第11話 冒険者狩り 1 

 日が変わって、次に交換したのは……


スキル

【ドロップ率上昇Ⅰ】(←【全属性耐性半減】)


 ブレイズナイト戦での戦犯スキル【全属性耐性半減】だ。

 属性攻撃を受けたら被ダメージ1.5倍とか、やってられない。

 ランクの低いダンジョンなら属性攻撃はあまり関係ないだろうと思って後回しにしていたらあのザマだったから、今回できっちり交換してやった。


 代わりの【ドロップ率上昇Ⅰ】は、ドロップ率が5%上昇するが、まあ気休め程度だ。

 低級ダンジョンの雑魚ドロップなんてたかが知れてるし、ボスは100%ドロップなので優先度が低いスキルだが他にいいスキルがなかった。


 これで属性攻撃にも人並みの防御を得たので、安心してダンジョンに取り組めるというものだ。



 火の山岳を一週間中回り続けて、ボスの魔石をそれなりの数納品した。

 でも、まだランクアップには足りない。

 なぜなら、E級以降は複数のダンジョンボスの討伐実績がないとランクアップさせないようにギルドが決めているからだ。


 そうして、ドロップ品が美味しくないとか、倒すのに時間がかかる敵が比較的出現しやすいなどの不人気ダンジョンにも人手が回るようにしている。


 ダンジョンは長期に渡って攻略されないと、ボスが強化されたり、ダンジョン外に魔物が溢れ出すスタンピードが起きる可能性がある。

 もちろん、スタンピードは防がないといけない。

 

 とは言っても、不人気ダンジョンにはやはり人が集まらないので高ランク向けに少し色をつけて討伐依頼を出したり、騎士団が訓練や演習として討伐を行なっているのが実際のところだったりする。


 名目上は、冒険者になるべく様々な状況を経験させて、死亡率を下げるためとしている。




 そこで僕が疑問に思ったのは、あの脳筋パーティだった『剛力無双』はどうやってランクを上げたのかということだ。

 物理特化でどうやって様々な状況に対応したのか。

 

 それは、臨時にメンバーを募集して加入させてダンジョンをクリアし無事ランクが上がればそのメンバーは脱退、という方法をとっていた、ということをエリアさんが教えてくれた。


 抜け道あるじゃないか、といえばそうなのだが、別に『剛力無双』に限ったことではないらしい。

 パーティメンバーの加入や脱退自体はあくまで自由意思なのでギルドとしては黙認するしかないからだ。

 まあ、結果として不人気ダンジョンがある程度攻略されるならその方がまだマシだ、という妥協の結果でもあるが。




 そんなわけで、E級については2つ以上ダンジョンを攻略しないといけない。

 僕が次に狙うのは、『水成洞窟』だ。

 ほんとはブレイズダガーを持っているから、火属性が効果を発揮する風属性のダンジョンがいいのだが、メイベルの近くに風属性のE級ダンジョンがないのだ。


 水成洞窟では、ウォーターフロッグや、水魔法を使うゴブリンメイジ、槍を使うゴブリンファイター、アイスフライなどが出てくる。

 火の山岳と同じように、ほとんどが【水耐性Ⅱ】(水属性ダメージを10%軽減する)を持っていて、代わりに【地属性耐性低下Ⅰ】(地属性ダメージが5%増える)を持っている。

 

 実は火の洞窟のあとここの攻略を考えていたので、水のローブと水の指輪(それぞれ水耐性5%上昇)を購入していたのだが、【全属性耐性半減】がなくなったので結果として無駄になってしまった。

 

