MISSION 38. 敵の正体謎すぎ
『これはただの対艦ミッションじゃないわよ? 旗艦は輪形陣中央の自動車運搬船で
「だからおれたちの役目は152mm砲弾をぶら下げた
「いやいや、全長二メートルもないじゃん、厳しー」
『あら、自信ないのなら
「ふ、お前、煽るのが下手だな」
当然、そう言われて引き下がるおれではない。
今回のミッションは
その為、先行してリディア大佐とハニーが囮になり
「私も射撃得意。よろしく頼む、アゼル」
「…………いや、いきなり作戦無視かよお前」
爆撃任務と露払い役の二つを同時にやるつもりの
「あんたマジでアホでしょ? 自分の国のことでしょ? 真面目にやりなよ」
おれの僚機となるビターが呆れるように文句を言うも、
流石に無視はかちんときたらしい。
ヒートアップしたビターの罵詈雑言を通信機が垂れ流す。
その隙にタッチパネルで
ふむふむ。
「なぬ?【FAO】ランキング三位だと?」
こいつは驚いた。
超絶立派なランカーじゃあないか。
「あ、こいつもしかして、トントンか?」
『なによそのパンダみたいな名前』
「中国の渾名の付け方だ。確かにこいつなら良い腕だったな」
以前、何かのイベントミッションでスコードロンを組んだことがある。
自分の他にも偏差射撃を得意とするプレイヤーがいたもんだと舌を巻いた覚えがあった。
その時のコールサインがトントンだったはずで、機体のカラーリングが白地に黒の水玉模様という巫山戯た色合いが強烈な印象だったのだ。
『じゃあリディア大佐のアルファ支援を
「まあそれがいっかな」
ランキング三位の
標的が小さすぎるが、おれのようにワンショットワンキルを気取らなければ、うまく撃墜もできるだろうよ。
一応、リディア大佐に作戦変更を伝えると、
「了解した」
と、その一言で済んだ。
潜水艦の一件もあったから抗議するのかと思いきや素直に応じている。
――――いや、何か考え事をしているのかな?
『ちょっと調べてみたんだけど』
「なに? 世間話?」
『違うわよ。この自動車運搬船、全長二〇〇メートル、排水量五〇〇〇〇トン、船内に収容できる自動車の数は役五〇〇〇台。中国海軍の
「何かって?」
『だから偽装されているから何かまでわからないわ。現段階の赤外線解析で大型自動車に似たようなモノとしか言えない』
随分、歯切れの悪い
『本題はそれじゃないのよ』
「偽装のほうじゃないんかーい」
『空母打撃群狙いの爆発物って何かしらって思って流出されていそうな核を洗っているんだけど』
「え、おいおい、ここにきて核兵器搭載って冗談きついし、んなわけあるかいっておれでも言えるぞ?」
とんだ物騒な世間話をぶちまけてくれる。
『あんたの言う通り、そんな物騒なモノが流出とかはなかったわ。ただその航路を辿ると中東から出港しているみたいで中古車が満載されているようよ。出国記録からも輸出用として関税手続きも受けた立派な商品なんだけど……』
「あのさ、そもそも疑問だったんだけど、なんで自動車運搬船なの? 可燃物満載のタンカーとかのほうがよっぽど説得力あったんだけど?」
石油とか液化天然ガスのほうが災害感半端ないと思うんだけど?
『それはね、自爆車両だからよ』
「…………ん?」
『じ・ば・く・しゃ・りょ・う』
「ちげえよ! 耳が遠いとかじゃないから! 何だよ自爆車両って?」
『本家本元の
「なんか、壮大な、手間のかかる仕掛けというか…………」
今作の【FAO】の設定おかしくないか?
ここまでミッションを進めていて分かったのは、世界中の国々が『国籍不明機』に襲撃されていて、互いに疑心暗鬼になっている状況ということだ。
そこには戦争ゲームでよくある、地上戦がまったく行われていない。
ミッションに地上軍の支援がないのが一番の証拠だろう。
おまけに登場する戦闘機も一世代どころか二世代前のものや、冷戦期に登場した骨董品まで近代化改修されて登場している。
今のミッション内容もそうだが、ところどころアナログ的な兵器も登場する。
やっぱりシナリオライターのセンスを疑うぞこのゲーム。
『ざっと計算してみたんだけど、仮に自動車運搬船の積載している
おれは
翠色のツインテールも特に思考の邪魔をしない。
1キロトン=TNT化学爆薬1000キログラムという換算として。
砲弾に炸薬量7キロくらい、対戦車地雷が10キロくらい?
それぞれ自動車に1個ないし4個程度をトランクルームに入れる。
なぜトランクかって?
座席に置いたら一目瞭然じゃないか!
「おれの大雑把な計算でもかなりの振り幅あるね?」
『仕方ないじゃない。それぞれの自動車に幾つ
「その威力、下限でも核弾頭と同じ出力なんだけど?」
おっと誤解しないでくれ。
あくまで爆発時の破壊力だけの話だ。
実際はどれだけの規模になるか不明だが、太平洋戦争時の旧日本軍機の特攻で被弾した弾薬補給艦【ジョンバーク】の大爆発に匹敵するくらいだったら洒落にならない。
空母打撃群も裸足で逃げ出す破壊力だろうが、まあこれは接近されたらの場合であって、速力からして余裕で振り切れるものだろう。
ただし、その海域にいなかればならないと制限があった場合はその限りでない。
うん、つまり今の状況のことね。
『あとね、無人船団も自立制御かと思いきや遠隔操作なのよね』
「マジ? 衛星回線というかGPSとかで?」
精一杯の困った顔を浮かべる
『GPSも使っているようだけど、他にはロシアの
「随分と手の込んだ……、込みまくり祭りだな!」
一般的に有名な測位衛星はグランジア合州国、つまりリアルでいうとアメリカの
そしてGPSのハッキングとはつまり、信号を欺瞞して位置情報を探られないようにするのが普通なんだろうが、次々と乗り換えて各国に点情報しか探られないようにしているのか、それ以外の何かがあるのか、
うーん、わからん。
「もしかしてリディア大佐はそれを懸念してる?」
『それだけじゃないことは断言出来るんだけど、これ以上のことは不確定過ぎてコメントのしようもないわね』
あれだけ困った感じを出していたのに最後は肩を竦めててへぺろしやがったぞこのユーザーインターフェース。
「まあ、何にせよ、戦ってみないと分からんってことね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます