3-1.知らぬ間にできた守る会と追い返されるあれ

 聖ファンタジー高等学校に入学して、2週間がすぎた。

 普通科は国語や数学、科学、社会といったいっぱん教育を主に学ぶ学科で、わたしは毎日黙々と授業をうけていた。

 普通の進学校と同じような感じだと思うけど、ときおり窓の外を見ると農業科や畜産科の生徒が畑で授業をうけているのが見えたりしていて、あらためてこの高校は普通の学校とは違うということを知った。

 いっぽうでクラスメイトは1週間もしたら知りあった相手の性格や人となりがわかるみたいで、グループが創られていた。

 趣味を通じて知りあったグループ、普通に話が合って友達となってできたグループ、クラスの委員長をリーダーにしたまじめな性格をしたグループ、都会に居そうなギャルのような女子のグループといった感じに。

 わたしは、それらのグループには入ってはいなかった。

 もともと住んでいるのが地元だから、他県からやってきた学生が生活している学生寮がおおい区画にはあまり縁がないから話す機会もないから当たり前。

 そしてわたし自身、話すのが苦手だからクラスメイトとの接点があまり……まったくない。

 それで、わたしがひとりぼっちなのかと聞かれると……返事にはこまった。

 なぜなら……。


「……おはよう」


 始業前に教室にはいると、チラチラとわたしを見る生徒が何名かいた。

 その中の委員長をリーダーにしたグループが近づいてくるのが見えた。


「おはよう、只野さん。……その、大丈夫?」

「……もんだい、ない」


 グループのクラスメイトたちがわたしを廊下側から見えないようにしてから、リーダーの委員長が代表してしんぱいそうにわたしを見ながら訪ねてきた。

 その言葉にわたしは小さく首を振りながら返事をしたけど、本当はかなりしんどかった。

 理由は教室の扉ちかくの廊下からジーッと教室を見ているあれが原因だった。

 あの日の朝、あれに呼び止められてから、あれはずっとわたしを見張るように廊下からわたしを見ていた。しかも逃げ足もあるみたいで先生が注意しようとするまえに急いでその場から離れる。

 そんな状況が毎日続けば、クラスメイトのだれだって関わりたくない、または心配するようになっていた。

 でも心ないクラスメイトはそれが来る原因がわたしだとわかっているからか、嫌そうな視線を向けてきたりもしていて……つらかった。

 とくにギャルのグループがチッと舌打ちをして、くちぐちに「あーもう、うっざ」とか「あいつのせいで朝がだいなしー」と聞こえるようにつぶやいている。


「ちょっと! これは只野さんが原因じゃないでしょ!? それなのにそんなことを言うなんて!?」

「あーもう、いいんちょーってばうるっさー。メガネはメガネ同士知りあう確率が高いってやつ?」

「あはは、受ける―!」

「貴女たち……!」

「べつに、気にしてない。……ごめん、わたしのせいで」


 ギャルグループの言葉にはらが立ったみたいで、委員長がどなったけど通じない。

 それどころか委員長もからかい始めたから、わたしは委員長をとめてギャルたちに頭を下げる。

 わたしが頭を下げたのを見ると、気に食わないといった感じに「はー、やだやだー」と言って関わる気を失くしたみたいだった。

 そしてそのまま話せる雰囲気じゃなくなったみたいで、委員長たちも申し訳なさそうにわたしからはなれていった。

 そんなわたしへの仕打ちを、げんきょうのそれは「あわわ、賢者が……! はっ、いま助けたらボクへの好感度が爆上がりするんじゃ?!」とわけの分からないことを呟いていたけど……反省しているようすはない。


「ほんとうに、反省してほしい……むだだろうけど」


 小さく呟き、やすまる時間が欲しいと心から思った。

 学校ではあれによるストーキング、そして家に着くとあれは接近して来ないけどあれに頼まれたみたいで監視がついていた。

 ママとパパとごはんを食べて、お風呂にはいってから涼むために窓を開けていたときに視線を感じ……あれ関連だと感じたために、隠ぺいした状態でしゅういを調べるとわたしの部屋を望遠鏡を使って覗く人がいた。

 距離はぎりぎり700メートルという遠距離だけど、嫌な気配がしたときに飛びだすのを待っているようにみえた。

 だからわたしは嫌な予感がしたとしても飛びださないようにしていた。

 だけど、運が良いのか2週間すぎたのに嫌な気配は落ち着いていた。ほんとう、助かった。

 いや、一度だけ嫌な気配はしたけど、しばらくして何も感じられなくなったから……あれが何とかしたのだろう。

 わたしはそう思うことにした。


「みんな、ある程度、学校に慣れたか? 今日は前に言ったように午後から普通科が体力テストをおこなうから、体操服を着て準備をするように」

「先生、食後に急激な運動ってゲロ吐きませんかー?」

「吐いたらそのときはそのときだ! まあ、それは冗談だけど、具合が悪かったらちゃんと近くにいる先生に申告するようにな」

「「はーい」」


 始業のチャイムが鳴り、石川先生が入り今日の午後の予定を口にする。

 それを聞いて、わたしは表情をくもらせる。

 当たりまえ。だって、わたしは運動がにがてだから……表情をくもらせるに決まっている。

 でも、運動ができない人間だと思われたとしても、ちゃんとテストは受けないといけない。

 はぁ、いやだなぁ……。そう思いながら午後の体力テストの時間を待っていた。


 そして次の日、あれに物理的にもんくを言ってくれる人が増えてくれた。

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