王都ガルバリウム編

第49話 王都ガルバリウム 

 王都ガルバリウム。

 ティンジェル王国の中心だ。


 ここが中心なのは、この周辺に一番多くダンジョンがあるからである。

 魔石やドロップ品が多くもたらされるため、自然と経済の中心となったのだ。

 

 王国は、今から4代前の国王レオン=ティンジェルが戦争により領土を拡大し、その領土は今もなお変わっていない。


 国王レオンは固有スキル【レオンハート】を持っており、彼が戦場にいる間は兵士の全ステータスが上昇し攻撃を受けても怯まなくなった、と言われている。

 このため、軍はいつかこのようなスキルが現れたときに備えて今でもスキルよりステータスを重視する傾向にある。

 冒険者がスキルを重視するのとは反対である。



 レオン王在位中には奴隷制を廃止している。

 奴隷制は労働意欲を低下させ技術開発が遅れる原因となり、また将来の反乱の種になると考えた当時の第2王子ポールの献策によるものであった。

 反対した貴族もいたが、レオンの持つ戦力の前に逆らうことはできなかった。



 また、同時代には【錬金王】の固有スキルをもったサファイアが活躍しており、彼女が創り出したシビルカード作成・管理を行う魔道具により、レオン王の時代からシビルカードの活用が始まったという。


 領土を拡大したあと、これ以上広げると統治が困難になると考えた彼は、2人いた王子のうち内政に優れた第2王子ポールに王位を継承させた。

 武に優れた第1王子リチャードは軍事の面からこれを支えた。


 今代の国王陛下クロスロード=ティンジェル様も、レオン時代にあやかり内政に優れているとして第2王子だったが王位を継承している。

 

 僕の出身であるメイベルもかつてはメイベル王国を名乗っていたようだが、レオン王により征服され元の国王はメイベル領の領主となった。

 今ではどこの地域も旧王国のことはあまり意識されず、ティンジェル王国民という大きな枠組みの中で生きている。




◇◇◇




 王都にやってきた僕は、ミストラルさんといっしょにまずウォーレンさんのいるクレミアン商会本店を訪れた。


 ウォーレンさんがC級に上がって別れるときに『王都に来るなら必ず寄ってくれよ』、と言ってくれたからね。


 店員さんに話しかける。


「すみません、クラウスと言います。事前の話はありませんが、かつて冒険者パーティを組んでいたウォーレンさんに会いに来たのですけれど、伝えてもらえませんか?」


「シビルカードを拝見してもよろしいでしょうか。……ありがとうございます、お返しいたします。それでは少々お待ちください。確認してまいります」


 しばらくして、3階にいるウォーレンさんのところに案内された。



◇◇◇



「よう相棒、元気だったか? ミストラルもな」 


「ミストラル、クラウス君、お久しぶりね」


 そこにはウォーレンさんとサレンさんがいた。

 サレンさんのステータスは無事見えなくなっていた。


「お久しぶりです、ウォーレンさん、サレンさん」


「ご無沙汰しています、ウォーレンさん、サレンさん」


「相棒、またミストラルとパーティ組んだのか。てっきりソロで続けるかと思っていたが。トルテはどうした? 仲間外れか?」


「トルテさんともパーティを組んでいたのですが、軍からスカウトがあって無事就職しました」


「そうか……。まあ宮廷魔術師になりたきゃ、それが近道だな。んで、王都にきたのは観光か? 拠点を移しに来たのか?」


「拠点を移しに来ました。今はB級のダンジョンに挑んでいます」


「えっ、マジか…… まだあれから1年も経っていないぞ……。まあ、それはいいか。せっかく来てくれたんだ。ゆっくりしていってくれ」


 ウォーレンさんとサレンさん、ミストラルさんと僕で、今まであったことをお互いに話し合う。


 サレンさんは正式にウォーレンさんの秘書となり日々商会の仕事に励んでいるとのことだ。

 ウォーレンさんの父親からは筋がいい、と認められているようで充実した日々を送っているようだ。

 さすが【一意専心】、その効果を発揮しているみたいだ。

 


◇◇◇



「ところで相棒、王都で泊まる場所はもう決めてあるか?」


「いや、まだです。真っ先にウォーレンさんに会いに行こうと思ってましたので」


「うれしいこと言ってくれるじゃないか。それなら、うちの商会のもつ部屋を借りねえか? 他よりは安くしとくぜ。ミストラルもどうだ? 教会に空きがなければ貸してやるぜ」


「ありがとうございます。お世話になりたいです」


「私もお願いします」


「じゃあ早速だが手続きだな。サレン、頼むわ」


「わかったわ、ウォーレン」


 サレンさんがテキパキと手続きを進めていく。


「これは…… こんなに安くていいんですか?」


 ミストラルさんがそう言うということは安いんだろう。


「まあな。先行投資だよ。有名になったら俺の宣伝頼むぜ」


 そういうことか。

 ウォーレンさんは僕の将来に期待してくれているみたいだ。



◇◇◇



 商会を出て貸してもらえる部屋までウォーレンさんに直接案内してもらう。

 場所は王都のギルドから少し離れているが、買い物には便利なところだ。


「なんかあったらまずはここの管理人に話をしてくれ。特に問題はないと思うがな」


「わかりました。ありがとうございます」


「それじゃあ、残りの仕事を片付けてくるか。じゃあな、頑張れよ」


「ウォーレンさんも頑張ってください」


 

◇◇◇



 借りた部屋はそこそこ広くてきれいな部屋だった。

 実家から持ってきた錬金術の道具も置けるくらい広いので助かる。

 隣の部屋はミストラルさんが借りている。

 部屋が違うのも地味に助かるポイントだ。


 一晩明けて次の日、王都のギルドに向かう。

 本部は規模が大きいのでB級以下とA級以上で建物が別々にある。

 そしてB級以下の冒険者を相手にするところはガルバリウム支部と呼ばれ、A級以上を相手にするのを本部と呼んでいる。

 

 ガルバリウム支部に入ると、B級は2階で、それ以外は1階となっていた。

 今日は、何かメイベルとの違いがあるかもしれないと思って確認するためにきた。



 2階に上がると、よく見知った顔がいた。






◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 ここから王都ガルバリウム編です。

 ここにいればだいたいの用事が済んでしまいます。

 A級以上はほとんどがここに本拠地を構えて活動しています。

 メイベルにもA級はいましたが、クラウスは直接会うことがありませんでした。

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