第130話 ヴァイスの野望
ギンディを滅したあと、すぐにテレプレートでギンディの記憶から読み取ったことをエリアに伝える。
こんな事態だから【錬金魔王】の事も伝える。
クラウディアさんが知りつつも陛下に伝えていなかったが、侵攻を受けている以上知らせて当然のことだろう。
(クラウス、陛下からご命令よ。『スパイト王国を制圧せよ。抵抗した場合生死は問わない』)
(その命、承りました)
(クラウス、大丈夫だと思うけど気をつけてね。あなたが不死者となったら世界が滅びるわ)
(そうならないように気をつけるよ)
◇◇◇
サウスタウンへ向かってきていた
プリンさんとミストラルさんも着いてきている。
パーティから離れた後もミストラルさんは修行を続けていて今では【上級弓術】も使えるとのこと。
スパイト王国に侵入する。
国境の施設は破壊され残骸が残るのみ。
侵入は容易かった。
やはり暗く澱んだ魔力を大地から感じる。
いや、以前来た時よりもそれが強くなっている。
清浄結界を常時展開しながら僕たちは進んでいく。
王都へ向かう途中の街々。
全てが踏み荒らされ生者の気配がしない。
崩壊した建物に血の跡。
しかしこれほどの破壊があったのに死体が一つたりとも見つからない。
ここにいたはずの住民も
時々群れから外れた魔物を見つけてはターンアンデッドやソウルピュリファイで浄化していく。
やがて王都に着く。
ここも廃墟が並ぶばかり。
鼻をつく死臭はさらに濃くなっていた。
これは確かに【錬金魔王】が生まれても不思議じゃないな。
少し遠くには立派な王城が見える。
周りの廃墟とは対照的だ。
◇◇◇
王城に入ると、スケルトンアーマーがお出迎えだ。
装備から見るにおそらく警備の兵をグールパウダーで魔物に変えたのだろう。
魔物を浄化しながら城を捜索する。
ある一室にて料理人やメイドがひとまとめにされているのを見つけた。
「みなさん、無事ですか?」
見たところ魔物と化した人はいない。
その中の1人が震え声で答える。
「ええ…… いつのまにかお城の中が魔物で溢れていて…… ヴァイス様のアイテムによるものだそうですが、私達は襲われないようになっています。王様やヴァイス様のお世話をするためだけに」
アンデッドは料理作れないし家事できないもんね。
とりあえずここの人たちは大丈夫だろう。
◇◇◇
やがて王の間につく。
二体の魔物が襲ってきた。
片方は王冠と豪華なローブ、もう片方はティアラとやはり豪華なローブを纏ったグールだ。
「ソウルピュリファイ!」
レティ様が浄化をする。
ここにくるまで嫌というほど使ったので詠唱が必要ないくらい成長していた。
その分僕のMPが使われまくったということでもあるんだけど。
二体の魔物は豪華な装備を残して消えていった。
これはまさか……
「なんですか貴方たちは? 強化されたグールを一撃で倒すとはいったい何者なのでしょう?」
後ろから眼鏡をかけた丸顔の男がやってきた。
「いきなり城内の魔物の数が減ったと思ったら…… 貴方たちがやったのですか? そんなやわな魔物ではないのですがね」
そんなことはどうでもいい。
目の前のこの男が全ての元凶だ。
「【錬金魔王】ヴァイス=レザードだな。大人しく降伏しろ。
予想はつくが一応聞いておく。
「ああ、前王でしたらあなた方が先ほど滅したでしょう。やはり元が弱いと大した魔物にならないということを証明しただけでしたね。ちょうどよい、スパイト王はティンジェル・メルティア連合軍により無残に殺された。正当なるかたき討ちとしてあなた達を滅ぼす大義名分が手に入ったわけです。今はこの私が王です。跪くことを許しましょう」
「何が王よ! 国民を魔物に変えて! 人の命を何だと思ってるの!? たとえティンジェル王国が許しても女神メルティアは決して許さないから!」
プリンさんが怒っていた。
「魔物の王になって満足ですか?」
ミストラルさんも静かに尋ねるが、声が低い。
「ふん、そんなことよりも
「…………」
こんな奴に答えてやる必要はない。
僕たちは黙っていた。
「話す気はない、と。であれば仕方がありませんね。くく、聖女と『神の御子』をアンデッドとして従えられれば
ヴァイスの後ろから現れた大男。
両手にそれぞれ大剣を携え闇色のマントを翻した首無しの騎士。
他の魔物と違って水色の瘴気を纏っている。
そしてステータスが見える。
名前はバルザック。
種族はシアンデュラハンロード。
固有スキルは【澄水の剣聖】。
汎用スキルも強力なものを有している。
「誰か…… そこにいるのか…… 私を助けてくれ…… 私が溶けていく……」
「ほう、まだ意識が残っていますか。さすがに気高き剣聖。反吐が出ますがね」
ヴァイスが少し意外そうな顔をしている間、僕は彼の記憶を覗き見た。
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