きっかけは先輩

私は、部活の先輩である綾島由梨香先輩に呼ばれて、昼休みの多目的室に来ていた。親友の誘いも断って。しかし、10分経っても先輩は来ない。私は外にでて、まわりを見てみた。すると、パソコン室から先輩とその友達が出てきた。なにをしているのだろう。楽しそうに笑っている。先輩は、私の姿を見て、近づいて来た。

「せ、先輩、あの、用事ってなんですか?」

私が聞くと 、先輩は答えた。

「ああ、わたしはもうやったから。あなたはそこの荷物を部室に運んでね」

そこの荷物って、このダンボールの山だろうか。人間が運べる量じゃない。いくら何でも無理だ。あと子役に頼む量じゃないし、部室は4階だ。ここは1階だし。

「先輩は何をしたんですか?」

先輩もしてるはずなのに、この量はおかしい。

「私は運ぶ場所を作ったの。あと…」

そのとき、チャイムが鳴った。

「あ、やば、帰ろ」

先輩の友達がそういい、先輩軍団は帰っていった。それだけなら、私だって頑張って運んだのに。先輩がニヤリと笑いながら、口をかすかに動かした。


「イヤガラセ」


私はぶっつん切れて、先輩に飛びかかっていった。それでもみあって、先輩が運べと言ったダンボールの山にぶつかった。それが崩れて来て、先輩の友達が叫んだ。

「由梨香っ」

先輩は友達に助けられ、私は重たいダンボールが崩れてくるのを、ただ呆然と見るだけだった。




死んだと思ってたのに。次に目を開けると、そこは殺風景な部屋で、1人の女の子が椅子に座っている以外には、ドアが3つしかなかった。ドアだけなんでそんなに多いの?予算足りなかったの?他の物にまわそうよ。

「あ、あの」

「起きられたんですね」

「あ、はい」

起きてますが。

「本当にすみません、あなたがここにいるのは私のミスです!」

そして、女の子がくるりと振り向いて土下座した。

「え、あの、何が起こったのですか⁉︎あ、あの、とりあえず立ってください!」

すると、ゆっくり頭をあげた。

「本当にすみません!」

女の子は狐のお面をしていた。口元が見えるやつ。

「わたしは、綾島由梨香の担当者、ハザマと申します。もうすぐあなたの担当者も来ると思うのですが…」

担当者?は?

「担当者ってなんですか?」

「ああ、担当者はですね、1人1人についていて、生と死を司る係なんです。」

そのとき、右端のドアが開いて、猫の半面を被った子が入って来た。

「あ、遅いわよ!」

「仕方ないじゃない、急だったんだから仕方ないでしょ!」

この仕方ないを連発してる人が私の担当者…?

「あなたが私の担当者さんですか…?」

「あ、はい。私は早坂凪咲様の担当者、ナギサです」

名前が一緒なのはどうしてなんだろう…?たまたまなのかな…?

「凪咲様。この度はほんとーにすみませんでした!こいつのせいで…!」

「もう本当に!私があそこで寝なければ…!」

「???」

「あなたと由梨香がぶつかった時、私は由梨香を放っておいてしまってのです…!そこで由梨香が暴れて!あなたを殺してしまったんです!」

「暴れ…?死…?」

私は大混乱して、ナギサさんに助けを求めた。

「簡単に言うと、凪咲様にはまだ生きる権利があって、どうしたい?って話ですね」

「そんなこと急に言われても…」

私はそんなに軽々しく余生を決めたくない。

「具体的には…?」

「転生したいとかですね。スキルエグくとかでもいけますよ」

語彙力0かよ、まあいいや、じゃあ、お言葉に甘えて。

「超治安の良い国の超かわいいお姫様になって、魔法とかスキルとかもマックスにして、一生を楽しく幸せに暮らしたい!」

すると、部屋が真っ白に光って、泣きたくなるほどの優しい風が吹いた…



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