「おはよう」はいつもボクから。

鈴木KAZ

1.

「おはよう!」

サトルは丸イスにどかっと腰を下ろし、カバンから焼きそばパンを取り出した。


「どう? 調子は?」

袋から半分出した焼きそばパンを手早く口にねじ込み、パック入りコーヒーにストローを突き刺して、ぎゅうっとひと吸いした。焼きそばのソースと甘いコーヒーのハーモニーがいかなるものかは個人の感想によるが、とにかく時間がないのだ。


「いやー、感動したわ。

 昨日の 鈴木とおるvsベイダー戦!」

サトルは目を閉じ、昨晩のプロレス番組の熱い試合を思い出しながら、パンとコーヒーがなくなるまで名場面のポイントを解説していった。


「ふう。

 あ、もうこんな時間か! んじゃ、また!」

ゴミ袋をカバンにねじこみながら足早に病室を出たサトルは、停めてあった自転車に乗り、自分が通っている高校へと戻って行った。




昼休みのチャイムとともにダッシュで教室を出て、購買部でテキトーなパンと飲み物を手に入れそのまま学校を抜け出す。そして近くの月極駐輪場に停めてある自転車で ミサのいる病室へと駆けつけるのがサトルの日課であった。


「おはよう」

ミサに最初にかける言葉はいつも決まっていた。


昼休みに病院通いをしているのはの面会時間の都合だ。そしてこの時間に朝の挨拶をするのには理由があった。


1日も早く目覚めて欲しい ──


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