第82話 アビスゲート
(魔物を従える魔道具というと、モンストーラーかな? とすればその封印を解いた人間はスパイト王国の人間の可能性が高いな。ほんとに碌なことをしないな。しかも相手が強すぎて効かなかったとか)
「お前達の封印を解いた者がいたのか。最近強力な魔物の数が増えたのもその者のせいだったのか」
「その通りだ、我らを封印せし者の末裔よ。アビスゲートの封印は解けなかったが、封印を弱めたため魔界の弱き者どもがこちらの世界に現れてきたのだよ」
ヘルブラッドドラゴニアが続けて答える。
冥土の土産はたくさんもらえるようだ。
「クラウスよ、すまぬ。援軍に来たばかりに命を縮めさせてしまうことになろうとは。私がこの破魔の剣の力をもっと引き出せれば二人を逃すことくらいは可能かもしれんが」
確かに目の前の2体は強そうだ。
だが、かつてヴェルーガに対して感じたような恐怖はない。
何とかなりそう。
相手は人間ではないので【交換】の対象にならず、ステータスもよくわからないが抗うしかない。
まずは、転移を試してみる。
あっさりと黒い檻から僕だけ外に出ることができた。
「ほう!
アビスデーモンが嘲笑半分、感心半分で聞いてくる。
交換はしましたけど。
僕だけ出ても依然スピネル様とクオーツ様が危険なことに変わりはない。
「シャイニングバインド!」
黒い檻に対抗して、僕は【上級光魔法】の拘束魔法をぶつける。
天から降ってきた光の剣が黒い檻を破壊し尽くした。
残った光の剣で白い檻が形成され、スピネル様とクオーツ様を囲う。
これで2人はしばらく大丈夫だろう。
「我の獄黒の魔檻を破壊し上書きするだと!
「いや、この人間から神族の匂いはしない。おおかた教皇とかいう光魔法が多少得意な
教皇でもないです。
「ふん、【暗黒魔法】ブラックカース! 魂を貪り尽くせ!」
アビスデーモンの持つ杖の先端からいくつもの漆黒の禍々しい髑髏のオーラが僕に向かってくる。
「アンチカース」
僕は対抗する魔法を繰り出し、髑髏のオーラを次々と消していく。
さらに、
「【MPバースト】! ディバインレーザー!」
眩いばかりの極太レーザーがアビスデーモンに向かっていく。
念のため【MPバースト】で消費MPを上乗せして、【光魔法マスター】の攻撃魔法を放つ。
シンプルに光魔法を収束させた直線攻撃だ。
「そんな…… 人間ごときが我の魔力を上回るというの、かぁぁぁ……」
水晶の髑髏の杖を構えてディバインレーザーに耐えたのもわずか数秒。
アビスデーモンは光線に呑まれ跡形も無く消滅。
僕のレベルが上がった。
「…………どうやら貴様を侮っていたようだ。だが、その脆弱な肉体が龍族の攻撃に耐えられるかな?」
ヘルブラッドドラゴニアが僕に向かって突進し、渾身の手刀を繰り出してくる。
迎え撃つ僕はメタルブレードを構える。
「そんなナマクラが効くかぁ! 真っ二つになれ!」
しかし、魔法剣に包まれたメタルブレードによりヘルブラッドドラゴニアの腕が斬り飛ばされる。
「がああっ! 何よりも硬い右腕が!」
「続けてくらえ! テトラスラッシュ!」
四連撃を一体に対して一瞬のズレもなく繰り出すテトラスラッシュは、瞬速連斬と時空魔法の合わせ技だ。
セリフを残すこともなくヘルブラッドドラゴニアはバラバラになり、念のため残った肉塊は火魔法で滅却しておいた。
また僕のレベルが大幅に上がった。
◇◇◇
他に魔物の気配を感じないので、シャイニングバインドを解除する。
「無事なようで何よりです」
「ああ……」
「クラウス様…… 次元が違いすぎるわ……」
「セレスティアルヒール!」
倒れている兵士たちの回復を試みる。
が、起き上がってこない。
「魂を喰われていたから、肉体のみ回復しても無駄なのだろう。クラウス殿のせいではない」
しかし僕は諦めない。
魂を食らう魔法なら先ほどアンチカースで防ぎきった。
だから、
「【MPバースト】、アンチカース」
効果範囲を【MPバースト】で無理やり拡大し、もう一度兵士達にかける。
「ぐっ、ここは……」
意識を取り戻したようだ。
よかった。
だが、まだふらついている。
魂を食われたのだ、何日かは休まないといけないだろう。
「ここはクオーツと後から来る者達に任せよう。すまぬがクラウス殿、もう少し力を貸してくれないか?」
「何をすればいいのですか?」
「いったん屋敷に戻り、結界修復の魔道具を取ってきて、アビスゲートへ向かう。先ほどの魔物の話だとどこかの誰かが封印を弱めたそうだからな。放置すれば延々とアビスゲートから魔物がやってくる」
「わかりました。ゲート」
屋敷に戻り魔道具を手に取ったスピネル様の案内をもとに、浮遊魔法でアビスゲートまで移動する。
途中の魔物は【初級風魔法】のウインドカッターで蹴散らしていく。
「【大魔導師】、【賢者】などという言葉が生ぬるく思えるぞ……」
「さっきの戦いでまた強くなりましたからね」
「強くなったとかそんな次元ではないな」
少し飛び続けて、降り立った場所には巨大な紫色の重そうな扉が鎮座していた。
ユグドラシルにも似た大樹が描かれている。
「私も来るのは数えるほどしかない。樹の模様が描かれていて、封印の本体だそうだ。樹が少し削れているな。扉もわずかだが開いている。完全に開ききったらどうなることか。さあ、魔道具を起動するぞ」
おそらくこの樹の模様が結界の役割を果たしているのだろう。
ユグドラシルと比べると少し頼りない気もするが、今まで保っていたんだから直れば大丈夫なんだろう。
シュゴォォォォォと音を立てて樹の模様に光を当てている魔道具から視線を外すと、人工物が二つほど転がっているのが見えた。
一つはモンストーラーだ。
もう一つはわからない。
奴らの言ってた結界破壊の魔道具なんだろう。
とりあえずディメンジョンボックスに入れておく。
あとで国に提出しよう。
「終わったぞ」
「じゃあ、帰りましょう。ゲート」
「ふむ。これはクラウス殿が去ったらとても不便に感じるな……」
◆◆◆◆◆◆
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