第30話 追いかけっこ
「おっかし~な~?」
あれから数十分後。
アランは目当ての人物が一向に現れない事に焦りながら、辺りを見渡していた。
時間にしてマクレーンが先に着いていたとしても、そう時間は経っていないと思っていたのだが。
もしかすると、もう手紙の相手と会ってしまった後なのでは?と思いアランは落胆する。
「う~ん、どんな娘か興味あったんだがなぁ。」
アランは、やれやれと頭を掻いた。
あの少年に想いを寄せる相手とは一体どんな娘だろうと、ひと目見るのを楽しみにしていたのに。
まさか、こんなにあっさり撒かれるとは思っていもいなかった。
相手は自分が思うよりも一枚上手だったようだ。
「さて、どうしたものかな……。」
アランは目的が無くなってしまった為、この後どうしようか悩んでいた。
そんなアランを建物の影から窺う人物がいた。
マクレーンだ。
彼はアランより先に、ここへ辿り着いていた。
そして呼び出した相手が外に居ない事を確認すると、辺りを警戒しながら大風車の中へと入っていった。
大風車の中は意外と広く、扉を抜けた先には大広間があった。
吹き抜けになっているその部屋の中は意外にも明るく、天井を見上げれば大きな明り取りの窓があった。
足元には毛足の長い絨毯が敷かれており、部屋の中央には、ぽつんと丸いテーブルと椅子が置かれていた。
誰かが住んでいたようなその空間に、マクレーンは警戒しつつ、ふとテーブルに何かが置いてある事に気づいた。
近づいて見てみると、それは折りたたまれた手紙であった。
手に取って開いてみると、何か文字が書かれていた。
手紙の内容を読み終えると、マクレーンは暫くの間考え込んだ後、その手紙をポケットの中へと仕舞い込んだ。
ふと、外に人の気配がある事に気づいてマクレーンは焦った。
「もう来たのか……。」
マクレーンは辺りをきょろきょろと見回すと、出入り口と反対側の壁へと向かった。
そこには窓があり、マクレーンは徐に窓を開けると、そこから外へと脱出するのだった。
というのが、アランがここへ来るまでの出来事だったのだが。
う~ん、思った以上に追いつかれるのが早かったなぁ。
マクレーンは予定よりも早いアランの登場に内心焦っていた。
予定では、ここで手紙の主と会えると思っていたので大分誤算であった。
とりあえず、指定された場所へ向かうとするか……。
マクレーンは先程、大風車の中で見つけた手紙の内容を思い出しながら呟いた。
手紙には、こことは別の場所の地図と見覚えのある書き置きが記してあった。
手紙の主は一体何がしたいのやら……。
「やれやれ。」
マクレーンは溜息を吐くと、大風車の前で途方に暮れるアランに見つからないように、その場から離れるのだった。
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