前のエピソード――マフィアに攫われた先で視たものは血と、硝煙と、揺るぎない愛『ピオフィオーレの晩鐘』

　私自身婚活には、いささか早い年齢ですが、親身に、熱心に相談に乗ってくれるアドバイザーさんに担当してもらえたら嬉しいと思います。

　それも、本物の女神キューピットなら尚更！

　ということで、今回は明るくポップで楽しい婚活ラブコメディ『キューピット・パラサイト』について語ります。

　まずは注意喚起です。

　この作品は糖度が結構高めで、しかも下ネタが多めです。ちょっと男性向けラブコメっぽいノリですね。

　純粋に甘いシーンも沢山ありますが、乙女ゲームにしては珍しく下ネタも多めに散りばめられています。

　私は普通に笑って楽しめましたが、下ネタのノリが苦手だったり、糖度が高すぎるのはちょっと……という方は、念の為注意して下さい。

　この作品はSwitchで初登場したため、ソフトは下記の本編のみです。

『キューピット・パラサイト』

　ロサンヨークという架空の大都市を舞台に、本物の女神である主人公が人間界に降臨し、ブライダルアドバイザーとして奮闘する日々が描かれています。

　それでは、主人公を紹介します。

　主人公は「リネット・ミラー」。

　ロサンヨークにおける結婚相談所の最大手「キューピット・コーポレーション」に所属するブライダルアドバイザーです。

　まだまだ新人ですが、とても仕事熱心で、営業成績はトップクラス。入社して数年の新人でありながら、既にトップブライダルアドバイザーの肩書を手にしています。

　しかし、彼女の正体は本物の女神キューピット。キューピットの能力の使い方を巡って、父親であるマーズ神と大喧嘩し、人間界に飛び出した家出の身です。女神の力を使わずに縁結びをするため、人間に化けて大学に入学し、無事に憧れのブライダルアドバイザーになりました。

　純粋で前向き、そして明るい性格。人間界に降臨したばかりの頃は少し世間知らずなところもありましたが、今では立派な社会人です。キューピットの頃から大好きな縁結びに強い熱意を注いでいます。そのせいで、仕事にのめり込むことが多く、親友のクラリスから呆れられてしまうことも。

　この作品における攻略対象は少々……いえ、かなり難があります。

　彼らはキューピット・コーポレーションに登録している会員なのですが、マッチングが全く上手くいかない超問題児。社員の間では密かに「パラサイト5」と呼ばれてしまっています。リネットはブライダルアドバイザーとしての腕を買われ、社長からこの5人の問題会員を無事に成婚へ導くよう指示を受けます。

　そんなパラサイト5――攻略対象の紹介をしましょうか。初見では、こんな男と付き合いたくない！と思うこと間違いなしです。

　ギル・ラヴクラフト（CV木村良平さん）

　過去の失恋を引き摺り続けている失恋パラサイト。職業はフリーエディター。

　失恋から立ち直り、新たな恋を始めるために会員になったものの、いつも失恋相手と比較してばかりでパラサイト5入りしてしまいました。

　この失恋相手、実はリネットです。大学時代、リネットはルームメイトであり、大学の後輩でした。人間界に降臨したばかりで世間知らずなリネットの面倒を献身的に見ていた結果、好きになったようです。しかし、リネットに全く想いを気付いてもらえず失恋し、ルームシェアを止めました。

　シェルビー・スネイル（CV KENNさん）

　常に最上位クラスでいることに固執する地位パラサイト。

　キューピット・コーポレーションの創業者であり、社長です。愛妻家として有名ですが、本当は独身。

　そろそろ本当に結婚しないと世間に真実がバレてしまいそうなので、秘密裏に婚活を決意します。しかし、地位向上と維持のために、仕事ばかりのストイックな生活を送っているので、恋愛を非合理的なものとして厭う傾向にあります。

　心根は善良であるため、やむを得ない事情があったにせよ、愛妻家を騙っていることを心苦しく思っています。

　ラウル・アコニット（CV八代拓さん）

　神話について語り出すと止まらない趣味パラサイト。女性に大人気のアクション俳優です。

　初めて恋愛映画に出演することになりましたが、恋愛演技が上手くいかず、マネージャーの勧めで稽古としてキューピット・コーポレーションの会員になりました。しかし、口を開けば大好きな神話の話ばかりしてしまい、女性と全く会話が噛み合わず、パラサイト5に。

