第4話 力を貸しますっ!

4-1 大乱闘です。

【前回までのお話】聖剣× 魔剣〇【以上です】


 さきほどまで聖騎士だった―――ひいてはオークさんだった死体モノに、悪罵あくばと、唾と、嘲笑が投げつけられます。


「フガッ。何が聖騎士パラディンオークだ情けねぇ」

「ちょっと珍しい剣を拾ったくれぇで威張りやがってよ」

「俺が目を付けていた人間の雌も「騎士のほまれだ」とか抜かして殺しちまうしよ」

「騎士道だか知らんが、口の聞き方がしゃらくせぇんだよ」

「せいせいしたぜ。―――ペッ!」

「ギャハハ! これでまた好き勝手できるってもんだ!」


 かなり抑えつけられていたらしい手下オークさんたちの暴力は遺体損壊にまで及び、私は、それを、見て、しまって―――


 胃が、キュゥ、と甲高い音を立てました。


「うっ……おぼっ!!?」

「シーさま!?」

「お次は敵前で嘔吐か。つくづくこの世界に向かん娘が召喚されたものだな」


 レインさんの言う通りだ。


 まだ何も終わっていないのに、情けなくうずくまってしまう。


 辛い。なんで私がこんな目に。もう、家に帰りた―――


 ぽん。


 と、背中に暖かな感触。


「……助かった」

「セイル、さん……」


 なぜなのでしょう。

 最初に助けられたときも、今も。

 セイルさんに触れられると、安心します。


「セイルさんも、しーって呼んでいいですよ?」

「しー……」

「はい」


 私はすっくと起き上がりました。


 もう気持ち悪さも身体の重さも無いです。


「さてレイン師匠、こっからはどう動くスか?」


 状況は何一つ変わっていませんが。


「時間稼ぎはできた。あとはがギルドの連中を連れてくるが早いか、我らが擦り切れるが早いか―――」


 聖騎士オークさんが死んだところで、10体はいる手下オークさんに囲まれてしまっています。


「せいぜい良き出目でめを期待して大乱闘と洒落しゃれ込もう」

「うぃ~ッス」

「……うん」


 レインさん、ジュンヤさん、セイルさんが何やら各々晴れがましい表情です。


 男の人ってみんなそうなんですか。命は投げ捨てるものではないと思います。


 オークさん達も「面倒が無くていい」などと喜色満面にこん棒など構えていらっしゃいます。


「ブハハ! 見たとこコイツら低経験量レベルのザコ狩り一党パーティだ! 全員でかかれば楽勝だぜ!」

「「「ブヒィィィィ!!!!」」」

「統率はない! こちらは固まって各個撃破!」

「了解ッス!」

「……!」


 またもや修羅場が始まってしまいました。


「あわわわわわわわ」

「シーさま! 俺たちの後ろで背後のオークを確認してくださいッス」

「え? え? なに? なにが!?」


 私はあたふたするばかり。パニックです。お荷物です。


 と。


「ブヘヘヘヘ……!」


 その背後からオークさんが来ました。


 しかし、声が出ません。


 前の御三方は別のオークさんの対処に夢中です。


「ふんっ!」

「ひっ!?」


 こん棒が私の小さな頭に振り下ろされます。


 ああ、私もあの聖騎士オークさんと同じく激しくR指定のスプラッタ御遺体になるかと思われました。


 バキッ!!


「……あれ?」


 ―――ですが。


「ブフッ!?」

「痛くないです」


 そういえば。


 しーはレベル100でした。


【続きます】

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