第7話 顔は口ほどに物を言う。



あっという間にお茶会の日がやってきた。

計画としては、王子様が来られる少し前にセレナ様とお詫びと言う名のお茶会に呼ぶ。


これでセレナ様と話が盛り上がれば、王子様が来られてもセレナ様が居る状況が出来る。考えれば簡単な話だ。


セレナ様もシモネット公爵家の長女だ、王子様も無下に帰したりもしないだろうし、そこでお互い好意を持ってくれれば問題なしだわ。



さて、準備も出来たしセレナ様をお迎えする為にホールへ向かうか。


私って策士に向いてるんじゃとか考えていると、このタイミングで会いたくない人にエンカウントしてしまった。


「あらやだ、王子様が来られるからってニヤニヤして気持ち悪い。」


ニヤニヤで言うとお姉様も負けてないですわよ!と心で毒だけ吐いて通り過ぎようとした。

悪いけど、今はお姉様の相手をする暇はないのだ。


「ちょっと、私のことを無視するなんていい度胸じゃない!」


横を抜けようとした私の腕を掴み、そのまま顔を平手打ちしてきた。


残念ながら、今も昔も運動神経のない私は吹っ飛ばされて廊下に倒れてしまった。

7歳の体格差を考えて欲しいよ全く。かなり痛い。


「ジュリア様!」


サラが駆け寄ってくれたが、余りの痛さに涙が出てきた。

精神的には「めっちゃ吹っ飛んだよ、これびっくり映像とか誰か撮ってない?」くらいのテンションだが、体格は幼いのだ。痛いものは痛い。


「あ、あんたが悪いのよ。年上への礼儀がなってなかったから、教えてあげたまでよ!」


そう言い捨てて小走りで去って行ってしまった。


「あぁ、頬が腫れてしまいますね、取り急ぎ冷やす物を持って参りますわ。」


「腫れた顔でお会いしたら、王子様にもセレナ様にも失礼かしら。」


「事情をお話してベールを被ることも出来ますが……お嬢様なら大丈夫ですわ!」


いや、しれっと失礼な事言ってきたよね?

誰がいつも浮腫んでる顔だと。



そんな冗談を言いつつ、氷を頬に当てながらセレナ様を迎えに出た。


「まぁ……どうしたの、また何処かで転んだの?」


「いえ、お恥ずかしい話、身内のごたごたで……」


「リタ様ね……可愛いジュリアに色々言ってるみたいだけど。私がもう少し大人になったらあなたを守ってあげるからね。」


初、ちょっと黒いセレナ様。私からしたらセレナ様の方が妹感覚なのだけど、セレナ様はどうやらジュリアをモブの中でも可愛がってくれてるようだと最近気付き始めてきた。


「ところで、今日は王子様もアルファーノ伯爵家に来ると聞いていたのだけれど、私が来ても良かったのかしら。」


「え、ご存知だったんですか?」


「だって噂になってますのよ、ジュリアが王子様を射止めたんだって。」


ちょっとセレナ様、ウキウキしたお顔だよ。もっとこっちに怒ってよ。あなたの婚約者だからね。


「いやいや、今日王子様が来られるのはきっと、あれです。その……」


「ドレスのお詫びに来たのだ。ジュリア=アルファーノ嬢、この前は失礼した。」


ここの人はあれか、みんなイケメンは勝手に入ってくるのか。いや、王子様だから良いのか?


「代わりになるドレスを送ろうかと思ったのだが、サイズがわからないと作れないと言われてな。代わりといっては何だが、このブローチはどうだろうか?気に入ってくれるといいのだが。」


明らかにドレスより高価とわかるブローチ、しかも手渡しでわざわざ来られるなんで……え、これ本当に私が貰っていいの?本来はセレナ様が貰うとかじゃないの?


「あ、ありがとうございます……けれど、私には身に余る品かと……」


「そんなことはないわよ、ジュリアの瞳にあう、綺麗なシトリンのブローチよ。」


「そなたはシモネット公爵家の……」


「申し訳ございません。申し遅れました、私シモネット家の長女、セレナ=シモネットと申します。」


「そうか、私の方こそ名乗らずに入って来てしまい申し訳ない。レミジオ=バレージ、この国の第一王子だ。」


思ったけど、イケメンだし紳士的だし偉そうじゃないし、そりゃモテますよね。このまま2人で話せるタイミングを作れば……


「殿下、ジュリアとお話があるのでしたら、私に席を外す許可を頂けますでしょうか?」


ちょいちょい何でセレナ様帰ろうとしてるのあなた、それは私の役目だから。


「いや、構わない。僕の方用事はこれで終わった。邪魔をしてすまなかった。」


「で、殿下!あの、よろしければとっても珍しいお茶をご用意してまして、一杯だけでもいかがでしょうか?」


セレナ様、良くやったって顔じゃありませんよ。あなたの為ですからね。


「ふむ、ならせっかくだ、一杯頂こうか。」


「では、そのように準備を伝えて参りますわね!」


指示がなくてもサラなら持って来てくれてそうだけど、私がその場を離れる事で二人っきりにすることき何とか成功した。

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