3-2.準備
「真緒、試してみて」
「わかりました。マスター……どうぞ」
そう言ってわたしは真緒にステータスカードを渡すと、真緒は受け取り自身のステータスを読み取らせる。
真緒の丁寧な口調……、やっぱり妙に違和感が強いと感じながら読み取られたステータスカードを受けとり確認する。
――――――――――
名前:マオ
種族:キメラ(人族+ドラゴン族+タイガー族)
職業:メイド見習い
STR:1600
DEF:1500
VIT:3900
MAG:1300
INT:400
RES:940
AGI:830
DEX:200
LUK:-3000
SKILL:
ドラゴンブレス
身体強化・EX
風纏い
精霊魔法・全
称号:
元異世界の魔王
元精霊神
ポンコツメイド見習い
――――――――――
……うん、ちゃんと表示されてる。いい感じのできだ。
満足いく仕上がりになったステータスカードを見ながら、よしとちいさくガッツポーズ。
やっぱりいい出来のアイテムができたらうれしい。
……それにしても、真緒の運が低すぎる……というよりもマイナスいってるなんて……。
ちょっとかわいそうな目で真緒を見ていると扉が開かれた。
「おかえり、オネット」
「おかえりなさい、オネット」
「ただいま戻りました。ご主人様、まお」
扉から出てきたすこし色あせたメイド服に身を包んだオネットにおかえりと言うと彼女は丁寧にカーテシーをしてわたしたちに挨拶する。
彼女の背後では荒れた土だらけの土地が見えたけれど、彼女が扉を閉めるとその光景は見えなくなった。
えっと、どれだけの時間向こうにいたんだろう?
「オネット、どれだけの時間向こうに居たの?」
「はい、かれこれ……10年ほどです。ですが、おかげで体もスムーズに動かせるようになりましたし、声帯の機能も進化したようで……このように上手に喋ることが出来ます」
「ん、それはよかった」
言いながらオネットを見るけど、彼女は人形じゃなくて……まるでほんとうの人間みたいに見えた。
それにしても10年経っていたんだ。わたしが作業していたのは1時間ほどだったけど、オネットが居た扉の先はそれだけの時間なんだ。
……時間が不安定すぎるけど、そういう特訓のときだとこれは便利。
そう思いながら扉を見る。……壁にはめ込まれていない、工房内にポツンと置かれた扉。
見た目はアンティーク調な扉だけど、置かれた状態はまるで青いタヌキが使うピンク色のドア。
「それにしても、凄いですね……この扉は」
「ええ、この森の時空が歪んでいるのは分かっていましたが、その歪みを応用してさらに歪めて……限られた空間のみを捻じれさせた魔道具なんて洒落になりません」
「まあ、創るだけ創った物だけど……これは普通の人には絶対におすすめしない魔道具だから」
師匠といっしょにこの森を改造していたとき、森に仕掛けた時空の歪みを何かに応用できないかと相談してみた結果……昔見た何処にでも行けるドアを思い出して、この扉は創られた。
だけど、何処にでも行けるけれどこの世界……ではなく、何処なのか分からない空間に創られた世界に行けるだけのドアになってしまった上に扉を開くたびに違った場所に通じてしまい、しかもその場所はこの世界の時間との違いがありすぎるものばかりだった。
探索を行わせた魔道具で計算してみると……ある草原の空間ではこの世界の1時間の時間が向こうでは100日という長い時間だったり、ある島の空間ではこの世界の1時間の時間が向こうでは逆に1分という短い時間だったりと未知の世界に辿り着く扉。
とりあえず師匠と話し合って、この扉は【狂った世界扉】と名づけて、封印した。
だってこれは生きた人間が使うべきじゃないと判断したから自分自身も誰かにも使うつもりなんてなかった。
だけど、そんな狂った環境下だけれど歩くこともままならない、喋ることも全然だったオネットに対して馴染ませるのに便利かも知れないと判断して……わたしはこれを使わせた。
だけどその考えは功を奏したみたいで、オネットは創った器を十分に動かせるようになった。……今の彼女の能力はどんな感じなのか気になる。
「真緒、オネットの能力値……気になる?」
「まあ、気になる……と言えば気になりますね。残念ですけどわたくしは≪鑑定≫を持っていないので見れませんけど」
「わかった。じゃあオネット、はい」
「ステータスカードですね。わかりましたご主人様」
差し出したステータスカードを受けとり、オネットが触れると彼女の魔力が読み取られステータスカードに表示され、それをオネットがわたしたちへと差し出した。
ステータスカードを受けとり、わたしは見ると背後から真緒も同じように見る。
――――――――――
名前:オネット
種族:ウインドスピリットクイーン
職業:ベテランメイド
STR:550
DEF:430
VIT:450
MAG:1800
INT:1600
RES:1100
AGI:5300
DEX:2000
LUK:200
SKILL:
格闘術・Ⅶ
給仕・Ⅷ
風魔法・Ⅸ
毒魔法・EX
称号:
元魔王四天王
シミィンのメイド
デスウインド
戦場の風花(毒花)
――――――――――
いろいろと凄いステータスが表示された。
格闘術、給仕、風魔法はわかる。毒魔法は……使用した片目の魔石が原因。
そして能力値は紙装甲というわけじゃないけど、スピードが速いから問題はないと思う。
振り返って背後で見ていた真緒を見ると、なんというか複雑そうな表情をしているのが見えた。
自分のほうが強かったのに、今は同じレベルだというのが気に喰わない? というよりもプライドを刺激されてる?
