第3章 大公選編

番外編 ここから作品をお楽しみいただく人へ

 以下の文には「半身転生」の第83話までのネタバレを含みます、というかそれでしかないです。

 この話はあくまでも、「83話も読むのしんどい! ここからでいいか~」と言う人や、「なんかいろいろと忘れた」と言う人向けになっています。

 一話から読んでみたい人は是非そちらをお願いします。


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あらすじ


 元高校球児で大学一年生の主人公、千葉新ちばあらたは秋葉原で巻き込まれた通り魔事件により意識不明の重傷を負う。

 意識を取り戻したと思った時、彼の魂は2つに分裂しており、どちらかは日本を離れ異世界に行かなければならなかった。

 じゃんけんの結果、異世界に飛ばされた方の新は様々な出会い、出来事、時間を過ごす中である結論を出す。


「俺は……やっぱり俺は元の世界に帰りたい」


 帰りたいと願いつつ、異世界で出来た繋がりを捨てる気にもならず、当面の間は仲間たちと冒険者として暮らしつつ帰還方法を探すことに決めた主人公。

 これから彼の身に何が起こるのか、彼は日本に帰ることが出来るのか、そんな感じで物語は動いていきます。


世界観

 アラタ視点でいう元の世界は彼が秋葉原で通り魔に刺された時点で2018年の夏、異世界は地形、大陸の位置など全く違うものの自らの住む惑星を「地球」と称しており、日本語が通じる。

 文字は日本語ではなく、アラタの知識では見たことの無い字を用いている。

 アラタ曰く、「中世ヨーロッパっぽいけど作られたものや建物の寸法の精密さが気持ち悪い。あと中世ヨーロッパを俺は知らない」ようで、見た目の風景と実際の文明水準に乖離がある。

 魔術、スキル、クラスといった元の世界にない概念があり、それらはごく自然に日常生活に溶け込んでいる。

 主人公たちが住んでいる屋敷には魔術を用いた製品が多くある。

 当然ながらスマホやテレビは無く、火薬はあるもののそこまで浸透していない。


【人物紹介】


・アラタ(本名:千葉新)

