ex-5.サキュバス夢を見る
※下品発言注意。
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夢、そう、夢を見ていたっす。
だってこれが現実だなんてあり得ないことっすから。
夢の中でウチは記憶の中に残る姿のママと会話をしてたんすけど、夢だからかウチは成長した姿で……お洒落な喫茶店のオープンテラスでお茶をしていたっす。
服装はこっちの世界に慣れてしまったウチは白いブラウスに膝丈のスカートっていうラフながら清楚に見える格好。
一方でサキュバスであるママはサキュバス伝統衣装である面積の少ない黒色のマイクロビキニみたいな上下セットに下腹部にはサキュバス特有のハートの形を模した淫紋がピンク色に淡く発光。
チグハグな格好のウチとママだけど、ママには今のウチがどう見えているのか分からないけど……今の状況を楽しそうにしていたっす。
話す内容は……どんな屈強な雄でも何度も自分のテクニックでもうやめてくれと涙ながらに鳴かせたとか、自身のお腹の中に注がれる雄の精の心地よさとかが多く語られてたっすけど……ちょっとこちらの世界かつ現代思考に染まりかけてるウチにはちょっと刺激が強く感じられていたっす。
雄との性交はサキュバスにとってのバトルであって自分はすごく気持ちいいとか、精気をギリギリまで吸いとられて気絶寸前の雄に跨って一方的に腰をパコパコと動かしたとか聞いてると顔が熱くなるっす。……いや、まあ、ウチだってムラムラしちゃったら夜にヒトリアソビとかするっすよ?
オカズとして使用するのはテレビにでてるイケメンとか思い出したり、雑誌のイケメンの写真とか見ながら荒々しく抱かれたりとか自分がSになって拘束した相手を弄ぶっていう想像したり、時折……ほんのちょ~っとだけ先輩とか考えてたりもするっすよ? ほんのちょっとっすよ。
まあ、ウチはそんなレベルの世間一般的なむっつりスケベなぐらいだから、サキュバスレベルのイケメンを見つけた瞬間に言葉巧みに男を誘って股を開いて野外でもプレイするようなドスケベってわけじゃないっす。
そんな価値観が違っているウチの想像していることや、向こうの世界でママが居なくなって一人で生きるようになってこの世界に召喚されてからの近況をまるで知っているみたいにママはウチに語り掛けるっす。
……これって、夢っすよね? 実はママが生きてて干渉してるとかないっすよね?
けど、ママは死んでるか分かっていないんすよね……。
「ほんと、リリスってばサキュバスらしくないわね。まるで人間みたいよねぇ……?
でも、その胸の内に抱えている性欲はサキュバスの中でもかなり上位のものなんだけど、基本的な思考が何だか人間に近いのは……リリスを産む際に選んで交尾をした雄の種が原因かしら」
「……そう言えば、ウチのパパってどんな人だったんっすか?」
パパ、つまりはウチの父親だけど子供のころは聞くつもりもなかったし、知りたいとも思っていなかった。というか雄なんて家畜と同じ扱いだったっすから。
でも不意に気になったから聞いてみるっす。するとママは昔を思い出すような表情を浮かべるようにどこか遠くを見ながら微笑みを浮かべた。
「パパ、って言えば良いのかわからないけど、リリスを産むときに交尾した雄はねぇ……簡単に言えば顔が良いだけのザコだったわね♪」
「えぇ……?」
愉しそうに話すママの言葉に、ウチは声を失ったすよ。
というか、顔が良いザコってなんすか? いろいろと不安になるんすけど? やっぱり聞くのやめても良いすか? あ、ダメ?
