MISSION 26. 資源外交?
おれの疑問は目の前に展開された【モノ】で解決される。
風に揺られながら真っ直ぐこちらに伸びてくるのはドローグホース。
そして愛機の先端側面から空中受油プローブが伸びる。
「おー、マジかー、あの隊員達ドローグホース付けてたのか」
「正解だ。あとは燃料を送り込むポンプもな」
なるほど、あのブロックを取り付ける作業は燃料を送り込むのに必要な電動ポンプみたいなのを組み立てていたということか。
ん?
ってことは?
「まさか……、民間の貨物機から燃料を盗むのか???」
『やだわ、ちょっと拝借するだけじゃない』
「それを盗むって言うんだけど……」
しれっと言い張る
おそらく主翼下にある燃料給油口をこじ開けてドローグホースを差し込み、ポンプで給油速度を早めているのだろう。
スクリーンに映る燃料灯がみるみる満たされていく。
「いやいや、いくらゲームでもご都合主義展開じゃないかこれ」
「彼等とは訓練済みだ。特殊作戦では度々世話になっている」
「……この超長距離の為に訓練したの?」
『特殊作戦というのは元来こういう特殊なケースを想定して訓練するものなのよ?』
「おまえ、いちいち注釈するんじゃねえ」
『あらあら、お二人の会話のお邪魔かしら』
さっきからいちいちこちらを馬鹿にしているような煽っているような口振りのこのくそ
ばかなの? 死ぬの?
「まあとにかく、これで燃料補給はできるとしても、民間機のほうも異常に気付くとは思うけど、どうせなんかやってんだろ?」
『もちろん。
「…………リディア大佐、じゃなくてリン。この民間機途中で燃料不足で墜ちたりしないの?」
おれは
ゲームだし別にスコアに響くこともないけど、こういう細かい設定には拘るおれ。
国際線の大型旅客機だと100トンくらいは燃料あると思うが。
しかし、貨物機はそれ相応の貨物を搭載しているから、燃料満タンとはいかないはず。
とすると、この愛機は7000リットルくらいかな?
それが4機分としても28トンか。
一気に満タン時の三分の一近く抜き取られるのは大問題だろう。
ちなみに余談だが軍用ジェット燃料は1リットルあたりガソリンより安い。
多分、75円/1Lくらいだ。
なぜかって?
自衛隊でいえばまあほら、免税価格という税金がかからない仕様だし、あとは灯油系だからね、ジェット燃料って。
自動車の燃料より安いって不思議ですよねー。
こほん。
「先ほど、飛行ルートおかしいと指摘していたな?」
おれの回想が終わると同時にリディア大佐が喋り出す。
「え、あ、うん」
「燃料補給次第、貨物機のハックをやめる。そうすればパイロットは残燃料に気付く。このままでは予定の飛行計画では難しいと判断し、進路を変更し最寄りの飛行場へと緊急着陸をするだろう」
今度はスクリーンに修正された貨物機の飛行ルートが表示される。
するとどうだろう。
緊急着陸先の空港から飛び立つインドミタブル共和国行きの旅客機が、この貨物機と交差するではないか。
「ほー、これは見事なり」
おれは思わず感嘆なため息を漏らした。
特殊作戦の緻密な計画が、こうして歯車のように噛み合っていくのは芸術なんじゃないかと。
『あ、ちなみに作戦の立案はリディア大佐ですけど、飛行計画はあたしだからもっと褒めていいのよ?』
「すっごーい。
『は? あんた何言ってんの? 馬鹿なの死ぬの?』
「マジかよ、乗っかれよ。さすがのおれでも傷付くぞ」
最近のこいつ、冗談じゃなく煽りがきついぞ。
ちょっと今度、デリートの方法調べておこう。
「……んで、燃料盗むのもおまえが考えたのか?」
『訓練時の想定はあくまで空中給油機能のない航空機からの燃料補給訓練だっただけで、本作戦の民間機からの拝借はリディア大佐推薦よ』
「なんですとっ」
バイザー上に表示されたリディア大佐が極めて真面目な顔つきで言った。
「ポーランド籍の航空機なら燃料をくすねても問題ない」
うん、わかった、おれは納得するよ、なぜかって?
西ヨーロッパ諸国はロシアからガスを買っていて、その供給方法はロシア国土から伸びるガスパイプラインからである。
冬の寒いヨーロッパには正に必要なライフラインなのだが、ポーランドとロシアの関係が悪化した時期に、ロシアは経済制裁でポーランドのガス供給を絶った。
これに困窮したポーランドは自国に通る西ヨーロッパ行きのガスパイプラインからガスを抜き取って急場を凌いだのだ。
当然、西ヨーロッパ諸国は抗議した。
――――ロシアに。
ポーランドは自国の危機に仕方なくガスを抜き取っただけなので、そういう事態を引き起こしたロシアに非があるとされたのだ。
――――確かね。
まあ、これが国際社会でのエネルギー戦争だよね。
まさかゲームでその設定を入れてくるとは、両国間の根は深いな。
ちなみに
ユーザーを混乱させないでね。
『ほら、作戦に支障を来さないのは
「……おまえ、最近、マジで軽薄になってきてるぞ」
パイロット補助システムプログラムのユーザーインターフェースというカッコイイゲーム設定をどんどん崩していく目の前の
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