満18歳、今年19歳。

横浜明応高校出身、明智めいち大学経済学部1年。

高校野球で世代No.1ピッチャーと評され、ドラフト1位確実だったが甲子園準決勝で敗退、その後肘の怪我と誹謗中傷に遭い野球を辞める。

引退後もトレーニングは続けており、身体能力や洞察力、コミュニケーション能力など野球選手として必要とされる力は一線を画していて、勉強が苦手だが知能は低くない。

現在Eランク冒険者、借金と言うか微妙なラインの金銭の貸し借りが多く、合計するとそれなりの額になる。

痛覚軽減、暗視、気配遮断、身体強化などのスキルを習得し、魔術も多少扱うことが出来る。

クラスは無し。

ダンジョン内で死亡後、自分を異世界に飛ばした神を自称する存在からエクストラスキル【不溢の器カイロ・クレイ】を与えられる。

目標は「元の世界に帰る」こと。


・清水遥香

現在19歳、誕生日は過ぎた。

明智大学理工学部1年。

千葉新とは幼馴染であるが、成長するにつれ疎遠になっていった。

甲子園の後、10月に帰省した新と再会、傷ついた彼を支えたいと願い側にいると宣言した。

野球以外無趣味な新に料理を教え、同じ大学に進学した後も面倒を見続けている。

2人とも家を離れ一人暮らしをしているが、彼女は頻繁に新の家に出入りしており半同棲状態にある。

両親は他界し、祖母がいるのみだったが遥香が大学に進学するとともに老人ホームに入居した。

明智大学は私立トップクラスの教育機関であり、学費もかなり高いが彼女は入試で優秀な成績を収め特待生として入学金や授業料、施設費など一切の学費を免除されている。

秋葉原での通り魔事件の日、本来は新のパソコン探しに付き合う予定だったが所属する部活の予定変更によりドタキャンした。


・ノエル・クレスト

現在17歳、誕生日は過ぎた。

カナン公国のクレスト公爵家、その当主シャノン・クレストの一人娘。

【剣聖】のクラスに目覚め、少々歪な状態ではあるが力を制御している。

少々頭が悪く、冒険者として必要なことをできないことも多い。

しかしその抜きんでた戦闘力で、その他一切を無視してCランクの地位を獲得しており、他のことが出来ればもっと上の等級を狙うことも出来る。

身体強化、見切り、剣聖の間合いなど戦闘向けのスキルを多く習得しており、近接戦闘では無類の強さを誇っている。

剣聖の危険性を恐れる周囲から腫れものを扱うように見られていたが、2年間の間落ち着いた状態が続き、徐々に打ち解けている。

アラタをパーティーに誘ったのは、彼が異世界人であり手元に置いておきたいから、仲間が欲しいけど貴族で剣聖という色眼鏡で見られることが嫌いだったから、と言う理由がある。

我儘盛りの子供であり、剣聖の呪いのせいもあって日常生活に支障をきたすレベルで生活力が低い。

アラタの作る食事は好きだが、少し薄味なのでは? と思っている。

でも自分で作ると台所が全焼するので決して自分では調理しない。


・リーゼ・クラーク

満18歳、今年で19歳。

クラーク伯爵家の長女、兄が2人いる。

聖騎士のクラスを持ち、ノエルとは幼馴染。

ノエルのお目付け役であり、パーティーメンバーであり、姉のような存在であり、周囲との間を取り持つ大事な人材。

貴重な治癒魔術師でもあり、重篤な患者の手当てに駆り出されることもしばしば、その為稼ぎはノエルより少し多い。

ノエル同様Cランクの冒険者で、こちらも生活力は高くない。

アラタがカジノで有り金全て失った時、屋敷をプレゼントしようと提案し、実際に手続きを行っている。

最近肩こりが酷いが、ノエルに相談すると口をきいてくれなくなるのでアラタに相談している。

彼を困らせて反応を楽しむのが最近のマイブームなのだ。


・アラン・ドレイク

賢者のクラスを持つ魔術師、魔術におけるアラタの師匠。

ノエルとリーゼが冒険者になった時から密かに2人のことを見守っており、その為ならアラタを駒として死地に送る。

実際にアラタは一度死亡し、彼の手で蘇生された。


・ハルツ・クラーク

Bランク冒険者で聖騎士のクラスを持つ、リーゼの叔父。

正義漢、真っすぐな性格をしており、皆から尊敬されている。

カナン公国の現役冒険者の最上位はBランクであり、その一角であるハルツ及びそのパーティーメンバーは非常に優れた存在である。

彼もノエルとリーゼのことを陰ながらサポートしており、2人の成長と冒険者としての成功を嬉しく思っている。


・シャーロット・バーンスタイン(本名:アレクサンダー・バーンスタイン)

