53:『竜の祖』(3体)とユージィンの談合

 「でさ、姉さんは結局具体的にどうするつもりなの?」


 ラーファイルはアンティエルが一体何をするのか気になったので、訊ねてみた。


 食事を終え、ユージィンとイシュタル、アンティエル、ラーファイルの4人でテラスで食後のティータイム(ユージィンはお酒)をしていた。


 「・・・人如きが妾を利用しようなどど片腹いたい。話だけで納得するのならば、寛容な妾は特に何もせぬ。だが、邪な考えを持つようであれば・・・」


 アンティエルはカップを手に取りながら、表情は微笑んではいるが、目は全然笑っていなかった。


 「うん、アン姉さん全然笑えないわね、ソレ。まぁ、でもその通りだと思うわ。」


 「なんだったら、俺、じゃなくって僕も加勢するよ!」


 なんだがぶっそうな話になってきたところで、ユージィンが入った。


 「まぁまぁ、ともかくはフェルディナント王子はコルネリウス王に説得を頑張るようだから、温かい目で見守ってあげよう?」


 「そうね、ユージィンの言う通りだわ。」

 

 「そうじゃな。妾とて、番が頑張ると言っているところへ水を差す気はないのでな。」

 

 「なんだ、つまんないのー」


 ラーファイルはつまらなそうに、口を尖らせていた。だが、次の瞬間思い出したかのように話題が変わった。

   

 「あ、そうだ。ねぇねぇイシュタル、前から気になってたんだけど。」


 「何、兄さん?」


 「ちょっ、今は兄さんやめてよ。僕、女の子寄りにしてるんだから!」


 「あら、そうだったわね。・・・じゃラー姉さん。」


 ラーファイルは、呼び名がいまいち納得いかなかったが、


 「なんか微妙だけど、まぁいいや。なんで飛竜の時はイールって呼ばせてるの?」


 「飛竜になってる時は仕事モードだもの。人化の時はちゃんと番として呼んでほしいからよ。」


 「なんだか、よくわからぬのぉ。」


 アンティエル的には、呼び名を分ける意味がよく理解できなかった。


 「あー僕はわかるかも!飛竜の時と一緒にされたくないんだよね!わかるよ、そういうの!」


 ラーファイルは目を輝かせて賛同した。 


 「僕は、イシュタルが望むままであれば何でもいいんだよ。」


 「うわーーお熱いなぁ、あー本当にいいなぁーイシュタルとユージィンはラブラブでさ。」


 「ラー姉さんもいずれはなるわよ。ね?」


 イシュタルとユージィンは顔を見合わせて、微笑んだ。


 「ううっ、やっぱりその呼び方はちょっと微妙かも。」


 「お主は文句が多いのぉ。」


 ラーファイルは気を取り直して、もう一つ気になっていたことを聞いた。


 「あ、そういえばさ、カイエルはどうだった?カルベルス王国の沈没の話がでたんでしょ?」


ユージィンとアンティエルは顔を見合わせ、


 「残念だけど、彼はピンくることもなかったね。僕も思い出すきっかけにはなるかなって思ったんだけど。」


 それを聞いて、ラーファイルは溜息をついた。


 「そっかぁ・・・やっぱり封印が解けないとダメなんだろうね。だけどあれだけ、番はもういらない!とか言ってた奴がすごい変わりようだものね。」


 イシュタルは、真剣な顔をして、思っていたことを告げた。

 

 「きっと・・・覚えていないからよ。今は本能のままに番を求めただけよ。」


 それを聞いてラーファイルは驚いた。


 「え?じゃ記憶が戻ったら?」


 「恐らく葛藤するじゃろうな・・・」

 

 「「「・・・・」」」


 三人の姉達は、カイエルが今後封印が解けた時に待ち受けるであろう苦悩を思うと、あの時、カイエルにした封印はルールとはいえ、本当に良かったのだろうかと、今更ながら考えさせられたのであった。

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