 今日からしばらく水成洞窟のお世話になる。

 ここも全7階で、4階に転移陣がある。

 地形効果のせいか、ダンジョン自体涼しくて過ごしやすい。


 まあ、何が出てもどうせ一撃なので、サクサク進んでいこう。

 ただ、アイスフライが今まで僕が戦ったことのない飛行系なので、それだけはちゃんと対処していく。




 そんなわけで、ボス部屋まで到着した。

 出てきたのは、ウォーターサーペント1体だ。

 様子を見たいので、わざと攻撃せずに待ってみる。

 水魔法のウォーターボールや噛みつき攻撃などをひと通り見てから、右に回り込んで首を両断した。


 光の粒子となって消えた後、魔石と水の槍を残していった。

 これで一体討伐だ。



 そして2週間後、ウォーターサーペントの魔石も規定数納めて、僕は無事D級に昇格した。



◇◇◇



 D級に昇格してから、僕はまだダンジョンに挑まず、常設依頼の薬草採取をこなしていた。


 別に依頼をこなしてからでないとダンジョンに挑んではいけないわけではないのだが、D級のダンジョンからは状態異常攻撃を使用してくる敵が現れ始めるため、【状態異常耐性半減】を持つ僕は、ダンジョンを後回しにしたいのだ。

 

 今回の採取の対象は、東の森ラークにあるリンリン草。

 緑色の葉っぱに水玉模様が特徴的な薬草だ。

 リンリン草は状態異常の『沈黙』を治す山彦水の材料となる。

 

 沈黙にかかると、喋れなくなって当分の間技や魔法が使えなくなる。

 放っておけば時間経過でも治るが、すぐに治すなら、火魔法の『フルーエント』や、光魔法の『オーディナリー』、万能薬もある。

 どの方法も今の僕には使えないけど。

 


 ギルドでリンリン草を納めて受付でカードの更新を終わった後、エリアさんからドキリとする発言があった。


「2週間ほど前から、冒険者を中心にスキルを奪われる事件が起きているようです」



 え? まさか僕のことじゃないよね?



 僕は氷のように体が硬直するが、エリアさんは特に気にする様子もなく続ける。


「犯人は黒髪の黒づくめの格好をした男で、目の下に赤い線が入った黒い仮面をしているそうです。また、被害の場所が段々と南から北へ移ってきているので、そのうちメイベルに来るのではないかと考えられます」 


「……そうなんですね」


 よかった。

 僕は茶髪で、今着ている水のローブは白色だから、黒づくめではない。

 僕のことじゃないらしい。

 スキルのことがバレたかと思った。



「もし目撃したり、被害に遭った場合は、速やかに衛兵とギルドに報告してください。」


「わかりました」


 スキルが奪われるのか。

 多分僕みたいな固有スキルなのかな。

 にしても、スキルを奪うなんて凶悪だ。



◇◇◇



 次の日、またラークの森で採取を続けていると、【探知】に反応があった。

 薬草を採取する場所を変えるふりをしながらゆっくりと後ろに向きを変えると、少し遠くに黒づくめの人影が見えた。




 ステータスも見える。名前はタケヤマ。LV52。MPが200。

 固有スキルは

【ギャングスター】

【最大MP2倍】(転生者特典)

【風神の加護】

【オートヒーリング】

とある。




 スキル強奪の犯人がこいつか。

 【ギャングスター】の内容は攻撃を当てた相手からランダムで1つスキルを強奪する。

 奪ったスキルによる技や魔法は消費MP半分で使用可能。

 さらに、技については再発動までの時間が半分になり、魔法は詠唱時間が半分になる。

 相手が死ぬと奪ったスキルは使えなくなる。

 攻撃を当てる前に、相手に対してスキルを奪う宣言をすることが必要。


 MP200で消費MPが半分なら普通の人の4倍分スキルが使えるってことか。

 こいつはやばいな。

 せめてMPは100に落としておかないと。

 ついでに僕のMPも増強させてもらおう。


 僕は【交換】を発動する。

 直後、僕の最大MPは200になったが、タケヤマのMPは減っていなかった。

 どういうことだ? 失敗したのか? 

 でも僕の最大MPは増えている。


 動揺している僕に、スキル発動の合図が聞こえてきた。



「さあ小僧、『お前のスキルを奪うぜ』」




◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 異世界の現地主人公に対する、転生者も必要だろうということで登場させています。もちろんチートスキルを標準装備です。

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