重戦士のクラスを持つ元Aランク冒険者、不屈の2つ名を持つ。

現在は孤児院で働いており、生来の性別とは別性を自称している。

アラタの剣術の師であり、アラン・ドレイクとは違い彼が自らの命を粗末に扱ったり、良いように使われることを非常に嫌う。


・エリザベス・フォン・レイフォード

22歳、誕生日は過ぎた。

レイフォード公爵家の当主。

現大公の引退を理由に、来年開催される大公選、その候補者の一人であり最有力候補。

候補者の中ではもちろん最年少だが、その卓越した手腕と頭脳で貴族をまとめ上げ、同じ候補者であるノエルの父、シャノン・クレストより優位に立っている。

アラタの恋人である清水遥香と瓜二つだが、本人は否定している。

身内には甘いが、傘下でありながら好き勝手に暴れまわり、アラタにも危害を加えようとしたフレディ・フリードマンを処分するなど一線を越えた者に慈悲をかけることは無い。

彼女は隣国ウル帝国との融和路線を提唱している。


【用語集】


・魔術

文字通り魔を扱う術、学問体系。

魔力を活用して何らかの効果を得るもの、という考えだが、これでは広義の意味のスキルも含まれてしまうため、その辺りはあやふやに考えられている。

魔力は血液のように体内に存在するエネルギーであり、異世界の住人からすればそこまで特別なものではない。

身体の大きい人間の方が含有量は多く、内向的な人間の方が操作に長けている傾向にあるが、一般人レベルでは大差はない。

雷のようなもの、炎のようなものを作り出す初歩の魔術から、雷雲そのものを作り出したり、果てには人間の精神に干渉する高度なものもある。


・クラス

15歳になった時、すべての人間に等しく与えられる恩恵。

作中では剣聖、聖騎士、賢者、重戦士、村人、絵師、勇者、暗黒騎士、黒魔術師、召喚術師などが登場しており、商人や戦士、果てにはパン職人やニートまで確認されている。

異世界におけるパン職人の希少性は置いておくとして、クラスの恩恵は微々たるものである。

絵師は審美眼が鍛えられる素地があるだけ、村人は特になし、商人はコミュニケーション能力の向上や暗算能力の向上など、個人の能力差で覆される程度のものが関の山である。

しかし中には剣聖のような特殊なクラスがあり、呪いを受けることを引き換えに常軌を逸した恩恵を受けることもある。

一般に何のクラスが備わるかは偶然だが、15歳になるまでに歩んできた人生に多少影響を受けるというのが定説である。


・スキル

レイテ村のエイダン曰く、「なんかすごい力」だがその道に明るいものから言わせれば、魔力やクラスの力、素の身体能力が高じて普通の人間から見れば異能と見えなくもない技術を総称したもの、ということらしい。

暗闇が昼間のように見える【暗視】や、痛覚をある程度緩和する【痛覚軽減】などがある。

これらは習得した者が勝手に呼称しているだけであり、同じスキル名で呼んでいるからといって完全に同一のものとは限らない。

例外として、剣聖固有のスキル【剣聖の間合い】やアラタが神からもらったスキル、【不溢の器カイロ・クレイ】など持ち主が決める前から名前があるものもある。


・魔物

魔力結晶、通称魔石を生成する可能性のある生物の総称であるが、動物や植物と大差はない。

アラタは元の世界に存在するものが動物、そうでない異世界固有の生物が魔物と決めつけているが、その判断は誤りである。

魔石は魔力を含んでいるため、魔道具に使用可能な場合もあるが、ほとんどの場合ただのデキものなので用途はない。

魔力結晶を持つミノタウロスの肉質は魔力を多く含み、ノエルの好物である。


・魔道具

魔力回路を構築し、魔力を流すことで動かす道具の事。

魔道具と言う呼び方はそれに特別な可能性を感じている魔道具職人こだわりの呼び方であり、普通の人はただ「道具」と呼ぶ。

魔道具職人に、「湯を沸かす道具をください、あぁ、魔力で動くやつ」と言えばアラタのように門前払いを食らう。

故に困ったら魔道具と呼ぶのが正解であり、冒険者など魔道具の恩恵を多く受ける人は総じて魔道具と呼ぶ。


・大公選

この国の最高権力者、大公を決める選挙。

投票権を持つのは貴族家の当主たちであり、貴族は税金を多く収め成りあがったものを除いて世襲制なので民主主義ではない。

候補者は全ての当主であり、実際には派閥の長にある程度票が集まる。

性質上一般人は大公選出に干渉できないが、大公や貴族が好き勝手をすると民衆が反乱を起こし、その際軍や警邏も言うことを聞いてくれないのでそこまで独裁的な国家運営はなされない。

個人の力が強い異世界ならではだが、抑圧しようにも効果的な手段がないので市民からすれば頭が変わる程度の認識である。

彼らが楽しみなのは大公選出を記念したお祭りであり、貴族の持ち出しで振舞われる酒や食事なのだ。


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こんな感じになります。

何となく「半身転生」と言う作品についてイメージを持ってもらえれば光栄です。

キャラクターの数も、用語ももっとたくさんありますがこれくらいを頭の片隅に置いておき、「そういうもんか」と考えていただければと思います。

次回から「第3章 大公選編 第84話 給料ってどうすればいいですか」を先頭に連載させていただきます。

大公選編を読み終えた時、ある人は泣き、ある人は怒り、悲しみ、喜び、笑い、感動するんじゃないかな、そうだといいなと思います。

これからも作品に興味を持っていただければと思います、では。

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