第2話 話し合い
「いやー、今日はついてる!」
吹雪も去り青空が広がっている。少し登った丘からみんなのいるシェルターも確認できた。何とか帰れそう。
ここは軽く見て回ったけどよく分かんない内容も多かった。またおじさんと来よう。
マキナも目覚めたらあんな所にいてたまたま私が来たから声をかけたらしい。
だからここの事もよく分からないって言ってた。
まぁ分からないなら分からないで解き明かせばいい。
それこそが楽しいのだ。
「綺麗な景色だね」
「そうだね」
後ろから声をかけてきたのはさっき会ったマキナ。私の予備の服をとりあえず着せたけどキツそう。帰ったら大人用貸すよ。
...私も着れないかな。
「そういえば君、会った時から思ってたけどなんか凄いね」
「ん?どうしたの急に」
マキナ変な事を聞いてくる。
「まぁ色々あるけど特に旧時代の言語が読めるなんて凄いと思うよ」
「へへん、一から解読したからね。最初は大変だったけど最近は分からない言語も減ってきたよ」
「恐ろしい子」
そんな会話をしながらみんなの元に向かう。
瓦礫の下にいたマキナだけど損傷は外面だけで中身はほとんど傷1つなかった。凄い耐久力、しかもこれで戦闘用じゃないんだからビックリ。
そりゃ人類滅ぶよ。
「エリー、このままみんなのところに行っても大丈夫なの?絶対みんな反対すると思うんだけど」
「うーん、まぁ大丈夫じゃない?みんな受け入れてくれるよ」
「エリーに言われてもなぁ、不安だ。エリーに迷惑かけない?」
「マキナは心配性だなぁ」
まぁ反発はあるだろうけどなんだかんだ大丈夫でしょ。
だんだんとシェルターが見えてきた。正確には入口だけど。
シェルターはAIに見つからないように地下に埋まっている。出口も何個もあって緊急事態でも逃げられるようになっている。
こういうのが色んなところにあるんだけど私たちが作ったんじゃない。
たぶん昔の人が作ったまま残ってるんだろう。なんのために作ったかは知らないけど、私たちにとっては好都合。
ありがたく利用してもらってる。
「ラルクー、聞こえるー?おーい」
そういってシェルターの壁をガンガンと叩く。
ラルクは私たちのリーダーでいつもみんなをまとめてくれる。
いろいろとわがまま言って迷惑かけてるから申し訳ないけど毎回なんだかんだ言うことを聞いてくれる。家族のいない私にとってはお兄ちゃんみたいな人だ。
やがてシェルターが開いた。
「エリーか?無事だったか良かった」
そういってラルクは安堵の息を漏らす。防寒着を身につけ腰には銃、空いたリュックに詰められてるのは大量の食料。
もしかしたら今から探しに行こうとしてくれていたのかもしれない。
ありがたいね。
みんなもぞろぞろ集まってきて帰ってきたんだと改めて実感する。
生きてるっていいね。
しかし、ラルクの目線がマキナに移ったところで急に顔が険しくなる。
「エリー、それはなんだ」
ラルクが銃口をマキナに向ける。近くにいた他の数人も気づいたのか銃を構えた。
「エリー、それが何か分かってるのか」
ラルクの重い声がのしかかる。
そりゃそうだ、私の隣にいるのは人類を滅ぼしたAIなのだから。
人型で戦闘力が無いと言ったが私たちを殲滅させる程度の機能はマキナにはあるだろう。
正面から戦ったとしたら私たちに勝ち目はない。
「分かってるよ」
「じゃあなんで連れてきた。俺たちみんな殺す気か」
ラルクが叫ぶ。こんなラルク見たことない。
だけどこんな事じゃ私は怯まない。
「ラルクお願い」
「...エリー、流石にそのお願いには」
ラルクの言葉を遮るようにラルクとマキナの間に手を広げながらに入る。マキナが何か言ってるけど気にしない。私の覚悟はもうとっくに出来てる。
「お願い」
これは私の出来る覚悟の証明。打てるものなら打ってみろ。
「...わかった」
そう言ってラルクゆっくりと銃を下ろす。
「全く、その図太さはどこから来るんだか」
はぁとラルクはため息をついた。
「エリー、今回は流石に俺だけじゃ決められない。だからとりあえず保留だ。保留中はそいつのことはお咎めなしということにする。お前らもいいな」
そう言ってラルクはみんなに伝えるように言ったあとシェルターの奥の方へ行ってしまう。
ありがとねラルク、いっつも迷惑かけっぱなしだ。
「じゃあ行こうかマキナ」
そう言ってマキナに手を伸ばす。マキナは口をパクパクさせて『ありえない』みたいな顔をする。
もう、大丈夫だって言ってたのに。
「ほら行くよ」
そう言って強引にマキナの手を掴んでシェルターの中に入って行く。
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