俺に自堕落な生活を下さい

土ノ子

0-0 終わりなのか始まりなのか…

 この感覚は初めてだろうか。

 暗い所で何も音が聞こえないのは。

 あのうるさいエンジン音。

 寝る時以外なら鳴いてても気にならない虫。


 いつもある音が何もない。


 周りに人が居ないのも久しぶりかもしれない。


 突如の事でいつもより頭を働かせていた。


「これは夢・・・じゃないか。だとしたらなんだ?」


  結局答えは見つからなかった。


 彼もずっとその場に居て考えるのもしんどいので歩き出した。



 が…



「・・・は?」


 彼は歩こうと足を動かして気が付いた。


「俺・・・浮いてる。」


 彼は周りを見渡しながら歩き出した・・・のでは無く平行移動した。


 彼は今一度記憶にある限りを思い出してみる事にした。


 俺の名前は浮島 優樹うきじま ゆうき。高1の新参ボッチだ。3年前に親友を亡くなりそれからはボッチとしてやっている。今は12月だが高校を10月に辞めている。

 今は農家として独学で色々学んでいる。

 親は大手の家電メーカーの上層部で家に帰ってこれないが別に不自由なことも無い。

 しかし中退した奴は家に置かん。と言われ現金50万を渡され家を追い出された。


 ここまで思い出せればいいだろう。


 それにしてもこの空間は謎だ。

 なぜ俺はこんな薄暗い場所に1人でいるのだろう。何処を見渡しても青い空など見えない。・・・これってあの世ってやつ?


「・・・え、この感じ本当にあの世なんじゃ。」


 俺は思い出せるだけ思い出してみる事にした。


 ・・・確か今日は朝から目覚まし時計に耳元で鳴かれ、イライラしていた。

 しかし高校を中退した俺は収入の為に、自堕落な生活を手に入れる為に怠い身体を動かした。毎朝のルーティンの一杯の水を飲み、朝食のコーヒーを飲む為にやかんに水道水を入れた。

 すると玄関に備え付けられたベルが鳴った。

「朝から迷惑なのがいるもんだ。」

 そんな愚痴をこぼしながら少し重い玄関を開けた。 


・・・あれ?そこからの記憶が無い…。


 次にやる事は周りの確認だと思った俺はもう一度周りを見渡す事にした。


 宙に浮く動画らしきもの。周りが暗いからより存在感が際立ている。

 そして不思議なのがその動画には俺が写っていた。

 俺の視点では無く第三者視点というのもまた気味が悪い。

 地面は綿あめみたいにモコモコだ。しかし宙に浮いていて近寄ることもできないので本当にモコモコかの確認が取れない。

 青い空は見えず、太陽も月も星も見えない。

 今周りの確認ができるのはこの宙に浮いた映像のおかげ・・・ということか。


フッ。


「!!っだ、誰!」


  背後に気配を感じ振り返ると白髪のおっさ…お爺さんが立っていた。

 お爺さんの手には本と・・・三叉槍を持っていた。


「お主、名は?」


「・・・んぇ?」


 俺は唐突に投げられた質問によく分からない反応を示した。


「お主、名は?」


 これさ、俺が答えなかったどうなるんだろう。


「お主、名は?」


「さ、さぁ。」


「お主、名は?」


・・・めんどくさい…。自分がめんどくさくしたのだが怠くてしょうがない。


「お主、名は?」


「浮島 優樹です。」


「ふーん。」


・・・え?人の名前聞いておいてそれ? それは人としてどうなんだ?というかここにいる時点で人では無いのか?


「私はゼウス様だ。名前を聞けばどういう存在か分かるな?」


 ま、まぁ神様とか・・・あ、人としてとか思ったけどこの人さ、人間じゃ無いじゃん。

 あと、自分に様付けするなよ。


 ゼウスは名乗った後、手に持っていた本を開いた。


「多分もう気付いているとは思うがここは天界。要するにあの世ってやつだな。そしてここにいるという事は…。」


 やっぱり死んでいた。 確かに異世界転生系のラノベの空気感で何となくは気付いていた。


「で、死因だが・・・なまはげにビビって死んだ。だそうだ。・・・さて、死因などどうでも良くて平凡くん。この先どうしたい?」


 そんなスピーディーに言われても困るのだが。

 えっと、なまはげにビビって死んだ…。

 え?ダサくね?まだトラクターに耕されそうになってビビった某有名な主人公の方がいいんだけど…。


「うむ。稀に見る自動車のタイヤに巻き込まれて綺麗なサイコロ死体になったみたいだな!より見た事ないぞ。」


「ですよねー。っていうかそんな死に方する人もいるんですか。」


 ゼウスは極たまにな。とボソッと言った。

 なんか闇を見た気がする。


 それにしてもこんな暗い場所でお爺さんとなんて・・・。

 俺の次の将来を決めるには展開が無さすぎる。

 もっと女神様とかに慰めてもらいながら決めたいものだ。


 え?気持ち悪い?仕方ない。死んだ事のない人生幸せ者には分からぬ感情だよ。


 でももっと青春したかったなー。まぁ高校中退した奴がなにを言ってるって話だけどな。


「仕方ない。これからの人生を決めよう。選択肢をやるから選べ。」


ゴクリ。


 自分のこれからを決める・・・か。良い子にしてたから悪い方には転ばないと信じたい。


「マグマダイブするか、地獄に行くか、マグマダイブするか、島流しになるか、異世界で生活するか選べ。」


 指を折りながら選択肢を聞いたがマシな選択肢とか異世界行くしかないじゃん。


「決めたか?」


・・・と言う事で俺は異世界に行くと言う選択肢を消去法で選んだのであった。

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