第76話 ヘルコンドルの羽毛と羽根 

 次の日、朝一番でギルド本部へ向かいエリアにしばらく日帰り攻略となることを告げる。

 そして昨日の分の納品を済ませて、ゲートでまたメイズフォレストの40階から再開だ。


 昨日と同じく、ファイアボールで直線コースを無理やり作って進んでいくつもりだ。

 一階層だけ戻って様子を見てみたが、僕が焼き払ったはずの場所はまた元に戻っていた。




 77階に入ると、上空にヘルコンドルの大群が見えた。


「ここはヘルコンドルフロアと呼ばれています。ヘルコンドルしか出ず、しかもレアドロップ率が僅かですが上昇するそうです。あと、余談ですが、ヘルコンドルの通常ドロップのヘルコンドルの羽毛も、高級寝具の材料、錬金術の媒体、材料、防具の材料、など使い道が多いのにドロップ率が低いので、なかなかの高値となります」


「そうなんですね。羽毛をたくさん持っていったら僕らも布団を作ってもらえますかね?」


「多分大丈夫だと思いますよ。ウォーレンさんに頼めばよいと思います。とても軽くて保温性がよく、わずかですがMPの回復力も高めてくれるので、最高級を謳うホテルでは必須です。私もできたら欲しいですね」


「じゃあ今日はここで夕方になるまで狩りましょう」



 僕は浮遊してヘルコンドルを次々と斬っていく。

 途中で試しに魔法で倒してみたらヘルコンドルの羽根が手に入ったので、そこからは【中級雷魔法】のサンダースピアを全方向にばら撒いて倒していった。

 レアドロップの条件は直接攻撃というわけじゃなくて、攻撃者とヘルコンドルが『上空にいる状態で』倒すことではないかと考え直してみる。

 幸い、まだギルドには言ってない。

 

 こうして、今日は500体ほど倒した。

 通常ドロップとレアドロップの両方が同時に手に入る『ダブルドロップ』も稀に発生していた。


 翌日も77階でヘルコンドル狩り。

 いなくなってしまったので90階まで進んでから、少し早めに切り上げる。



 転移でクレミアン商会本店前に移動してウォーレンさんに会わせてもらう。


「久しぶりです。ウォーレンさん」


「おう、クラウスにミストラル、今日はどうした?」


「ヘルコンドルの羽毛を持ってきたので、これでお布団を作ってもらえないかな、と」


「まさかと思うが100%純ヘルコンドルの羽毛布団なのか?」


「ええ、そのつもりですが。僕とミストラルさんの二人分」


「どのくらい持ってきたんだ?」


「1000枚くらいです」


「……ちょっと見せてくれ。サレン、どうだ?」


「……私の【目利き】にも本物と映っているわ」


「だな。あのな、クラウス、実はほとんどのヘルコンドルの羽毛布団は100%羽毛じゃないんだ。ヘルコンドルの羽毛はあまり手に入らないから、【錬金術】で劣化複製したり、別の生き物の羽毛と混ぜたりしたものがほとんどだ。100%を持ってるのは王族くらいじゃねーかな」


「ってことはもしかして不敬にあたりますかね……?」


「そんなことは言われないさ。さて、どうする? 羽毛100%にするか? 材料を全て提供するならそこまで値は張らないが」


「どうします、ミストラルさん?」


「そうですね……。ウォーレンさん、余った羽毛を提供するのでただになりませんか? その後、ウォーレンさんのタイミングで残りをギルドに納品します」


「なるほど。サレン、どう思う?」


「ミストラル、悪知恵が働くわね。それでいいんじゃないかしら」


 どういうことなんだろう。


「クラウス、そんなに羽毛があるってことは、羽根もあるのか?」


「ええ、30枚ほどですが」


「相変わらず規格外だな……」


「クラウスさんは規格外とか生易しいものじゃないですけどね……」


「それもギルドに納品するつもりか?」


「ん、まあ一応」


「その羽根、少し気になることがあってな。その前にディアゴルド家に相談した方がいいと思う」


「? 分かりました。ウォーレンさんの言う通りスタン侯爵様に相談してみます」


「クラウスは素直でいい奴だな。ヘルコンドルの羽毛布団ができたら宿舎に連絡を入れるぞ」



◇◇◇



 クレミアン商会を出てから、


「クラウスさん、もう一度77階で稼ぎませんか?」


「構いませんが、なぜですか? 羽毛は渡してきた数で十分なはずですよね」


「ウォーレンさんを応援したいと思いますか?」


「もちろんです! 羽毛を稼ぐのがウォーレンさんを応援することにつながるということですか?」


「ええ、おそらく」


「じゃあ、やりましょう」


 

 というわけで、もう一度77階でヘルコンドルを飽きるほど狩ってきた。



 んで、魔石だけ納品しておく。

 ワーズワースさんに怒られていた納品窓口のギルド職員は、『魔石の価値が暴落するんじゃないかなー』といいながら計量器に次々と魔石を放り込んでいた。

 A級魔石の買取価格の単価は4割くらいまで落ち込んでいた。


 

◇◇◇



 次の日、スタン侯爵様に面会する。

 今日はマリー様も執務室にいた。


「スタン侯爵様、本日は相談がありまして」


「聞こうではないか」


「ヘルコンドルの羽根を40枚ほど持っていますが、ギルドに納品する前に侯爵様に相談したら良いと助言をいただきました」


「浮遊の効果が得られるレアアイテムか。数年に一度しか出回らないものを40枚。相変わらずお前には驚かされるな」


「マリー、その程度では驚くに値しないぞ。この羽根について何か知っているのか?」


「コレクターアイテムとして高値で取引されるとしか。僕は【浮遊魔法】が使えるのでいらないんですが」


「知っているのは本当にそれだけか?」


「はい、侯爵様」


「お父様、【浮遊魔法】についてはいいんですか?」


「クラウスの前では些細なことだ。で、この羽根だがな、最近ブラックギルドに目をつけられていてな。資金源になっているようだ。ブラックギルドはこの国で違法とされる奴隷も扱っている。密かに購入している貴族もいる。だが、尻尾を出さない。レオン王の偉業に泥を塗る我が国の汚点だ」


 あ、なんか話が大きくなってきた。

 これは巻き込まれるやつだ。






◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 クラウスが察したとおり、もちろん巻き込まれます。

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