「友人A」は恋をした。

キコリ

第1話

―――恋愛は毒だ。



大学の入学式。

体育館で「○○大学 入学式」の横断幕を見ながら、僕は新しい校舎の雰囲気を楽しむ訳でもなく、これから行われる長ったらしい入学式の内容を考える訳でもなく、ただ一つだけ、思っていた。


昨日から、ネットで「大学生活 やった方がいいこと」と検索をかけ、必ずと言っていい程ヒットした「恋愛」というワードについて、僕はずっと考えていた。

恋なんて、ただ苦しいだけの道だとしか思えない。

夢のような物語なんて存在しない。

ただ浮かれて学生生活を楽しみたい人だけがするものだ・・・という、腐った理論を挙げる程、僕の思考は「恋愛をしない」という考えでまとまっていた。


大学のキャンパスは、とても綺麗だった。まだ自分の黒歴史で汚されていない真っ白な場所に感じる。

僕は、そんな白い場所に誓う。



―――恋愛、という黒い歴史を刻むことは絶対にしない。



ここで、ありきたりなオーケストラのBGMが体育館に響き渡った。

僕はこれから、どんな大学生活を送るのだろうか。

細かくは想像できなかったが、少し弾む気持ちは心地よかった。

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