リコリスに埋もれた彼らの断片『終遠のヴィルシュ -EpiC:lycoris-』

 死に魅入られた国「アルペシェール」に暮らす死神と蔑まれる少女「セレス」は、閉鎖された異質な国の中で悲劇と絶望を幾度も味わった。


 それは、死神と呼ばれる存在であるが故の宿命なのか。


 血と死に塗れながらも、その命運を変えんと足掻き抜いた少女はようやく救済を視る。


 これは、数多の物語。

 絶望、救済、日常、過去、可能性を紡ぐもの。


 リコリスの花畑に埋もれる、彼女と彼らが生き抜いた足跡を辿る。




『終遠のヴィルシュ -EpiC:lycoris-』




 今回は『終遠のヴィルシュ』のFDについて語ろうと思います。絶望的な本編の良さはそのまま、そこに救済と未来の気配が漂う、終ヴィルらしい雰囲気のあるFDとなっています。

 このFDは短編集の形式を取っていて、大きく5つの章に分けられます。


 本編で語られなかった日常や騒動を描く短編集「Side Story -Interlude-」


 本編ストーリーの新たなエンド「Side End -Encore-」


 各ルートの絶望エンドと救済エンドの後日談「Virche de La code -Emotion-」


 アルペシェールの過去を紡ぐ「Tradition -Drifter-」


 死神と死の番人の物語「Virche de La salut -Ankou-」



 本当は全ての章について語っていきたいところですが、終ヴィルという作品の性質上、本編のネタバレ抜きで語ることが難しい章もあることから、今回は私が個人的に印象に残っている章を中心に語っていこうと思います。


 ということで、私が特に印象的に感じた「Side End -Encore-」について詳しく紹介させて頂きます。

 本編のいわばifエンドを描く章ですが、これがどのルートも良かったです。本編をクリアした上でプレイすることから、物語に張り巡らされた伏線や設定を踏まえた上で、新たな展開を見せる物語に興奮できるんですよね。このルート、ここでこの展開持ってくるのかと。しかし、それが幸せな展開であるとは限りません。何せ、何度も絶望を突き付けてくる終ヴィルですから。本当に、FDでもそういう点は容赦ないです。

 正直に申し上げて、絶望エンド後日談の次に心を抉られる章ではあるのですが、このメンタルをボロボロにされる感覚すら、終ヴィルをプレイしている感があって良いと思えてしまいます。


 また、「Virche de La code -Emotion-」については、本編の絶望エンドと救済エンドの後日談を描く章です。本編の後日談はFDの醍醐味ですよね。

 ただ、本編絶望エンドの後日談は、本編の限定版特典小冊子に掲載されたショートストーリーを、そのまま収録したという驚きの物語となっています。あのSSに、声とイラストと何ならスチルまで付いてしまったという。

 私は本編の限定版を購入していましたので、プレイ前から話の内容を全て把握していたタイプです。内容を知っていても、やっぱり声やイラストが付くとまた印象が変わりますよね。本当に、辛い。辛いのに、推しの絶望エンドが好きで仕方ない。この感覚は終ヴィルならではのものだと思います。





 絶望と救済。そして、新たな結末。


 アルペシェールで生き、散っていた人々の記憶。


 死神の少女が歩む過酷な人生。


 この壮絶な物語の全てを味わい尽くすことができる、終ヴィルファン必見の作品です。

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