歌い手がファンに恋をした

梨。

第1話「恋愛相談は苦手何だが?」

世間では、アイドル、歌い手、二次元、バーチャル空間という言葉は当たり前の様になってきた。

此処にも一人、そんなジャンルの仕事をしている少年がいる。


ポケットから着信音が鳴り響く。

少年が振動していた携帯を握って電話に出ると男の人の声が聞こえた。


「はーい、もしもーし?」

少年が出ると、


「もしもし、涼ちゃん?」

と男の人が答える。


「あー、柏崎さん!」

と弾んだ声で答えた少年はそれから30分ぐらい長話をしていた。


しばらくして、「それじゃまた事務所で」という言葉を合図に電話を切った彼はやっと此方に向き直る。


「ごめんね〜…あっ、電話の人は柏崎さんだよ。この前、真也が挨拶した人!」

と言って彼がにこっと笑う。

「あー、あの人か」

と俺は適当に相槌を打っておいた。

内容を聞いていたので大体は予測していたがどうやら当たっていたらしい。


この少年、犬浦涼雅は今話題の人気歌い手さんなのだ。

俺はそんな彼の同僚、相原真也だ。


自己紹介と彼の紹介はここまでにして、最近困ったことがあるんだ。

「真也、また話を聞いてくれるか〜?」

抱きついてきた彼は半泣きで俺に縋り付く。

「分かった分かった、今度は何だ?」

俺は仕方なく毎度の事のように彼を宥める。

「それがさ〜、みーちゃんがまたライブに来てくれたんだけど、どう対応していいのか分からなくてさ〜…嫌われちゃったかな!?」

そして毎度の事のようにみーちゃんの話をする犬浦。

本当にお前は昔からみーちゃんが好きだよな。


みーちゃんとは、彼の幼なじみ白雪美月という俺もよく知っている人物だ。


犬浦とみーちゃんは歌い手とファンという関係。

手の届かない存在のアイドル的歌い手と手を出してはいけない関係にある。


俺としてはファンはファン。そういう概念しかないからよく分からない。

だが、俺も彼と彼女を見てきた身として2人はお似合いということは確かだ。

そんな事を考えていると犬浦が俺に声を掛けてきた。


「真也〜、話を聞いてくれよ〜…」

あーぁ、また始まった。

何時になったら彼のモテ期は留まってくれるのか少しだけ期待している俺がいる…。

ーENDー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る