第3話 入り口

結界の壁に入り口を作った。


犬は臭いにつられる。


だから この入り口から良いにおいが漂い出すように、血のしたたる肉だまりを作った。


最近はドックフードしか知らないペットも増えたので いくつか有名なメーカーのペットフードの臭いのする入り口も作った。


臭いにつられてフラフラと結界を超えてきた者達が、拾い食いしながら奥へ奥へとすすむように 犬幅ギリギリの通路もつけた。


ペットフードは パラパラとこぼしておけばいいだろう。


肉だまりへの道は 血のしずくを転々と垂らしておけばよい。


臭いが強い場所でさあ食べようと思うと ドスン落とし穴に落ちて、滑り台をすべることになる。 その行先は・・

 ① 少しの餌がある小部屋


 ②土の地面が広がるところ


 ③大広間


①~③のどの部屋も、おいしい餌を食べつつ次の空間へと誘導される親切設計だ。


ペットフード組は ①タイプの部屋を巡り歩くようにした。


血の臭いに惹かれた連中は②や③タイプの部屋に行く。


大広間の真ん中には 血の滴る肉の塊を積み上げておいた。


①の小部屋タイプには ドックフード入りの皿と通風孔がある。

 この通風孔から血の臭いをたどっていくと 大広間に出ることができる。

 あるいは ペットフードの臭いにつられてさらに別の部屋に行くこともできる。


滑り台をさかのぼることはできないが、通風孔から別の部屋に出るときに

やばい!思ったら ちゃんと引き返せるようにはしておいた。


①~③のどの部屋であっても 眠り込めば元の世界に戻れるようになっている。

だってここは 幽玄の世界のダンジョン。

つまり眠りを通して、自分のリアルと行き来するダンジョンだから。


・・・

犬たちが 面白いぐらい餌の臭いに釣られてはいったきた。

 日本の飼い犬たちの中には 小部屋を次々と走り回ったあげくパニックになる犬もいた。


そのパニック犬の興奮が ダンジョンの維持エネルギーとなる。

パニック犬はたいてい、実家の御主人さまに呼び戻されて=起こされて、リアルに帰っていった。


 あるいは 貪欲に小部屋巡りをしながらフードを食べ歩く犬もいる。


 そういう犬のために ちょっとしたいたずらを仕掛けておいた。

 エサ皿に近づくと ドスンと落とし穴に落ち込んで、すべり台経由で「元の部屋=すでに餌を食べ終わった空っぽの皿しかない部屋」に送り込むんだ。


 だって ここはダンジョンなんだから。ちゃんとハラハラドキドキ、悔しがったり怒ったりして、感情エネルギーという代価を払ってくれなくては、ダンジョン経営が行き詰まるよ。

 (って ダンジョンコア様がご指南くださった。)


 高級半生タイプのドックフードを堪能して眠りこけたまま 元の実家に帰っていく犬もいた。


だってここは 犬たちが眠っている間にさまよいこんでくるダンジョンだから

リアルで目が覚めれば脱出できる。


しかし ダンジョン内にわんこ達が残していったものは すべてダンジョンが吸収してダンジョンエネルギー

に還元される。

 もちろん 来訪した犬立ちの興奮や恐怖・ワクワク感も貴重なエネルギー源となる


夢の中で死んだらリアルでも死ぬ

夢の中で出したものは ダンジョンに吸収される。 そういう世界だ。



 一方リアルで痩せこけていた犬たちは、まっしぐらに肉部屋を目指し

 生肉の山にかぶりつき、やがて犬同士で取り合いを始め・・・

  中にはダンジョンに還元される犬もいた。


そんなおバカ犬だけでなく、生肉を咥えて安全な隠れ家で食べることを求める犬もいた。


そういう平和的な犬たちの為に ②の土の庭を用意しておいた。


(ダンジョンコア様は スプラッタがお好きなようだが

 俺は平和路線だ。このあたり 前のご主人様の影響かもしれん。


 スプラッタで手っ取り早く稼ぐのがダンジョンコア様のお好み。

 俺は リピーターを増やして 安定経営がいいな。


 「死して屍拾うものなし」が隠密の世界らしいけど

 「死んだら丸儲け」というのがダンジョンコア様のお考え。

 どっちも怖いぞ>< )


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