第132話 滅亡 

 シアンデュラハンロードを昇天させ、どうか次はまともな国に生まれますように、と心の中で思いながらヴァイスに剣を向ける。


「次はお前だ、ヴァイス」


スキル

【錬金術マスター】(←【上級錬金術Ⅲ】)

【スキル成長速度上昇Ⅴ】(←【スキル成長速度上昇Ⅲ】)



 めぼしいスキルはこれくらいか。

 ヴァイスは固有スキルが【錬金魔王】だけあって錬金術はマスターだった。

 




「……フッフッフッ。『神の御子』がここまでとは。まさか一子相伝のはずのディアス流まで使えるのですね。ティンジェルは化け物を隠していたようです。もはやここまでですか」



 ヴァイスは眼鏡をくいっと押し上げながらため息をついた。



「観念したのか?」


「いいえ、化け物に対抗するには化け物。私も人間を超えなければなあ。そう思うだろう?」


 そしてヴァイスは懐から『召魔の宝珠』を取り出した。


「クラウスといいましたか…… できればもう少し人間のままでいたかったのですがね。ここまできたら仕方ない、私も人間をやめますよっ!」


 『召魔の宝珠』が妖しく輝き、ヴァイスと同化していく。



◇◇◇



 眩い光があたりを覆いその光が収まったあと、そこには変わらぬヴァイスの姿があった。


「フフッ! フハハッ! 素晴らしいぞこの力! 見よこの姿を!」


「何よ、何も変わっていないじゃない!?」


 レティ様がつっこむが、問題はそこじゃないんだ。


「何も変わっていないことがよいのだよ。クラウスはわかっているようだがな」


 魔物に変化したのに完全に人の姿を保っている。

 それは魔物の力に飲み込まれず制御できているということ。


「レティ様、彼は魔物と化したにも関わらず魔の力を制御しています」


「そのとおりだ。あの愚かなバルザックは魔物の力に抗っていた。ゆえにあの程度の存在にしかなれなかったのだ。そうではなく魔物の力と同調すること。これが力を最大に引き出しより高位の存在に昇華する術なのだよ」



 だが、まだそれだけじゃない。

 得体のしれない何かを感じる。

 答えは律儀にもヴァイスが教えてくれた。


「さらに私の固有スキルは【錬金】。わかるかね、古の【魔王】スキルの力の一端が私にもあるのだよ。魔物となることでその力も解放され私はサタニックデーモンロードとなった。【勇者】でも【英雄】でもないお前たちに勝ち目はない」



スキル

【混沌魔法マスター】(←【闇属性強化】)

【ホーリーキラー】(←【生活魔法】)



 どのくらい強いかと思って交換してみたが、まあこんなものだった。

 【混沌魔法マスター】はもらっておいた。

 持ってるだけで魔物の使う攻撃に耐性がつくという隠された効果が見えたからだ。

 それと聖なる者に特攻2倍となる【ホーリーキラー】も没収だ。

 万が一聖女であるレティ様やプリンさんが何かに被弾したら大変だからね。


 残念なことに、ステータスは全て僕以下。

 ここで退場してもらいます。



「うむ、怨讐うずまくこの土地は我が力を発揮するのに十分だ。魔界より出でよ我が眷属、サモンキングデーモン!」


 ヴァイスの後ろに4つの光の柱が立って悪魔が召喚されてきた。

 ちょっと強そうだ。


「ホーリーアロー×4」


 【中級光魔法】の光の矢を四つ放つ。

 そして出てきたばかりのキングデーモンは光の矢を当てられ消滅した。

 多分僕たちの数に合わせて召喚したんだろうけど、僕以外が単独で戦うにはちょっと荷が重いので消しといた。


「お、おいふざけるな貴様」


「サンクチュアリフィールド!!」


 僕は時空魔法を使って聖なるフィールドを展開する。

 悪魔系って自分に有利なようにいつも闇のフィールドを展開するから僕も真似てみた。


「出でよ我が眷属、サモンデーモンロード! ……発動しない!」


「シャイニングバインド! からの、ホーリージャッジメント!!」


 宙空から飛来した光の剣により光の檻に閉じ込めて、さらに追撃の聖なる裁きをお見舞いする。

 以前ガーゴイルの時にも使ったが、やはり強力な組み合わせだ。

 今回はサンクチュアリフィールドもあって威力はマシマシだ。



 光の檻の中で散乱する聖なる光を浴び続けてヴァイスは苦悶の声をあげる。


「ウオオォォォォォッ、なんという威力! だがまだ私は生きているぞ!」



 ヴァイスは満身創痍だがまだ息がある。

 魔王の名を一部持っているだけあってしぶといな。

 仕留め切れなかったので次。


「邪空なる剣、混沌の果てから飛来し、聖なる者を貫き堕とせ! カオスブレイド!」


 僕の真上の空間に巨大な剣が召喚された。

 

「それは、混沌魔法最強の攻撃魔法!? なぜ人間のお前が使える!?」


「さあ、何ででしょうね?」


「くっ、デモンシールド!」


 あわててヴァイスは防御魔法を展開するが、それでは止められない。

 僕が掲げた左腕を振り下ろすと、その動きに合わせて同時に振り下ろされた闇色の巨大な剣は瀕死だったヴァイスを真っ二つに斬り裂いた。


「バカな…… 魔と融合し永遠の存在となったはずの私が死ぬというのか…… 魔王様、我が力お使いください……」


 ヴァイスは黒い光を撒き散らしながら消えていく。

 一筋の黒光はどこかへ飛び去っていった。


 そして僕は新しくスキルを獲得した。


スキル

【デーモンスレイヤー】(new)

 ※悪魔系に特攻2倍。 




◇◇◇



「さすがクラウスさん、着いてきましたけどやっぱり出番なかったですね」


 ミストラルさんがそうは言うが、そんなことはなくて、サンクチュアリフィールドは場にいる聖女の数だけ威力を増すのだ。

 最後のカオスブレイドにその恩恵は乗らないけど。

 せっかくなのでここで使ってみたのだから意味はあった。

 


「この鈍色の珠は何かしら?」


 レティ様が賢者の石を拾い上げる。

 消滅したヴァイスが残していったものだ。


「賢者の石といって、超高密度の魔力の塊だそうです」


 これで3つ目だ。


「これが賢者の石…… プリン、もしかして」


「そうですわねレティシア様。これ一つで世界が変わるという超レアアイテム。賢者の石をめぐって戦争が起こり国が滅びたこともあるとされ、ティンジェル王国のシビルカード管理の魔道具には賢者の石が使われていると聞きますわ」


 なら僕は3回も世界を変えられるのかな?


「クラウス、話があるのだけれど」


「レティ様どうしたんですか? あらたまって」


「スパイト王国を浄化できるかもしれない」



◆◆◆◆◆◆

※番外編を書いています。

◆番外編 レティ様ルート 1 ~ 10

https://kakuyomu.jp/works/16818093083567610939/episodes/16818093083568271086


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