第3章-5
彼は
とある
「――って感じにさ、けっこういろいろ知ってるんだよ。ほれ、俺たちはどこにだって行けるだろ? 高い
そこまで言うと、彼は
「その、なんだ、いいことをするってこともある。――いや、俺だって好きで見てんじゃないんだぜ。たまたま目に入っちまうだけだ。その、
「なるほど」とだけ蓮實淳は言っておいた。キティは目を細めてる。
「はっ! あんたはそうやって、よくその『いいこと』ってのを見て回ってんだろ?」
「いやぁ、
「ほら、ねえ、の後はなにがつづくんだい?」
そのやりとりを聴きながら蓮實淳は考えていた。ここしばらく
「じゃ、特定の誰かを見張ろうと思えばできるってことか?」
「ん? どういうことだよ、それ」
「だからさ、どこそこの誰が最近なにしてるとか、どういう人間とよく会ってるとか、――その、なんだ、オチョの言う『いいこと』をしてるかってのもわかるってことか?」
「なんだか歯切れが悪いねぇ」
キティは
「はっきり言ってみな」
「仮にだよ、仮に、俺の別れた恋人がどうしてるとか、新しい男ができたのかとか、そういうのもわかるってことか?」
「そんなの知って、どうする気なんだい?」
「ただ知りたいだけだ」
そう言ってから、彼は肩の力を抜いた。つまらない
「いや、違うな。俺はできればよりを戻したいんだ。そのためには男がいるか知る必要がある」
「そういうのをあんたたちはストーカーっていうんじゃないのかい?」
「でも、知りたいんだろ?」
取りなすようにオチョが口を
「そういうのなんとなくわかるな。俺、
いや、ちょっと違うんじゃないか? そう思いはしたものの、良いアシストであるのに変わりない。彼はキティを見つめた。オチョも
「姐さんさえかまわなきゃ、俺はやってもいいぜ」
「アタシは別にどっちだってかまわないさ。ま、それを知ってどうするんだいって思うけどね。あんた、男がいるのがわかったら、オチョみたいに取って食いたくなるかもしれないよ」
「そんなことしないよ。っていうか、できないだろ。そいつが鳥でもない限り」
「ま、そうかもしれないけどね」
溜息をつきつつ、キティはヒゲを垂らした。蓮實淳とオチョはずっと顔色を
「なんだい、あんたたち、そんなふうに見て。――わかったよ、好きにしな。オチョ、これはあんたに
これが猫に助けてもらった初めてのケースとなった。ただし、千春のマンションはキティのテリトリー外だったので、
情報は猫のネットワークを
「そいつはじっと千春さんを見てた。話しかけたりしなかったけど、遠くから見てた」
報告を受けるたび
「なんだい、そんな顔して。いいかい? 細切れの話から全体を考えるなんて馬鹿のすることだよ。こういうのはね、もっと時間をかけなきゃならないんだ。見たり聞いたりした中から本当のことを見つけるには時間がかかるのさ。いちいち落ちこんでたら身が持たないよ」
千春の部屋は五階にあった。ただ、裏が
彼は思い悩んだ。誰かが引っ越してくるってことか? もしかして結婚するとか。いや、別れてからまだ半年も
様々な情報が
「あの、ちょっと相談っていうか、それに近いことがあるんだけど」
「相談? なんだよ、いったい」
心の中はぐるぐると
「とにかく一度会ってもらえない? 電話で話すのはなんなんで――」
その声は辺りを
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