第26話 西の大地に到着しました!

「ようこそイーストウィンへ。」


もう聞き慣れたお決まりの出迎えの言葉に、マクレーンは引き攣った笑顔を向けた。

にこにこと営業スマイルを向けてくる門番を見ながら、知らず溜息が零れる。


――――これが一人だけの旅だったら、もっと素直に受け止められたのに・・・・。


マクレーンは背後にいる気配を感じながら、疲れたように肩を落とした。


「大丈夫ですか?」


マクレーンが項垂れていると、頭上から心配そうな声が聞こえてきた。

見上げると先程爽やかな営業スマイルで出迎えてくれた門番が、心配そうな顔で覗き込んでいた。

「どこか具合でも悪いのですか?」と聞いてくる門番に、マクレーンは慌てて背筋を伸ばすと「だ、大丈夫です!」と冷や汗を流しながら答えた。

そして引き攣った笑顔をつくると、門番から逃げるようにそこを離れた。


「ふう、やれやれ・・・・。」


マクレーンは門からだいぶ離れた所で一旦立ち止まると一息ついた。

振り返ると門番が、まだこちらを心配そうに見ている。

あの調子では、あのまま居たら医者でも呼ばれていたかもしれないな・・・・。

マクレーンは面倒にならなくて良かったと、ほっと胸を撫で下ろした。

もうこれ以上の厄介ごとは御免だと、マクレーンが内心思っていると、頭上から声が聞こえてきた。


「本当に大丈夫か?」


やけに高い位置から聞こえてきた声に、マクレーンは再び脱力すると、嫌そうに後ろを振り返った。

そこには心配そうな顔をしながら見下ろして来るアランが居た。

マクレーンは元気の出ない元凶を忌々しそうに睨みながら「大丈夫です」とぶっきらぼうに答えた。


「そうか?なんだかイーストに着いた途端元気がなくなったように見えるんだが?」


などと的外れな事を言ってくるアランにマクレーンの元気メーターは更に下がっていく。


「そんな事ないですよ。」


マクレーンは肩を落としながらそう言い返すのが精一杯だった。


――――このひとに何言っても無駄なんだよなぁ……。


マクレーンは何度となく繰り返した押し問答を思い出しながら溜息を吐いた。

イーストウィンへ着く直前まで何度もアランに「ついて来るな」と言ったのだ。

しかしアランはそのマクレーンの訴えをのらりくらりと交わし、結局ここまでついて来てしまった。

しかもマクレーンの『通行魔石を持っていないからこれ以上ついて来られないでしょう♪』という最終手段までいともあっさりと交わしてきたのである。


――――虹色の通行魔石なんて卑怯ですよ!!まったく余計な事を!!


アランに虹色の通行魔石を渡したという何処の誰だかわからないお節介な国王をマクレーンは胸中で罵るのだった。

マクレーンがぶつぶつと愚痴を零しているとアランが肩を叩いてきた。


「なあ、なあ、なんか良い匂いがしないか?」


瞳を輝かせながら言ってきたアランにマクレーンは半眼で振り返る。

こっちが困っているっていうのに!と不機嫌極まりないマクレーンの鼻腔に香ばしい良い匂いが届いてきた。

何ともいえないうまそうな匂いに一瞬思考が止まる。

次の瞬間「ぐう~」とお腹の虫が主張してきた。


「おっ♪腹が減っては戦は出来ないって言うしな♪」


アランは真っ赤になって俯くマクレーンの顔を覗き込みながらそう言うと、嫌がるマクレーンをずるずると引っ張りながら匂いのする方へと歩いて行くのだった。

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