第4話 おつかいの途中で拾い物をする3
マクレーンは不機嫌だった。
それはもう、今までに無い位に。
結局、アランに引き摺られる形で街まで連れて来られたマクレーンは、宿屋に泊まっていた。
しかも二人部屋。
彼――アランの、あるか無いか分からないような遠慮で「一人部屋じゃ悪いから」と二人部屋にしてくれたのだが。
全くもって大きなお世話だった。
大体、一緒に泊まるなんて言った覚えは無い!
彼が勝手に連れてきて、勝手に一緒の宿に泊まってきたのだ。
しかも彼は無一文。
自分の懐を当てにされている。
マクレーンは、今日何度目になるかわからない溜息を吐いた。
眉間に、これでもかという程皺を寄せ、仏頂面をして備え付けの椅子に座るその姿は、年相応の少年らしく可愛げがある。
もしここに母が居たら「あらマクレーンどうしたの怖い顔をして?可愛い顔が台無しよ?」などと笑っていたに違いない。
しかし、ここには母はいない。
その代わりに。
「お、どうしたマクレーン?そんな浮かない顔して、可愛い顔が台無しだぞ~?」
と不機嫌の元凶が、笑顔で言ってきた。
母の言葉をそのまま代弁したような言葉に、マクレーンはぴくりと眉を跳ね上げる。
「誰のせいだと思ってるんだ・・・・。」
ぼそりと舌打ち交じりに呟いた言葉は。
しかし、隣の青年にしっかりと聞こえていた。
「はっはっはっ、そう怒るなよ。修学旅行みたいで楽しいじゃないか!」
「何ですかそれ?」
にこにこ、にこにこ、屈託のない平和そうな笑顔で言ってくる元凶に、マクレーンは半眼で聞き返した。
「ん~、俺の住んでた所ではそういうのがあったんだ。皆で集団で旅行して色々観光したりするんだぜ。」
楽しかったなぁ~、と懐かしそうに言う相手に「そうですか」とマクレーンは興味なさそうに呟いた。
「そういえば・・・・。」
突然目の前の元凶――アランが険しい顔をして、マクレーンを見下ろしてきた。
「な、なんですか?」
急に表情を変え、何か思い詰めるような表情をしたアランにマクレーンは何事かと見上げる。
アランはじっとマクレーンの顔を見つめながら、こう言ってきた。
「腹空かないか?」
ドテ。
往年のコントよろしく、マクレーンは座っていた椅子から床に転げ落ちた。
床と友達になってしまったマクレーンは、立ち上がれない程の脱力感に見舞われながらそのままの体制でキッとアランを睨み上げる。
そして――。
「まだ食うか!」
と宿中に響き渡る声で叫ぶのであった。
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