情報開示


 名前:シオン=ギルバート

 性別:男

 年齢:15

 身分:男爵

 職業:吟遊詩人

 ジョブレベル:1

 習得技:なし


「おぉっ……」


 俺は神殿から自分の屋敷に帰宅した後、エリュネシアからステータスを見る方法を教えてもらい、早速試してみたところだった。


 視界というより脳裏に表示されるような感じだが、はっきり見ることができる。自分の情報を知りたいと念じるだけでいいらしい。


 こうした簡単なステータスであれば、自分だけでなく視界にいる人間やモンスターについても見られるという。なんとも便利な話だ。


「シオン様、情報開示のやり方さえも忘れてしまったのですね。あんなに通りすがりの女性たちに使っていらしたのに……」


「あ……あはは……」


「覚えたてのときなんて、そのやり方でわたくしめのスリーサイズを知ろうとして、わからないので直に聞いてきた件については未だに覚えていますよ?」


「……ははっ」


 旧シオンに相応しいエピソードが続くな。我ながら軽く軽蔑する。


「もちろん、シオン様はわたくしめのスリーサイズ、覚えおりますよね? 恥じらいながらもちゃんと正直にお話したんですから……」


「あ、ああ……」


 俺は会話の流れでニヤリと笑ってみせた。そんなことがわかるはずもないんだが、覚えてないなんて言ったら刺されそうだし嘘をつくことにしたんだ。


「もー、そんなことはちゃっかり覚えてて、本当にドスケベなんですから……」


「はははっ……」


 エリュネシアのやつ、凄く嬉しそうだしこれでいいんだ。ついでに彼女の情報も確認しておくか。


 名前:エリュネシア=リネット

 性別:女

 年齢:17

 身分:メイド

 職業:回復師

 ジョブレベル:3

 習得技:ヒール


「……エリュは回復師なのか」


「そうですよ? 覚えているのはヒールだけですけど……」


「ジョブレベルが3ならしょうがないな」


 ん、俺の言葉に対して、エリュネシアが不満そうに口を膨らませた。


「シオン様……わたくしめがレベルを上げようとするたび、エリュたん、外へ行かずに僕の側にいてよってお怒りになられるから、まともにレベルを上げられないでいるんですよ? それならご一緒にレベル上げをしましょうと誘ったら、働きたくないと寝た振りをなさったじゃないですかあ……」


「な、なるほど……」


 旧シオンって性欲と独占欲だけは強いんだな……。


「シオン様、いくら外れといわれても、折角【吟遊詩人】というジョブを貰ったのですから、近いうちにレベル上げをするという決断をなさらないといけませんよ?」


「ああ、そうだな。んじゃ、今すぐ行こうか。それで、どこで上げればいいんだ?」


「シ、シオン様……? 本当に、今からレベル上げをなさるおつもりで……?」


「ん?」


 なんだ? エリュネシアが目を白黒させてる……って、そうか、サボリ魔だったのが急にアクティブになったから面食らってる感じか。怪しまれるとまずいし、ここは旧シオンに成りすますとしよう。


「エリュたん……僕は心を入れ替えたって言っただろ? だからレベル上げの日々も覚悟の上でジョブだって貰ったんだ」


「あ、そうなのですねっ。でも、以前までのシオン様だったら、外れジョブと言われた時点で最低でも三日は不貞寝するはずですが……」


「……」


 俺が転生してなかったら、このギルバート家はどうなっていたかと思うと心底ゾッとするな。もしこの窮地を乗り越えることができた暁には、旧シオンは俺に土下座しながら感謝してほしい。幽霊の姿で現れてもいいから。


「ルチアードと約束したんだ。今日を含めて七日以内に、以前までの自分とは違うところを見せるってな」


「な、なるほどです……。ルチアードさんはとても厳しい方なので、あの方と約束なさったということは、本当にシオン様が変わられた可能性が高いのですね。でも、なんだか怪しいです。まるで、まったく別の方に乗っ取られたみたいな……」


「……」


 エリュネシアって鈍そうで鋭い子なんだな。よーし、それならちょっとやり方を変えるか。


「や、やっぱり、なんだか怖くなってきたから明日がいいや……」


「ふふっ、言うと思ってました。人はそんなにすぐには変われませんから……。それでは明日、私がご案内しますね。あ、これはシオン様が良いことをなさったご褒美です!」


「っ!?」


 豪快に下着を見せつけてくるエリュネシア。


「今日は水色か……」


「は、はぃ……」


「ムフフ……って、あのなあ、エリュたん……僕は生まれ変わりたいから、そういうことをするのはもうやめるようにって言ったよね?」


「はっ……そうでした! つい、癖で……」


 すっかり旧シオンに調教されてしまってるようだな、彼女は……。

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