「ほんの少しのフェイクを添えて」

「上の矢印と下の矢印の棒の部分、どっちが長いでしょう?」


 たーちゃんが手に持っているイラストの、上下をじっくりと観察する。

 どっちが長いの?


「うーん?」


 どっちが長いかっていうと、どっち?

 わたしの目には同じにしか見えなくて、首を90度近く傾けてしまう。


「上……?」

「いいえ。正解は同じ長さです」


 む。


「どっちが長いかって聞かれたらどっちかが長くないとおかしいの!」

「そんな、世の中二択しかないわけないじゃないですか」

「設問が間違ってる!」


 わたしが頑張って考えた時間を返してほしいの。

 どっちかって言われたらどっちかが長いんじゃなかろうかって考えちゃうし。


「まあまあ。いもようかん食べます?」

「食べ物で機嫌取らないでほしいの」

「なら、俺だけで食べますね」

「食べないとは言ってないの!」

「じゃあ、お茶用意してくるので」


 うー……。

 なんか最近、たーちゃんにからかわれているような気がしてならないの。

 気がするというか、からかわれてるし。

 わたしってば究極美少女にして天賦の才能をお持ちだから?

 それぐらい気付いちゃうの。


 たーちゃんのことは好きでも嫌いでもないというか、どっちかというと好き寄り。

 でも芦花パイセンに言われたような「あのポリ公とは彼氏彼女やないんか」って関係性ではなし。


「たーちゃんは、わたしのことどう思ってるの?」


 お茶といもようかんを持ってきたたーちゃんに、直球で質問してみる。


「どうって?」

「わたしはたーちゃんのこと、相棒だと思ってるケド。たーちゃんはどうなの?」

「俺もそう思ってますよ」


 そうかあ。

 そうなんだよなあ。


「芦花パイセンが、どこまで行ったのかってしつこいの」

「どこまでとは?」

「わかんない。仕事でどこに行ったのかってコトかと思ったケド、違うみたいなの」

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