「元勇者、極東の島国へ行く」の短編集

いちのさつき

第1話 異世界転移日記()

1枚目前半


父さん、母さん、姉さん。お元気でしょうか。竹田友哉はこちらにいます。 大地震で死んだと思ったら、実は生きていて、知らない所に転移していました。


良くあるネット小説の展開でとても驚いています。 状況が全く分からないし、整理しようと思って、ジェスチャーで手当てしてくれた人からどうにか紙数枚と羽ペンを貰って書いてる次第。


良い物だなって思うんだけど……俺に渡していいのこれ。


分かっている事。

①生きていて、知らない所に転移してた。

②エルフ、獣人、鬼っぽいのがいる。

③多分死にかけだったのからか、ベッドで寝てた。誰かが治してくれた?

④一番の問題だと思う。喋ってのコミュニケーションが出来ない。オワタ。


というような感じです。どうしましょう。


正直無敵とか無双とかハーレムとか、どうでもいいです。誰か俺に知識を与えてください。


見回りが来たので棚に隠します。



 初めてご飯を食べました。シチューとパンでした。普通に美味かった。ちょっと味が薄いかもしれないけど、文化が違ったらこんなもんだろうし。


流石に眠くなったのでここまで。



 おはようございます。塩漬けの肉とパンを貰いました。しょっぱい。塩が強すぎて、水を飲む羽目になりました。日本人でもキツい。多分じいちゃんでも何かしら言いそう。


暇になったのでゆっくりと歩いて、窓の方に行きました。遠くに大きい建物があって、外にいる人達、魔法を使ってました。炎とか水とか氷とか。魔法のある異世界だと判明。俺にも出来るかな? 


少し慣れてからで良いから、学校とか行きたい。友達出来るだろうし。波乱万丈じゃなくていいから。





2枚目


 金髪赤目エルフ美女が来ました。これがボンキュッボンって奴か。白いローブを羽織った賢者って感じ。 そして俺にとって朗報がありました。エルフ美女、日本語喋れる! 助かったあああああ!


マーリンと言ってる。俺の知る創作上のマーリン、男女関係なくチートだった記憶が。この人も例外じゃなさそう。オーラが。 情報もらえました。やったね!


と言う事でまとめます。


①ヒューロ王国という島国にいる。

②俺が異世界から来たのは確定した。

③日本語が喋れるのは似たような国家があるから。マジか。

④とある計画で巻き込まれた形で俺はこっちに来たっぽい。マーリンさん、申し訳なさが出てた。

⑤心に影響がないように少しずつ情報を提供していく。 計画って勇者召喚かな。ベタかもしれない。でも巻き込まれたって言ってたから、違うものかな?


悲報。マーリンさんにこの日記の存在バレました。恥ずかしい。下手したら黒歴史確定なのに! この日記見た後、マーリンさんが「バレてたのか」って言ってた。


え。まさかの俺の雑な考察ビンゴ? いや考察って程じゃないけど。 隠すのは意味がないと判断したのか、マーリンさん、色々と話してくれました。


外に漏らさないようにと約束されたので書きません。 情報漏らさない、大事だからね。 3枚目 気分転換ということで、ベッドのある部屋から出ました。


石とか木とかで出来てて、古くからあるんだなってことは分かる。白い壁。ツルツルの木の床。外に面してるとこは硝子。やべえ。ヨーロッパの知識全然なさ過ぎて語彙力が。


何か長く休む必要がある人が入る施設にいたっぽい。通りかかった人、花束持ってたり、籠持ってたりしてるなって思ってたらそういうことか。


マーリンさんの案内で魔術師育成の学校を見学しました。やったぜ。小5辺りの子達が外で懸命に練習してる所を見ました。小さい杖を持って、水を作る授業でした。途中で遊んでる子がいました。可愛い。あの頃が懐かしい。


俺まだ高校生だけど。 俺もいつか魔法とか使えるのかな。そう思ってました。はい。 普通に絶望的な情報を貰いました。人間は魔力ないから、魔法使えない。 ショックだ。主人公みたいに杖持って術唱えたかった。


でも一応、何かしら出来るっぽくて、精霊の加護を貰えるって。火・水・土・風のどれか。 勇者も人間だって聞いてたから、どれ貰ってるのか聞いてみた。全部+光と闇だって。 勇者エリアル、主人公補正あるな。 3日ぐらいで少しずつ異世界の事が分かって来ました。元の世界に戻れる方法を探す必要あるよね。 まずマーリンさんに聞いてみるしかないか。色々と知ってそうだし。



※書いていない部分。

①前に邪神が国に攻めてきて、倒した。勇者と呼ばれるエリアルという人とか今の王様とかが戦った。

②邪神は古い時代の厄介な置物らしくって、同じような厄介者が世界を滅ぼしかねないらしい。

③対策案として、死んで力を得られる魔術を基礎として作った勇者召喚を計画たてていた。

④戦いがあるわけではない平和な世界から来た俺。ほんとごめんなさい。

⑤ランダム要素が強いし、どっちにしろ一般人が巻き沿いになることは変わらない。 ⑥問題山積みで勇者召喚は凍結決定。



 

4枚目


 前回のあらすじ、俺、竹田友哉は元の世界に帰るという目標をたてた! そのために、資料とか探さないと。その前に詳しそうなマーリンさんに聞くことにしたのだった! 


