オズワルドの丘にて

玄武 水滉

第0話



 気が付けばオズワルドは暗闇に立っていた。

 港町アリフォラにて魔物退治を生業としているオズワルドは、珍しく入った依頼に喜びながら魔物退治を行なっていた。そしてその後、疲れきった体に酒を入れ、そのまま酔いに身を任せて寝た。

 だから、暗闇に立っているなんて事はあり得ないのだ。

(いや、魔物の仕業か……?)

 夢を見せるタイプの魔物の仕業かと思ったが、オズワルドが知る限りではこの町の周囲にその様な魔物はいない。

 では、これは一体何だろうか。

 そんな疑問を頭に浮かべるオズワルドの目の前に、突然光の玉が降りてきた。思わずその眩しさに目を瞑る。

 そして恐る恐る目を開くと、オズワルドの目線でその光はふよふよと浮いていた。


「何だこれ……」


 疑問が口から飛び出る。そしてそれに呼応する様に、頭の中に言葉が流れ込んできた。


『世界の守護者 オズワルドよ……』


 男でも女でも無い声。年齢も定かではないが、オズワルドはその声が少なくとも人有らざるものである事だけは分かった。


『これから世界に闇が降ります』


『あなたには、その闇を討ち払って欲しいのです』


 だったら自分でやれと内心愚痴を吐く。

 毎日食べるだけでも必死なオズワルド。勿論酒を止めれば大分持つはずなのだが、それは人生の楽しみを奪うのと一緒である。オズワルドは酒の為に生きていると言っても過言では無いのだ。

 別に闇が降りようとも、オズワルドは毎日暮らせればいい。だから、そんな闇を払うなんて面倒事を頼み込まれても、厄介だなぐらいにしか思わなかった。


『守護者一族に伝わるオズワルドの丘。そこに刺さる一本の剣を手にして戦うのです』


『あなたならばオズワルドの丘の場所は分かるはずです』


 無言。オズワルドはふと考え、そして首を傾げた。


『覇王、龍王、魔王、妖精王、魔法王、賢王、そして守王』


『この所謂七王をその剣を持って滅するのがあなたの役目』


「いやいや待ってくれ」


『ではお行きなさいオズワルド、あなたに幸福があらんことを……』


「いや待てって!」


 オズワルドの叫び虚しく、言うだけ言って満足したのか、目の前の光は少しずつ小さくなり、そして暗闇に消えていった。

 そしてがばりと起き上がるオズワルド。いつものボロ屋の光景だ。

 そしてボーッと天井を眺めながら一言。


「オズワルドの丘って何だよ……」

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