第40話 エリアの父
翌日、エリアさんに言われたとおり夕方前にギルドに向かう。
そこではエリアさんとサブマスが待っていた。
そして、馬車に乗る。
貴族街に向かう。
大きな邸宅前で止まる。
サブマスと別れる。
執事っぽい人に案内される。
と、ここまでは以前と同じだ。
違うのは衣裳部屋に案内されたことだ。
服についてはよくわからないので衣裳係さんの言う通りに着付けられていく。
衣裳をとっかえひっかえして髪型も整えられてみるとまるで別人だ。
幼さが消え、2,3歳くらい年齢が上がったように見える。
それでも見た目18歳くらいだけど。
僕の着替えが終わったのにまだ待たされていた。
何の待ち時間だろうと思っていると、着替えの終わったエリアさんが出てきた。
彼女の着替えの待ち時間だったか。
それにしてもエリアさんが綺麗だ。
どこかのお姫様だと言われても納得する。
「エリアさん、とてもよく似合っていますよ」
「クラウスさんもお似合いですわ。貴族のご子息でも問題ないですね」
「あのエリアさん、これは軍の用務と関係あるのでしょうか?」
「ええ、あるといえばありますよ」
◇◇◇
前回と同じ部屋に案内される。
僕とエリアさんの後からカイゼル髭のダンディがやってきて着席する。
「お主がクラウスか。娘が世話になっているようだな」
ん? どういうこと? てか娘?
「は、はい。私こそいつもエリアさんに助けていただき、感謝しております。その、失礼ですが、軍の方でいらっしゃるのでしょうか?」
「なんだエリア説明しとらんのか」
「ええ、このほうが趣深いかと思いまして。軍の呼び出しを匂わせてお連れいたしましたわ」
ええー、それ僕の前で言っちゃいけないんじゃ?
「クラウスさんすみません。お父様がどうしてもテロ事件の隠れた英雄を見たいというものですから」
「軍から報告が上がってきておるぞ。操られていたS級の魔物の討伐に大いに貢献し、元凶となるテロリストをも捕まえたのに表に出てこないと」
表に出てこない、というかこの固有スキル、癖が強いと思うからあんまり知られたくないだけで、誉められたいとか認められたいとかは人並みにあるつもりだ。
英雄と言われたのはこそばゆいが嬉しい。
「お誉めいただきありがとうございます。あの、王都の大将軍様でいらっしゃるのでしょうか? 申し訳ありませんが、お顔を存じ上げないものでして」
「んん? ああ将軍ではないが軍の上の方だ。まあそのようなことはよいではないか。お主の話を聞かせなさい」
「わかりました。えーと…… あの、どのようにお呼びすればよろしいのでしょうか」
「クロス、でいいわ。クラウスさん、お父様に冒険者となった理由やこれまで遭遇した事件について話して差し上げてほしいのです」
◇◇◇
僕は今まであったことを話し始める。
初めてスキルを使ったスリや、剛力無双、冒険者狩りや暁の戦士団の話など。
「お主の【交換】スキルは悪意のある者の思考も読めると言ったな。記憶も読み取れるのか?」
「記憶……ですか。そういえば試したことがないですね。ノトリーで試してみましょうか。…………ううっ!」
頭痛が走り、頭を押さえる。
「どうしたんですか!? クラウスさん!?」
エリアさんが慌てる。
「【交換】スキルで記憶を対象に指定したら急に頭痛が……。スキルの発動を止めたらなくなりました」
「よかった……」
「単に『記憶』、とだけ指定したからそうなったのではないか? 『今日の記憶』、と限定してみたらどうだ」
「! クロス様、なるほど。では試してみます。…………くっ!」
「クラウスさん‼︎ お父様これ以上は……」
「大丈夫です。ノトリーが今日受けている拷問の記憶が入ってしまっただけです。頭痛はありません。対象を絞れば問題なく使えます。クロス様、ありがとうございます。私のスキルについてまた一つ使い方が増えました」