そんな風に思っているとママは話しはじめる。
「初めにウチが捕まえたときはね、年齢よりもかなり若い見た目をしてて恐いという感情を押し殺すようにして強気に『僕は聖女を召喚した国の最後の王族だ。お前のようなサキュバスに負けはしない!』ってまるで子犬が吠えるみたいにキャンキャン言いながら睨んでいたの。
そんな負けん気の強い目が気に入ったから飼ってあげて、裸首輪っていう恰好で逃げ出すことだけは禁止っていう隷属契約をしてから、喋るのも禁止してから何度も何度も……手とか、足とか、胸を使って、限界ギリギリで止めて、焦らして焦らして遊んであげたの♥」
「あ、遊んだんすか……、というか裸首輪ってすごいすね……」
サキュバスの遊びだから、強制的に能力で発情させた状態でおっきくなったアレを手で弄ったり、おっぱいで挟んだり、足で擦ったりっすよね。しかも聞いている限りだと寸止めばかりし続けてたんすね。
女性を知らなかった雄には絶対に耐えられない行為じゃないっすか。
そう思っているとウチの想像通りだったらしく、うっとりとしながらママは言う。
「初めは屈辱に顔を赤くしながらウチを睨んでいた雄だったんだけどね、何度も何度もウチの手や足や太ももで熱いのを出していくと、快感に脳が刺激されちゃってか発情した犬みたいに舌を出すようになって、限界超えると気絶しちゃったんだけど……何度目かで女の子みたいに内股をもじもじしながら自分から求めるようになったの。
そんな姿を見ててすごく滑稽だったんだけど、それ以上に可愛かったのよ。
『このサキュバスめ!』とか言ってた口からどんな言葉が聞けるかと思いながら、喋る許可を出すとね……媚びるように犬のようにしゃがみながら『ご主人様ぁ♥』とか言いながら自分のことを卑しい雄犬と呼んだりとか言ったのよ」
「あー……堕ちるとこまで堕ちていったんっすね。けど、プライドがあったから堕ちるまで持ったんじゃないんすか?」
「いいえ、隷属してからその間わずか3日間よ」
「はやっ!? いくらなんでもそれは早すぎると思うっすよ!? もう少し王族の意地とか見せてほしいんすけど!! ウチが産まれてから、ママが精気を与えてくれる用の搾取雄でも堕ちるまで頑張って1月は持ってたっすよね!?」
もう見れることがないと思う想像上のパパの姿が、メガ〇トアとか快〇天とかの18禁男性向け漫画で面積の薄い女性キャラがお散歩シチュでするような媚びるポーズを想像して呆れるウチっすけど、ママはその頃がとても愉しかったみたいで妖艶に舌なめずりをしてるっす。
けど聞いている限りだと、本当にパパは顔が良いだけのザコとしか呼べないっすね……。
だけど、なんでそんなザコである人物をウチのパパに選んだんっすか?
ママなら、生命力が溢れた屈強な戦士とか、次世代のパワーアップ用の魔法使いを種付け用に選ぶと思ったのに。
「リリスを産むときにウチのペットになり果てたザコ雄を選んだ理由はね、顔が良かったからというのと……そうね、ウチ的にその子が可愛いと思ったからかしらね。
初めはちょっと摘まめるだけの軽い餌として生かそうって思ってたんだけど、必死にウチに媚びるように行動してて、尽くす姿が本当に可愛かったのよ」
「はあ……」
「幼いみたいでもう常時小さいながらもビンビンに立てながら、ウチのために尽くす姿に……こう、きゅんと淫紋が反応したのよ。
それで子供を産むための雄に選んであげたんだけど、情けとして種付けと同時に生命力が吸いとられて雄は必ず死ぬと聞いてたのに『嬉しいです! ご主人様の子を孕ませる権利を得られるなんて……! どうかこの卑しい雄犬の命をお使いくださいっ♥』って頬を紅くして目をキラキラさせながら言っててウチでさえちょっと怖かったけど、他のサキュバスが羨むくらいに何時間も頑張ってくれたわ。そして生命力が完全に吸いとられたと判断した瞬間にリリスが宿ったのを感じたのよ」
滅多に味わえない快感だったようで、ママは当時を思い出すようにうっとりしながらお腹を撫でる。
……多分だけど、ママはパパをエサとか子種を得るための存在とかペットって感じに扱ってたけど、ちゃんと愛はあったのかも知れないっすね。
でもウチもママも所詮はモンスターだから、愛が何なのかと理解出来ずにいたんすけど。
けど、その結果ウチが産まれたということらしいので、どう思えば良いんすかね?