　神話に詳しいリネットに対して親近感を感じているようです。

　螢彩院（けいさいいん）・F・琉輝（CV榎本淳弥）

　人を顔面偏差値で判断する外見パラサイト。若年ながら、既に自分のブランドを立ち上げている実力派のファッションデザイナー。

　キューピット・コーポレーションを利用して結婚した姉の勧めで会員になりました。そのため、婚活への意欲は低め。しかし、美への探求心はとても高く、マッチング相手の見た目について思ったことを毎回ズバズバ言って傷付けてしまい、パラサイト5になりました。

　自分の美しさを保つことにもシビアであり、常にミストを持ち歩いて、肌の保湿に努めています。

　アラン・メルヴィル（CV古川慎さん）

　彼氏がいたり、夫がいたり、好きな人がいたり、といった具合に、既に相手がいる女性を口説いては奪ってしまう略奪パラサイト。仕事は高級枕店のスタッフをしています。オーダーメイドで品質の良い枕を作るため、意外と職人気質です。

　しかし、キューピット・コーポレーションでも平然と女性を略奪しては問題を起こすため、パラサイト5入りしました。結婚したいということで会員になったようですが、どこまでが真意なのかはわかりません。

　その正体は本物の悪魔であるインキュバス。何やら目的があって、キューピット・コーポレーションの会員をやっているようですね。

　それでは感想について。

　とにかく全体的に明るい作品でした。絵柄といい、デザインといい、ビビットカラーでポップな雰囲気に統一されています。アメリカンな感じですね。最初は目が驚きましたが、すぐに慣れました。独特なキュピパラの世界観をゲーム全体で表現しています。

　また、BGMも凝っていて、メロディーだけでなく英語の歌詞が付いていました。ゲームのBGMというよりは、外資系ブランドの店舗で流れているようなBGMが多く、とても気に入っています。センスのいい曲ばかりです。

　攻略対象ごとに、テーマソングのような感じで専用BGMが用意されているのですが、私は螢彩院君のBGMが本当に好きです。日本っぽさを取り込んだ海外系のオシャレなメロディーで、つい聞き入ってしまいます。

　シナリオは全体的に、ぶっ飛んでいましたね。予想を超える展開をしてきて、どのルートでも驚かされました。「そんなんありか⁉」と言いたくなる展開が多い。かといって、シナリオが崩壊している訳でもありません。ファンタジー設定を最大限活用した、ぶっ飛び具合で楽しめることでしょう。笑いあり涙ありのラブコメディです。

　アランのシナリオが一番想定外でした。第一印象とクリア後の印象が全然違いますよ、アランは。

　全体的に下ネタが多めですが、個人的には笑って楽しめるレベルでしたね。

　あと、この作品には「ラブタイプテスト」という恋愛診断のようなミニゲーム要素があります。このテストの結果によって、個別シナリオの結末が決まってきます。

　攻略対象のラブタイプと同じならハッピーエンド、正反対のラブタイプならノーマルエンドに向かいますので、自分のセンスだけで突き進むと躓いてしまうかもしれません。

　1回目は純粋にテストを受ける必要がありますが、2回目以降は任意のラブタイプを選択できるようになりますので、攻略予定のキャラに合わせて選択することをおすすめします。

　また、この作品には中途エンドはありましても、バッドエンドがありませんので、身構えることなく気楽にプレイできますよ。ハピエン目指して奮闘あるのみです。

　それでは攻略順と推しについて。

　螢彩院→シェルビー→ラウル→アラン→ギル→隠しキャラ

　の順でプレイしました。ギルはアランの前にプレイした方が良かったかもと思いましたね。といっても、この順でも大して問題はありません。

　プレイ後の印象を踏まえて推奨攻略順を立てますと

　螢彩院→シェルビー→ラウル→ギル→アラン→隠しキャラ

　の順をおすすめします。アランは最後に回すといいですよ。

　そして、最推しは螢彩院君ですね。シェルビーとアランも推せます。

　螢彩院君は、最初本当に辛辣で、初対面でいきなり顔面にフェイスミストをぶっかけてきて、もう何というか「この子を好きになれるのか私」という気持ちが強かったです。最初は。しかし、個別シナリオになると結構可愛げと言いますか、極度にシビアなだけで根は良い子なんだと感じました。実力のあるファッションデザイナーである螢彩院君ですが、それなりに悩みも抱えているようで、そういった人間らしさ、苦悩を吐露する姿に心惹かれました。

　思い切り笑って恋愛も楽しみたい方にはオススメです。

　そして、笑いだけでなく、時に涙もありますから、軽すぎるシナリオではありません。泣けるシーンは本当に泣けます。

　楽しく、明るく、前向きに頑張るキューピットから、きっと元気を貰えますよ。