「ふむ、お主のスキルだ、十分に使いこなせるよう精進せよ。悪用はするなよ。そのときはいくらエリアのお気に入りとて容赦はせんぞ」
クロス様の目つきが一瞬だけ鋭くなる。
「……そうならないよう気をつけます」
もとよりそんなつもりはないですけどね。
そうして、やっと夕食会は終わった。
相手のお父さんに会うのってこんなに緊張するのか。
いや、エリアさんと付き合っているわけじゃないんだけどね。
◇◇◇
「お父様、いかがでしたか?」
「ふむ、見た目は人畜無害そうであったな。固有スキルはとても凶悪だが。レベルが交換できるなど無限に強くなれるではないか。だが少し野心が足りぬ気がするな」
「『永遠の回廊』の踏破を公言する人間に野心がないとは思えませんが」
「それはそうだが、女に対してあまり積極的ではないのでは?」
「先日私から手を繋ぎました」
「それでは少々頼りないな」
「地位や財産目当てよりはマシですわ」
「それも人間としてある程度必要な欲望だろう。否定はできまい。エリアは聖人君子でないとだめなのか?」
「そういうわけではありません。好みの問題ですわ」
「そうか。S級になるまで育てられるかな。ステータスだけなら既にS級に近いとのことだったが……」
「育てる必要などありません。少し手助けをするだけでよいのですわ」
◇◇◇
エリアさん、とそのお父様との夕食会の3日後、本当の軍の呼び出しがあった。
軍がノトリーから聞き出した情報と、僕のスキルでわかる情報のすり合わせだ。
両方とも一致していたためこれで僕の役目も終わりだ。
半ばほったらかしにしていたミストラルさんとトルテさんとも合流だ。
ちゃんと武闘会での経緯は伝えている。
二人とも死者の祠の浅い階層で稼いでいたらしい。
モンスターハウスでレベルがかなり上がっていたおかげで苦労しなくて済んだ、と言っていた。
僕の今のステータスはこうだ。
LV:77
HP:14322/14322
MP:200/200
腕力:1286
体力:1230
速さ:1158
器用:859
知性:1059
精神:933
スキル
【生活魔法】
【上級剣術Ⅰ】【中級盾術Ⅳ】
【上級水魔法Ⅰ】【中級風魔法Ⅴ】
【中級雷魔法Ⅴ】【中級光魔法Ⅴ】
【ラージⅤ】【ストロングⅠ】
【腕力上昇Ⅲ】【体力上昇Ⅳ】
【クイックⅠ】【器用上昇Ⅳ】
【知性上昇Ⅴ】【精神上昇Ⅳ】
【スキル成長速度上昇Ⅱ】
【MP回復力上昇Ⅳ】
【レアドロップ率上昇Ⅲ】
【攻撃時MP回復Ⅲ】【撃破時MP回復Ⅱ】
【詠唱短縮Ⅳ】【詠唱時防御】
【不意打ち】【探知Ⅲ】【隠蔽Ⅳ】
【トラップシーカーⅢ】
【初級錬金術Ⅳ】
【毒耐性Ⅱ】【沈黙耐性Ⅱ】
【麻痺耐性Ⅲ】
【弱者の意地】
固有スキル
【交換Ⅲ】
レベルが77なのはノトリーのレベルと交換しているからだ。
武闘会テロ事件のあと僕のレベルは81まで上がっていたので少しでも下げておこうと思ったのだ。
さすがにS級ともなると、トドメを刺したのが一体だけだったとはいえなかなかの経験値だった。
そして、今後もこんな機会があったら大量の経験値を逃すことになるので【取得経験値半減】とはもうここでお別れすることにした。
ノトリーの【生活魔法】と交換だ。
【弱者の意地】があるのでかなり悩んだけどね。
【取得経験値半減】を手放すのはもっと後かと思ってたんだけど。
あとは低レベルで僕に悪意を持つ人が現れるのを祈るだけだ。
◆◆◆◆◆◆
いつもお読みいただきありがとうございます!
相手の家族に会うのは多分緊張するでしょうね。
向こうも同じように緊張しているかもしれませんが。
相性が悪くないことを祈るばかりです。
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