風車総平ミーツチビモア(ものすごく遠い星生まれの侵略者の幼体)
夏休みの朝。ゴミ捨てに行ったら、謎の生き物が道端で倒れていたので、なんとなく放っておけなくて連れ帰ってきた。とはいえ、謎の生き物すぎて何もわからない。誰かの落とし物のようにも見えない。ぬいぐるみにしてはだいぶ大きくて重いし、なんだかぬめぬめする。とりあえず赤ん坊のようにタオルでくるんでおいたら、
「もちょ……?」
朝になって、パチリと目を覚ました。ここはどこ、と言いたげにきょろきょろしている。
「モンスターの子どもじゃねぇの?」
遠巻きに見ていた
「じゃあ、元いた場所に返してきたほうがいいかな? ママが探してるだろうし」
写真を撮って、クリスさんに送る。クリスさんなら長生きなので正体を知っているだろう。だいたいのことはクリスさんが教えてくれる。
「そもそも、なんで拾ってきたんだよ」
「倒れてたから」
「倒しとけ」
「えぇ……あのままだと野良猫にいじめられちゃうから……」
ぴこん、と携帯電話が鳴る。返事が来た。はやい。
「へー」
「なんだって?」
「宇宙人だって」
「は?」
火星人のイメージ画像ってタコみたいな感じだった気がする。そうか、宇宙人か。言われてまじまじと見ると確かに地球上にはいなさそうな見た目をしてる。ぎりぎり深海にならいそう。結構近くに転がっているもんだな、宇宙人。
「いやいや、なんで宇宙人で納得してんの」
明日くんは納得いかないっぽい。ますます『宇宙人』から距離を取る。
「この広い宇宙のどこかに生命がいる、って説は半信半疑だったけど、その生命体が今ここにいるから本当だったんだなって」
「もちょー」
頭(ネコの耳みたいな部分が生えている場所)をなでてあげると腕をくねくねさせている。なんだかかわいく見えてきた。
「帰らせたほうがいいんじゃねぇの、宇宙に」
「もちょ!」
明日くんの提案に、宇宙人はふるふると頭を横に振った。なんとなくだけど、言葉が通じている?
「帰りたくないっぽい」
「でも、この家には置いておけないんじゃねぇか? 宇宙人なら、しかるべき機関に渡さないと」
「もちょ! もちょ!」
こちらにくっついてきた。離れたくないっぽい。
「クリスさんもそう言ってる」
というか向こうが問い合わせてくれている最中だ。宇宙人本人は離れたくなさそうなのになぁ。
「もちょ……」
「大丈夫大丈夫。行った先で大事にしてもらえるよ」
「もちょ!」
腰に巻き付いてくる。俺まで連れて行こうとしているっぽい。
「すげぇなつかれてんじゃん」
「困ったなぁ」
「こら、離れうわぬるっとするキモっ」
そんな汚いモノを触ったみたいな反応しなくても……。
「あっ、これから引き取りに来るって」
「もちょっ!」
「あっ!」
振りほどいて逃げ出した。換気のために開けておいた出窓から外に出て行く。
「はやっ」
「これって、俺、追いかけたほうがいいのかな」
「追いかけて追いつくか?」
「いや、たぶん無理。……逃げられたって送っておこ」
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