12話 帰宅

「みなもちゃん、この辺は初めてくるのかい?」


 食事をひとしきり終えた後、ガウレスが言った。


「ええ、今日が初めてです!」

「なるほど、じゃぁこの辺のオススメスポットに連れて行ってやろう!」

「本当ですか! じゃぁ、お言葉に甘えて……」


 そう言って私達はガウレスと一緒に商業特区を回る事になった。

 今思えば、知らないオジサンについて行くなんて何て不用心だったのか……。


 だけど、そんな心配を裏にガウレスは綺麗な景色が見える場所、いい商品を安く帰る場所など……

 これからこの辺りで買い物するならここが良い! って所を余すことなく教えてくれた。


 そうしている内にすっかり、辺りは暗くなっていた。


「すまん! こんなに遅くなるまで……」

「いえいえ! ガウレスさん有難う本当に楽しかったよ!」

「ガウレス。有難う」


「シア様も少しでも心を開いてくれて吾輩は嬉しいですぞ! というより、こんなに暗いと帰りは危ない。吾輩に送らせてくれ」

「ええ! でもそんな悪いよ……」


――ピー!


 ガウレスは突然、指笛を鳴らした。


――グォォォ!


「ドラゴンだ!!」


 シアは真っ先に空を指差し、声を上げた。


「うわー! かっこいい!」


 私も思わず感想を口にした。

 大きな両翼を持つ、青いドラゴン……とんでもなく大きいサイズで、私なら10人くらい乗ってもへっちゃらそうだ……。


「一応シートを装備させてあるから、そこに乗ってベルトを締めるんじゃ!」

「うん!」


 シアは目を輝かせて言う通りにしている。

 これはもうこのドラゴンに乗って家に送ってもらう感じかな……。

 そんな事を考えていると、ドラゴンは私に頬擦りをしてきた。


――グルル……


「あはは、可愛い! 人懐っこいドラゴンなんだね!」


 私はそのドラゴンの顔をなでなでしてあげた。

 その姿を見てガウレスは驚愕している……


「みなもちゃん……君は凄いな! 熟練のテイマーか何かなのか?!」

「え?」

「こいつは、吾輩以外に心を許した事がない。初見でいきなり懐くとは……恐ろしい才能じゃ」

「あはは……ありがとう! とりあえず私も乗るね!」


 そんなドラゴンだったなんて……やっぱりチート能力……凄いんだね!


「よし、じゃぁ行くぞ! 振り落とされんようにな!」


 そうしてドラゴンは翼を大きく広げ、空へゆっくりと上がっていった。


・・・

・・


――自宅


「はぁ……はぁ……どんなジェットコースターより迫力があったよ……」

「お姉ちゃん楽しかったね!!」


 シアは目を輝かせている。絶叫マシンはいける口の様だ……。


「さて、じゃぁ吾輩はこれで……」


 辺りは完全に真っ暗。もう時間も遅い……


「ガウレスさん! もう真っ暗だし、うちに泊まって行きなよ! 部屋はたくさん余ってるし!」

「え! いや、しかし突然申し訳ない……」


 ガウレスは少しだけ動揺している。


「ガウレス! 一緒に泊まろう! お風呂も大きいんだ!」

「う……シア様に言われると断りにくいのう……」


「じゃぁ決まりだねっ! さ、こっちが入り口だよ!」


 そうしてシアと二人でガウレスの手を引いて、自宅へと招待した。

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