――ジッ、ジジッ――――
――ノイズが奔る。
「まあ、そんなわけで種付けに使った雄の種が原因かも知れないわね」
「もぐもぐ、そうっすか?」
「そうよ。だって、サキュバスの意思が――」
――――ジジジ、ジジッ――――――
――――お洒落な喫茶店のオープンテラスが、いい匂いが充満する油べとべとな焼き肉店の一室へと変わる。
そういうママの言葉を聞きながら、良い焼き加減のカルビを口に含むとひと口噛むごとに口の中にジュワ~ッとした脂が広がっていき、牛肉のうま味が感じられるっす。
ほわぁ、本当美味しいっすよ~♪
やっぱり高級焼き肉店で食べる焼肉は美味しいっす~!
――――――ジジッ、ジッ、ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジッ――
――優しくウチを見てたママの姿が、呆れたように肘をテーブルにつきながらこっちを見る先輩に変わる。
「つか、お前って本当に遠慮なく食べるよなぁ……」
「いやいや、ウチは自分の金では食べないっすよ。こ・れ・は・ぁ、先輩のお金で食べる高級焼き肉だから良いんすよ!!」
「あー、はいはい、そうかよ……。というか食いながら喋るなっての」
「そんなことを言って、こ~んな可愛い美女の唾液付きのごはんを被れる栄誉が与えられてるんっすよ~?」
「そうですねー、美女ですねー。あ、生中追加で」
慣れ親しんだ軽口。バカにされてるわけじゃない、他愛のないやり取り。
サキュバスのコロニーでは、出来損ないだったから相手にされることなんてなかった。
だけど、今の場所は楽しい。面白い。
オカルト雑誌っていうよく分かんない雑誌だけど、色々知らないことを知るのは楽しいし、こんなことを言ってても先輩は嫌っていない。
あぁそうか……。ウチはこの日常をずっと過ごしたいんだ。
そう考えるウチはサキュバス失格かも知れないけど、本当のことだから。
それを理解した瞬間――世界が割れた。
『メイドチョップ!』
「ほあっ!?」
真っ白な空間に散らばるのはご飯茶碗からこぼれたホカホカのご飯、焼かれるのを今か今かと待っていた生肉たち、どうぞ食べてと言わんばかりに良い焼き色に焼かれた肉、肉の脂が落ちてパチパチと音を立てたり火を舞いあがらせていた真っ赤な炭。
ビールジョッキを手に椅子に座ったまま先輩はグルングルン空間の中を回ってどこか遠くに飛んでいく、焼肉屋の店内はまるでステンドグラスだったかのようにガラスみたいに割れて下へと落ちていく。
そして驚くよりも先に襲い掛かったお腹への衝撃。
直後、ウチは覚醒した。
「――ぷぎゃ!? な――なんすかなんすかっ!?」
ガバッと起き上がったところで、今まで見ていたのは夢だということに気づき……何処か分からないと混乱――するよりも先に、目の前の存在に気づいたっす。
無表情なメイドになんかオタク受けしそうな猫耳ロリっ子、それと薄汚いローブを羽織った人だと思うナニカ。
いったい何の集まりかと思いかけるも、即座にメイドとロリっ子から漂う気配に全身から激しい汗が噴き出したっす。
……やばい、これやばいやつだ…………。
その気配はあの神聖魔法の使い手だった財閥の当主よりも遥かにヤバイっす。
心からそう思っているとカツカツと床を鳴らしながら無表情なメイドがウチに近づいてきたっす。
「ようやく目を覚ましましたか」
「だ、だだだだ、だれっすか!?」
「質問は受け付けません。貴女が答えるのはわたくしめたちに絶対服従か、大人しく殺されるかのどちらかです。ハーフサキュバス」
「へ、ほ、あ……?」
バ、バレてる。サキュバスだってバレてるっす! ――って、ちょっと待った。ハーフ? ハーフサキュバスって何すか??
道端に転がった石でも見るように見下ろしながらウチを見つめる無表情なメイドの言葉にウチは固まった。
―――――
一応ある程度性描写系は修正はしましたが、危ない橋渡ってないことを祈ります。
そして運ばれている最中に眠っているときはシリアスだったのに……。
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