合流

「あ、オーウィンさん!お、お待たせしました」


 あの後昼頃までにクエストを済ませた俺は無事待ち合わせ場所の広場でフリューゲルと合流した。何故かフリューゲルの顔には少し疲労が見える。


「金は足りたか?」


「はい。寝具は床に敷いて使うやつが安かったのでそれを。服もちゃんと買いましたし、食器とか消耗品も色々と……」


「足りたのなら良い。……少し疲れたか?昨日の今日だ、まだ不調が続くようだったら今日は休日――」


「い、いや!全然大丈夫です!……買った物を部屋に運ぶ時に何回も声をかけられちゃって」


「ああ……」


 大量の荷物を抱えるフリューゲルは恐らく目立つ。単純な親切心か下心有りでかは知らないが、手伝いを申し込んだ輩が何人か居たのだろう。


 そしてこいつは未だにかなりの人見知りである。俺以外の誰かと喋ってるのをほとんど見かけない。


「そういうのは適当にあしらえば良いんだ。まだ慣れないのか」


「う……」


「クエストによっては複数人で動いたほうが効率的な物もある。そういう場合は仲間を募る必要が出てくる。等級が上がれば半強制的に他者と組まされるなんて日常だ」


「……」


 フリューゲルの顔は強張っていた。銀等級はまだしも、金等級ともなればギルドから直々にクエスト受諾者として指名される事が普通になる。その際、そのクエストにどの冒険者を何人組み込むのかはギルドが決める事だ。


「ついでに言えばその場に俺は確実に居ない」


「……!」


 とんでもない事実に気づいてしまった、とでも言いたげな顔だった。フリューゲルが自主的に受けたクエストならともかく指名クエストで同行は流石に無理だ。


「……顔がとんでもない事になってるぞ。そもそも何回も言ってるだろう。いつまでもお前の側に俺が居る訳じゃない」


「ど、どどどうすれば」


「試しに適当に誰かに声をかけてみればいいじゃないか。男連中なんて誰を誘っても飛びついてきそうだが――」


「むっ、無理!絶対無理です!……せ、せめて女の人なら」


「俺の知り合いにはあまり居ないな。……ま、同性の方がやりやすいと感じてるヤツはお前以外にも居るだろうから、見かけたらお前から行ってみろ」


 一瞬、さっき話したフェリエラが思い浮かんだが今は等級に差がありすぎる上に相性は最悪だろう。フリューゲルの実力を一度でも見ればあいつが認める可能性はあるかもしれないが。


「やって、みます」


 モンスターと戦う時よりも悲壮な様子だった。戦闘技術云々よりこっちの方が深刻な問題なのかもしれない。


「さ、そろそろ行くぞ。まずは腹ごしらえだ」


「……あ」


「どうした?」


「お、お金全部使っちゃいました」


「……お前、金の使い方下手なんだな」

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