第8話 かくれんぼは見つからない所に隠れろ。



予想通り、サラがお茶を持ってきてくれている所に鉢合わせた。


「流石ねサラ、後は私が持っていくから大丈夫よ!」


「何を仰ってるんですか、お嬢様にお茶を運ばせる事なんて出来ませんよ。」


「大丈夫よ、お二人とも私より身分が上のお方ですし、私のお屋敷なのだからもてなしても問題ないはずよ。」


不満そうなサラからお茶を奪い取り、二人の元へ戻る。

不自然でない位のスピードでゆっくりと行くと、何故かレミジオ王子様がポツンと一人で座っていた。


え、セレナ様は?


「殿下、お待たせしました。あのー、セレナ様は……」


「シモネット嬢は予定があると言って帰られたよ。」


「あー、そうでしたのねー……」


「今日はドレスのお詫びと、アルファーノ嬢に伝えたい事があったんだ。」


いやちょっと待って、これ本当に私が婚約者になっちゃうんじゃ……


「あの時の夜、君と会った……」


「殿下、私には身分不相応なのでお断りいたします!」


「会ったことは内密にして欲しい……だけなのだが……」


「え?」


会ったことは内密にして欲しい?

ってか一人で勘違いして恥ずかしい。いやでも大体こういうパターンって私が告白されるって思うじゃん?まさか告白と思わせて違う話でしたパターンでくるとは……


「詳しい話は出来ないのだが、頼めないだろうか?」


「あ、はい、それは全然構わないんですが……」


「ありがとう。今日はあまり時間がないのだが、また良ければゆっくり話をしよう。」


素敵な笑顔で王子様は去っていった。



何だったんだこの状況。いや、周りがね、盛り上がるから私だって勘違いするじゃない。むしろ私としてはありがたい状況だよ。


だってこんなシトリンのブローチも貰って……


「シトリンの宝石言葉って、友情だった気がする。」


そうよね、普通アプローチするならもっと愛情ちっくなやつを渡すわよね。

え、じゃあセレナ様も気づいてたの?

気づいて「こいつ勘違いしてる。」とか思ってニヤニヤしてたの?


落ち着け私、セレナ様はそんな悪い子じゃな……


いや、彼女は悪役令嬢だった。あり得ない話じゃないけれど……



「……ふっぷぷっ」


「ちょっと声が漏れてるわよ。」


「だって、こんなの……」


クスクスと笑い声が聞こえてきた。

テーブルクロスを捲ると、モブBとCがみっちり詰まっていた。

はしたないよ、君たち。


「残念だったわね、ジュリア。」


「身分不相応ですーって勘違いする方が身分不相応よねぇ。」


人の屋敷に勝手に入ってきた上に、盗み聞きとは。私の事が好きなのか?ストーカーですか?


「えーと、お二人を招いた覚えはないのだけれど……」


「たまたま、屋敷の近くを通ったついでに挨拶しようと思ったら、リタ様に招いて頂いたのよ。」


「そしたら広いから迷ってしまって、ジュリアを探して、ねぇ。」


たまたま探してテーブルの下に隠れてたんですね、あるあるそういうこと。


「そうでしたのね。てっきりお二人が王子様が来られると聞いて、イヤらしい気持ちで来られたのかと勘違いしてしまいましたわ。私ったら勘違いばかりしてお恥ずかしい。」


「まっ、何を……!」


「ジュリア、最近あなた本当に勘違いしてるようね、セレナ様に少し気にかけて頂いてるからって、調子に乗らないことね!」


顔を真っ赤にして、ドスドスと擬音が聞こえそうな勢いでモブ達は帰っていった。

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