セクハラ モラハラetc..

「ゴー、トゥー、ザ、リバー!」


僕はリビングの真ん中でそう叫んだ。

…………反応はなし。


昨日はあのまま僕もありすさんも寝てしまって、気がついたらベッドの上だった。

そして今日、お母さんが仕事に行って少し経ったころに、僕は叫んだ。


この部屋にいる僕以外の唯一の人類のありすさんはというと、完全に無視を決めていた。


ソファの上で体育座りをして、テレビをじーっと見つめている。

僕には、このアメリカの株価の話はどうでもよく聞こえるが、彼女にとって株価はとても大事なのかな?


株価って、カブの値段だよね?

カブなんて近所のおばあちゃんからもらうものだろ。買ったとしても僕は買い物についていかないからよくわからないけど、一個1,000円は超えないと思う。


なのにこのグラフは上下していてなんか変だ。


ってそんな事を言いたいんじゃなぁあぁぁい!!


「ありす、We are going to the river!!」


川に行こうと誘う。

昨日水がほしいを調べたときに一緒に調べておいたのだ!


このままだとただただアメリカの株価を見続けるありすさんと、それを見続ける僕って言う構図になってしまう。

それは夏休みの過ごし方、それも同じ屋根の下にとんでも美少女がいる夏の過ごし方としてはいかがなものだろうか。


僕はそう思うからこそ、迷惑だとは思いながら彼女とテレビとの間に入って、もう一度


「We are going to the river!!」


どうだ。文法的には完璧だと思うぞ!!

僕は半分祈るような気持ちで、ありすさんを見た。


「Yes,sir」


体育座りをしたままこくりと頷くありすさん。

YES,yes,イエス、イエッッッッス!!!!!!

ありがとう神様!ありがとう仏様!ありがとうアリス様ぁ!!!!!!!


僕は飛び跳ねるほど驚きながら、


「じゃあ準備しますね。」


と、彼女に語りかけた。


まぁ、準備と言っても僕はもう半袖短パンだし、よごれてもいい服だからなにもしないのだけど。


ありすさんは…………僕は相変わらずスンっとしているありすさんを見る。

彼女は真っ白なワンピースを着ていた。


「…………それ、着替えようか。」


真っ白は、汚したら、怒られる。これは僕がいままで十年近く生きてきて得た学びの一つ。


「?」


意味がわからないと言った顔でこちらを見るありすさん。


「着替え、持ってる?」


僕は口で説明するより実際にやったほうが早いと、彼女にそう尋ねた。


「…………。」


何も話さなくても僕の声が聞こえてはいるようで、彼女はコクリと頷いてくれた。


「OK,それどこにある?」


ならばと僕は立て続けに質問する。

なんか、幼い子供と話しているみたいで楽しいと思ったのはないしょだ。


「…………。」


ありすさんはちょんちょんと部屋の隅を指す。


「OK」


僕がそっちに行くと、そこには小さめの旅行バッグがおいてあった。

なるほど、ここに必要なものが入ってるのか。


僕はファスナーを開けて、その中身を確認しようとするところで…………止まった。


「開けてもいい?」


レディーの着替えを見るんだもの、確認はしないとね。

今どきセクハラ、モラハラうるさいから。


「……。」


ありすさんはコクリと頷く。


よし、本人の了承も得たことだし遠慮なくっ!!!


思い切って僕が下げたファスナーの下には………………。

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