いつも手が届かない。
霧月さえ
第1話 出会い
某年、春。例年よりも早咲きだった桜は三月中旬には既に満開だった。受験が終わった解放感もあり暖かい空気に包まれながら私は相棒のカメラを携え散歩する 。
写真を撮ることが趣味で、普段から色々なところを巡り歩いてはマイナーで自分しか知らないような写真スポットを探していた。この春はわたしが以前見つけた桜並木の小道を写真に撮ると決めていたのだ。絶好の天候だった今日、私は愛用の一眼レフカメラを手に取る。
うわ、想像以上だ。前にこの川沿いの小道を見つけてこの並木が桜であることを知った時、絶対撮らねばならないという使命感すら覚えていた私は、見つけてくれてありがとうと歓迎されていると錯覚するほどの見事な咲きっぷりに思わず声を出してしまった。昂る気持ちを抑えつつ私は早速シャッターを切る。
ああ、この興奮があるからやめられないのだ。写真を撮る趣味を持っている人なら分かるだろう。自分で見つけたものを自分の手で収めるこの喜びが。
さあもう一枚とカメラを構えつつピントを合わせている時、何かが日の光を反射した。眩しい。
思わずファインダーから目を離して次に目に入ってきたのは、艶やかな美しい茶髪を持った同い年くらいの女の子だった。
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