「真緒、嫉妬している?」
「っ!? そ、そんなわけな――あ、ありませんよ」
「すごく複雑な表情してた」
「………………」
「ご主人様、まおをイジメないでください。彼女はわたくしめにとっては大切な父……いえ、今は母ですね。そして姉であり、可愛らしい妹であるのですから」
「おい、何だその言いかたは? オネット、我にとって貴様は手ずから創った可愛い娘であるが、誰と誰が姉妹だ……?」
わたしの言葉に真緒は黙ったけれど、オネットの言葉がひと言余計だったようでピクッとしながら真緒がオネットを睨みつける。
そんな彼女に対してオネットは窘めるように口を開く。
「ダメですよまお、そのような喋りかたをしては。貴女もご主人様に仕えるメイドなのですから、お淑やかにならないと。これは執事長に言って教育をし直さないといけませんね」
「何がお淑やかだ! あのじいさんも貴様も、しつこすぎるのだ! やれ言葉遣いを治せだの、やれ歩きかたに注意しろだの、うるさいのだ!!」
「まお……。ちょっとお仕置きが必要みたいですね?」
「何がお仕置きだ! 逆に我のほうが貴様よりも上だと知らしめてやろうではないか!!」
真緒も溜まるものが溜まっていたみたいで、オネットの言葉に反発ばかりしていた。
何だかほんとうに親子喧嘩に見える。……ただし、オネットのほうが親で。
とか思っていると売り言葉買い言葉といった感じに2人が戦うことが決まったようだった。
……しかたない。場所を提供するしかないよね。
でもこのまま戦わせるだけじゃもったいなさそうな気がするし……。
「あ」
「如何されましたかご主人様?」
「なんだマスターよ! 我とオネットの邪魔をするつもりか!!」
「ううん、邪魔をするつもりはない。それどころか場所も提供する。だけど、だれも見ていないところで戦うのも味気ないんじゃない?」
わたしの言葉に反応し、クルっとこっちを見るオネット。反対にちょっとケンカ腰に睨みつける真緒。
そんな彼女たちに言うと反応は違った。
「わたくしめは特に問題はありませんが……よろしいのですか? その、まおが倒される姿が周囲に見られるのは……」
「なんだと!? オネット、我が貴様に負けるとでも言うのか? 逆に貴様を地べたに倒して、我が上であると見せつけるためにギャラリーは必要だろう!!」
「……そうですか。でしたらまお、わたくしめが勝った場合は二度と逆らわずに大人しくメイドとなってくださいませ。言葉遣いも変えてもらいます」
「ふん、良いだろう。だが我が負けることはないからなぁ!!」
炊きつけてしまったけど、問題はない。というか、やる気になってもらったほうがいいと思う。
そのほうがアレらにも刺激になるだろうし……、どれだけの脅威が攻めてくるかわかるかも知れないし。
……とりあえず、連絡をしておかないと。それと2人の負荷に耐えれるように場所の強化も。
自分から焚きつけたから大変というつもりはないけど、ちょっとだけ後悔してる。
そう思いながら、静と動というべきオネットと真緒をわたしは見ていた。
そしてそんなわたしを、窓から遊んでほしそうにマーナが見ていた……うん、ちょっと休憩をしよう。
ちょっと現実から目を逸らしたいと考え、マーナとボール遊びをすることにした。
「マーナ、とってこーい」
『わふっ、わふ~~♪(ボール、ボール~~♪)』
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