「おはよう」はいつもボクから。
鈴木KAZ
1.
「おはよう!」
サトルは丸イスにどかっと腰を下ろし、カバンから焼きそばパンを取り出した。
「どう? 調子は?」
袋から半分出した焼きそばパンを手早く口にねじ込み、パック入りコーヒーにストローを突き刺して、ぎゅうっとひと吸いした。焼きそばのソースと甘いコーヒーのハーモニーがいかなるものかは個人の感想によるが、とにかく時間がないのだ。
「いやー、感動したわ。
昨日の 鈴木とおるvsベイダー戦!」
サトルは目を閉じ、昨晩のプロレス番組の熱い試合を思い出しながら、パンとコーヒーがなくなるまで名場面のポイントを解説していった。
「ふう。
あ、もうこんな時間か! んじゃ、また!」
ゴミ袋をカバンにねじこみながら足早に病室を出たサトルは、停めてあった自転車に乗り、自分が通っている高校へと戻って行った。
昼休みのチャイムとともにダッシュで教室を出て、購買部でテキトーなパンと飲み物を手に入れそのまま学校を抜け出す。そして近くの月極駐輪場に停めてある自転車で ミサのいる病室へと駆けつけるのがサトルの日課であった。
「おはよう」
ミサに最初にかける言葉はいつも決まっていた。
昼休みに病院通いをしているのはの面会時間の都合だ。そしてこの時間に朝の挨拶をするのには理由があった。
1日も早く目覚めて欲しい ──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます