笑えぬ少女は恋煩い~いきなり出会った銀髪アリスと甘いひと夏~

俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き

僕と君のFIRST CONTACT

ピンポーン


夏休みが始まってまだ一週間も経ってない頃、うちのインターホンが久しぶりに鳴った。


「はーい。」


お母さんが出ていく声を聞きながら、僕はそれまでと変わらぬ寝転がった姿勢で、漫画を読み続ける。


うっわ、コレすげぇ!!忍者ってっかけぇんだな。

最近のお気に入り「それいけ!忍者武蔵野!」の、武蔵野が敵の城からヒロインを助け出すシーンを見て思う。


「あぁ、僕の周りにもこんな、美少女な女の子がいたらなぁ………。」


美少女な女の子って言葉的にはおかしいかもしれないが、しょうがない。だってほしいんだもん。


僕も小学校の高学年。そろそろ彼女の一人や二人ほしい……。


なお、ちょっと来なさーい!」


僕が理想のヒロイン像を考えていたら、お母さんに呼ばれた。

ちぇっ。今いいところだったのに。


「あーい。」


僕は適当に返事をして、しょうがなく漫画を片手に玄関へと向かった。


僕のヒロインは、白い髪を腰くらいまで伸ばして2つに結んだちょっと人見知りな美少女かなぁ……えへへへ……。


「なにニヤケてんの?その顔直して、ほら挨拶。」


せっかくわざわざ玄関まで来てやったのに、お母さんはそんな事を言ってきた。


「ニヤけてなんか………な………い…………」


僕がすかさず反論しようと発した言葉は、途中で途切れた。


「挨拶しな。」


たまにうちに来る日焼けしたおじさんに小突かれて、僕らの方に一歩踏み出した少女は、


「My name is “Alice”」


そう単調に変わらない声色で自己紹介をした。


…………英語で。


「て……」


「ほら、なおも!」


お母さんが僕の背中を押して、挨拶させようとするが、今の僕にはそんなこと頭になかった。


「天使だ……天使がうちにきたぁぁぁ!!」


そう、夏休みにうちに、天使が舞い降りたのだ。

おじさんとやってきたその天使は、僕の思い描いていたヒロイン像と全く同じ。


長い白髪を2つに結んで、凛としている美少女な女の子。


完全に瓜二つだ。

その少女はその名前の通り、不思議の国からやってきたように浮世離れしていて…………とてつもなく美しかった。


「なぁおぉぉおお………ちゃんとしなさい!!!」


僕が初対面で挨拶もせずにそんな変なことを言ったら、当然お母さんは怒って……。

僕は大声で怒鳴られた上に、おしりをひっぱたかれた。


いっっっってぇぇぇ!!!!!!!


「はっはいぃ!!小早川 なお9才、誕生日は10月10日!!好きな食べ物はアイス!!嫌いな食べ物はトマト!!生まれてこの方田舎育ち!!あだ名は『きみ』!!特技は弓道!!趣味は初詣と年賀状や暑中見舞いのはがきを書くこと!!!!近所の小学校に通う四年生で今絶賛夏休み中であります!!!」


俺は痛みを強烈に訴える尻を手で抑えながら、弓道で鍛えられた大声でそう自己紹介をした。


やっっっっっべぇ!!!!!超いっっっってぇ!!!!!!!

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