30話 新作料理

――ある日


「おはよー……ってこの散乱した紙はなんなの!」

「おお、みなもちゃんおはよう。ご飯は机にあるから好きにたべてくれい」


 散乱している紙はまるめられたり、大きくバツが書いていたり、とにかく色々書いてはボツになっている様子が伺える……。


「ガウレス、悩んでいるなら私にも相談してよ! たまには私もガウレスの力になりたい!」


 みなもは紙と睨めっこしているガウレスを覗き込んだ。


「みなもちゃん……何ていい子なんじゃ!! 本当に行き詰っておる……ちょっと力を貸してもらいたいのう……」


 そうしてガウレスは資料を広げ、私に丁寧に説明を始めてくれた。


・・・


「なるほど……つまり、この[屋台料理お披露目会]での新作料理を考えているのね……」

「うむ。2年に一度のこの時期がやってきたんじゃ」

「前回は勇者殿にご助言頂き焼きそばが増えたんじゃ」

「ほえー焼きそばはお父さんが立案したのね!」

「みなもちゃんも何か思いつく料理はないかのう?」

「うーん……」


 私は屋台と聞いて、祭りの屋台を思い浮かべた。

 花火や浴衣、りんご飴、かき氷、チョコバナナ……。

 なんだか甘い物ばかり思い浮かんじゃうな。

 ……ん、そういえば!


「そういえばガウレスさんの屋台通りってデザート無いよね?」

「ん-そういえばそうじゃな!」

「じゃぁ今回は甘い物で攻めてみようよ!」

「なるほど……全然思いつかんが……! 吾輩があまり甘い物すきじゃないからのう……」

「ガウレスさん任せてよ! とりあえず一回屋台通りに行こう!」

「おお頼もしい!」


 そうしてシアとガウレスと私の3人で屋台通りへと向かった。


「いつ来ても、美味しい匂いがいっぱいだねー」

「お、みなもちゃん! 今日も食っていくかい?」

「あ、焼きそばの兄ちゃん! この前実験で激辛食べさせられた恨みは忘れてないよ……?」


 ちょこちょこ買い物に来る時、私はよくやきそばを食べる。

 その時にこの兄ちゃんに激辛特別メニューって奴と勝手にすり替えられたことがあるのだ!


「すまんすまん! 今日は普通の奴! ほら、見た目だけ多めにサービスしとくから!」

「本当! 有難う!」


(お姉ちゃんは見た目だけ多くても喜ぶのか……)


 しっかりと言葉を聞いていないのはみなもだけだった……。


・・・

・・


「ふーお腹いっぱい!」

「シアも満腹だ! そろそろ帰ろう」

「そうだね!」


「いやみなもちゃん!? 目的変わっとるよ! 新しい商品を考えてくれるんじゃろ!」

「あはは……冗談だよ! ちゃんと状況も確認したよ!」

「おお!」


 ガウレスはほっと肩をなでおろした。


「とりあえず、甘味に当たるのはこのフルーツジュース屋だけだね」


 みなもはフルーツジュース屋に戻ってきた。


「すっきり系、濃厚系と割と品ぞろえが良いし、これを改造した商品を作ります!」

「お、おお! ……どういう事じゃ?」

「この濃厚系のジュースなんだけど、もーっとジャムっぽくする事も出来る?」

「フルーツからジャムを作ればよいのであれば問題なく出来るぞい!」

「了解! 後は、焼きジャガイモ屋さんから焼く前のジャガイモを借ります!」


 フルーツジュースをみてまっさきに思いついたのはタピオカジュースだった。

 ……けどタピオカの作り方は分からない!

 なので、ジャガイモがあるからそれを使って似たようなものを作る!


「よし、じゃぁちょっと作ってみるね……!」


 そうしてみなもクッキングが始まった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る