっていた。その代わりに、ラーファイルが代役を買ってくれたのだ。飛竜に化けることは造作もないことらしく、ラーファイルが飛竜に姿を変えてくれてはいるのだが、ただカイエルの鱗ほど黒金剛石を思わせるまでにはいかず、ある程度はごまかしが利くが、見る人が見れば可笑しい事に気付くレベルなのだ。ラーファイルいわく、
「大丈夫!指摘されたら、ちょっとお肌の調子が悪いとか言っとけばいいって!」
と、軽く言うものだから、セレスティアも少しだけでがあるが、気持ちは楽になった。カイエルがいなくなった問題は何とかごまかすことができたが、敏い人にはわかるものらしく、セレスティアを心配する声もあった。
「セレスティア、最近元気がないけど大丈夫?」
「ルッツ・・・そんなことないと思うけど、どうしてそう思ったの?」
「うーん、そうだね、何て言うか、最近カイエルとの絡みが少ないというか、前と少し違うというか・・・まぁ俺の気のせいかもだけど。」
さすがルッツは伊達にセレスティアに惚れているだけではなかったらしく、彼女の変化に気付いていた。
「なんか心配かけてごめんね。私は大丈夫よ。」
心配かけまいと、微笑むがどこか儚げで、ルッツは何かはわからないが何かがあったのであろうことはわかった。
「セレスティア・・・あの、その俺じゃ頼りないかもしれないけど、もし何か悩んでいるのなら、相談にのるからさ。」
セレスティアは目を見開いた。ルッツに心配されているということは、自分でも知らずに態度が出てしまっているということだ。仲間であるルッツの気遣いはセレスティアにとって、有りがたいものではあったが、さすがに内容をいう訳にいかなかった。
「ありがとう。ルッツ。でも本当に何でもないから。」
「そ、そうか。わかった。でも、これからももし何かあれば俺力になるから!」
ルッツは、セレスティアに何かがあったのはわかったが、セレスティアが話さないのであれば、これ以上は突っ込む訳にもいかないので、ただ一人で悩まないで欲しいとセレスティアが去っていく後ろを姿を見て願っていた。
セレスティアは竜厩舎に行き、そうだ、このままではいけない。きっと今の状況は待っていては進展しない。落ち込んでいる場合ではない。何か手立てを講じなければと、セレスティアは奮い立った。
「ラーファイルさん、週末に叔父様たちに相談があります。力にになっていただけませんか?」
『ギャウーー!』
黒い飛竜に擬態しているラーファイルはまるで「もちろん!」と言っているようであった。
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