Maskedfear ONLINE 「徒労嫌いのビクアドが世紀末に殴り込み!」~無駄なことほど愉しいもの!但し全てを無駄にはしない!さぁ、無駄を無駄なく無駄にせず、節約と戦略の限りを尽くしましょう~
@801081018
0日目 プロローグ HELLO UNDERWORLD
第1話 穏やかな日々
包まれるような暖かさと囀ずる小鳥の歌声に、彼女はいつも通りの平凡な朝と変わらず羽毛の抱擁から目を覚まし、その開かれた眼の先では窓辺から差し込む陽光が中空に舞う塵を照らし出す。
まるで天からこぼれ落ちるような光を作り出すカーテンを開け、窓を開く。
塵が窓へと吸い込まれていき、みどりの香る涼しげな空気が鼻を擽る。
「んぅ~」
くしくしと雪のように白く嫋やかな指で目元を擦る少女は明るい茶髪に可愛らしい声、艶やかで透き通る肌。穏やかな紫紺の垂れ目とその下にある黒々とした黒一点のコントラストが美しいく、そのなきぼくろがなければ天使と見間違えるような芸術的な美しさだ。
しかしながら、まるで天女のごとき顔にそれがあることで、紅顔の美少年の珠の肌に引かれた一筋の傷あるいは紅や化粧のように、どこか浮世離れした美しさのなかに潜む怪しさを与えてもいる。
その様な神聖な気配さえ漂う穏やかな空間に、少し無粋な電子音が響く。
「ん?なんだろう、カードの引き落としかな?」
少女…伊吹麗奈…は仮想ウィンドウを操作する。
雪のように白く嫋やかな指で通知に触れる。差出人を確認し、僅かながらに眠たげに細められた眼差しを見開き、驚きを露わにする。
それもその筈、差出人は麗奈にとって意外な人物だったのである。
麗奈のことを唯一の親友と呼んで憚らない、変わったところのある親友からだったのである。
「塁ちゃんからプライベートメール?なんだろう、普段はボイチャなのに珍しいね?」
そしてメールを読み進めるにつれて呆れ、納得の入り交じるため息と共に少しだけ嬉しそうに笑う。
「なるほどね?ふふっ、塁ちゃんらしいや」
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From HanAhiMeBAti@pm.com
To YamabukiGG@om.com
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麗奈起きてる~?ほんとは電話したいけど、時間が無いからメールするね!昨日話したけど、今日はいよいよ、全感覚没入型ナノマシン搭載最新機種、
機能完全版仮想世界接続装置、世界初の本物の精神信号化装置!その特徴的な神経伝達機構から、
名付けて《コフィン》!
その初回生産分が!遂に!店頭に並ぶ日が来たよ!
麗奈の分も押さえてるから、一緒に遊ぼうね!
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どうやら新しい玩具が届き、それを設置するのに夢中で、思考操作でメールを送ったらしい。
しかも、わざわざ自分の分以外に私の分もらしい。メールには書いていないが、今日中に家にも来るだろう。
それまでにスペースを造って、掃除でもしようか、その前に家事もしないと。
「返信は…これでよし」
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From YamabukiGG@om.com
To HanAhiMeBAti@pm.com
……………………………………………………
わかった、楽しみにしとくね!
でもその前に。貯まってる宿題するから、
一度家に来て勉強会だよ?
それが終わったら、遊ぼうね?
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メールも返したから後はご飯食べて家事しなきゃ。朝ごはんはベーコンとサラダ、パンでいいかな。
ジュ~っとベーコンの焼ける音。
サラサラの塩と、砕いた胡椒。
瑞々しいサラダにごまドレッシングの香り。ふわふわの白パンにマーマレードのジャム。
普通より甘いこのジャムは、知り合いの果実農家の方から譲ってもらった、天然物だ。
合成器が作る味気のないものとは較べられない、そんなとっても美味しいジャムをたっぷりと。
朝ごはんの準備ができたら、食卓につく。
少し古めの木材のテーブルに運ぶと手を合わせる。
「頂きます」
まずはベーコンから。
スープのような濃厚な肉汁と、
味を引き締める胡椒と適度な塩分。
美味しい。
続いて、白パン。
自家製のマーマレードジャムをたっぷり、
小麦を使った白パンと合わせると最高だ。
最後にサラダ。
トマト、レタス、紫キャベツ、とり笹身。
絡み付くごまドレッシングの香りと油が、
野菜をさらに美味しくする。
美味しいごはんを食べることに没頭する。
数分もしないうちに食べきってしまった。
「ご馳走さまでした」
一日の始めにしっかりご飯を食べると活力が沸く。ピシッと目を覚ませるので、寝坊助麗奈には必要なモーニングルーティーンだ。
しかし少しばかり食べすぎたせいで色々大きくなってしまったのは困りものだと思う。
「さて」
掃除洗濯、皿洗い、勉強、家計簿。
やることは沢山ある。
彼女が来る昼までに終わらせないとね。
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