さて、今日はマーリンさんに聞くよ! 勢いのまま、アニメ風に書いてしまった。黒歴史確定じゃないか! 


そんなわけで、今日はマーリンさんに戻る方法があるかどうかを聞きます。単刀直入過ぎるけど、家族みんな、心配して探してるだろうし。明らかに行方不明って形になってそうだから。元気な顔、見せて安心させたい。それにクラスメートとコスプレ仲間にも会いたいし。


(ここからペンが滲んでおり、殴り書きになっている) 何で帰れないの。元気なのに。身体だって傷1つなくなってるのに。 死んだ扱いになってるの。俺悪い事何もしてない。地震のせいだ! 家族や友達に別れ言ってない。高校生活だって、まだ全然楽しめていない。 体育祭と文化祭すら参加してない。高校の友達だって、まだちょっとしか話せてないのに?  部活入って、まだ作品1つも出来てない。推しキャラの語り合いだって、まだ足りてない。 またもう一度東京のコミケでコスプレやろうって約束して、準備が始まったばかりなのに。 父さんとイベント参加する約束してたのに。母さんと姉さんと一緒にライブ見に行こうって楽しみにしてたのに。 何で何で何で。帰って元の生活に戻れると思った。ちょっとしたお土産が出来たと思ったよ。 でも。元の所に帰して! 何で俺が巻き込まれるの! こんなことなら、いっその事、死んだ方がマシだった! そうすれば、辛い事なんて考えずに済んだのに! マーリンさんが悪いの? 神様が悪いの? どっちなんだ! ふざけるな! 元に帰せ! こんな辛い事になるなら、俺を生き返らせるなよ!もういっその事。





5枚目


 久々の更新です。数日は引き籠ってた。自殺しようと思ってたけど、使えそうな道具がなかった。飛び降りも考えたけど、窓が開かないし。物理的に不可能だった。


そうだった。マーリンさん、日本語読めるんだった。怒りとか悲しみとか色々とごちゃまぜの感情のまま、4枚目を殴り書きしてて、マーリンさんのスペック、忘れてた。


あと、意外とアグレッシブなところとオカン要素があった。俺を生き返らせた神様とやらに殴り込みに行く気満々だった。 この世界、神様いて、恩恵を与えてるんだって。国を支配してた時期もあったとかそんな感じ。全知全能じゃないけど、人が逆らう事は基本無理だし、生と死の神様もいるって聞いた。今はあまり表に出て来ないし、人の時代だってさ。


今回は複数の神様が理由無しで、気まぐれで、俺を生き返らせたって。神様って見えない気がするけど、神様の知り合いから聞いたらしい。どんな人脈を持ってるんだ。聞いても答えそうにないから聞かないけどさ。


神様の気まぐれで俺はこの世界に来た。マーリンさんの計画に乗っかる形で利用。創作もだけど、現実も神様、ろくでもない。人の気持ちとか考慮ゼロ。ふざけるな。そこら辺はマーリンさんも同じっぽいのか、神様を殴る気満々だった。


結構スケジュールきつそうだし、無理なんだって。笑顔だったけど、あれ、絶対怒ってた。般若見えてた。 オカン要素なんだけど。引き籠ってるとき、静かに見守ってくれた。


ただ感情をぶつけまくってたし、悪い事も言っちゃってたし、八つ当たりに近かったけど。何も言って来なかった。否定もしなかったし、肯定もしなかった。それでも理解しようと聞いてる事が分かった。変に話しかけないし、前の防止の件だったりと、お世話になりました。


最後に1つ疑問が。神様って最強設定臭いし、見えないイメージあるけど、マーリンさん、どうやって殴る気だったんだろ。



6枚目


 これで最後の紙! そして最終回! 中身がジャンプの打ち切り展開&短い!


今日からマーリン先生と呼ぶ必要が出てきた。帰れない事が分かって、生活するために勉強する事が色々とあるから。主に言語面で。


予想してたよ! 周りの人と言葉のコミュニケーション取れない時点で察してた! 


でも異世界転移転生でよくある。日本語でもOKとかいうご都合主義の方が良かったよ。そっちの方が楽だもん!


でもやるっきゃない。今はマーリンさんの世話になってるけど、1人で生活する事になる。言葉もだけど、手に職も大事だよね。


そこら辺も調べながら、俺の自立生活を目標に頑張るぞー! 


ファイト、オー!

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