第21話 変身! 風の国の王女様!? 後編!
「はぁぁ!? なに言うとんねんこらボケェ!」
「あぁ!? なんやねんお前コラボケ」
「
「種族関係あらへんリッサが言うたやろがボケ! そもそもなんでお前にそないなこと言われなアカンねん人間コラボケ」
突然だが。
咲枝とマッツンが口論を始めた。
「ていうか関西弁被っとんねん! なんで怪人の癖に関西弁やねん
「お前に言われた無いねんボケ! 何がそのトシで『変身ヒロイン』とか抜かしとんねんサブいわ〜。鏡見てみろやオバハン」
「まぁだ20代前半も前半じゃ!! お前
「トシ半分落としてから出直してこいやコラ」
「なんなんこいつ! ていうか
「関西弁プラス語尾とか盛り過ぎやろ胸焼けするわボケ! お前こそヒロインやねんから語尾に『☆』でも付けとけや」
「あー。まあアリやな☆」
「ウザッ」
「はぁぁあ!?」
すうっ。
大きく息を吸い込む音。
「「う る さ い !!」」
リッサだ。
「うおお」
大広間中に拡散した大音量。咲枝もマッツンも口を止め、彼女に注目した。
「いつまで言い争ってんのよ馬鹿! 私達の会話はエナジーによる念話だから言語も方言もイメージでしかないの! あなた達が意味分かんないのはこっちも承知だから説明するって言ってるでしょ!?」
「ぅ……。すまんリッサ」
「…………せやな。こんなんしてる場合
「…………」
身体の小さな、全裸の少女に叱られる大男と大人の女という、妙な光景。
リッサも、ふたりを見る。そして、つい先程の会話内容。
……確かにどちらの台詞か分からないな、と思った。
「……マッツンは今後語尾を付けなさい。『ツン』で」
「はあ!? 嘘やろリッサ!」
「分かりにくいのは私も嫌だわ。書き分ける力量の無い者を憎みなさい」
「…………最悪や……ツン」
「大丈夫。ウインディアでは何の問題も無い話し方よ」
がくりと、うなだれたマッツン。隣で咲枝が笑いを堪えていた。
♡
「……ウインディアには古くから、大占い師ペムリン様という方が王国に仕えていました。数々の言い伝えや予知を伝え、国王の相談役として活躍されていました」
静かになった所で、ララディが語り始めた。
咲枝も綾水も、清聴する。彼女は王女で、ポポディの妹だと名乗った。訊きたい事は多いが、まずは彼女の話を聞こうと。
「そのペムリン様が、予言されたのです。近い内に、怪人と呼ばれる者達が攻めてくると。わたしが、生まれた直後のことでした。
父王アウィウィにより、生まれたばかりのわたしはとある村に避難させられました。そうして、そこの家で育ったのです。後に人間界へ向かうことになる使者ポポディの、妹として」
ポポディが、王子ということではない。もしそうなら始めに言っている筈だ。つまり、この兄妹に血縁関係は無い。ぬいぐるみに血があるんかいと咲枝は思ったが。
「そして予言通り。怪人達が攻めて来て、ウインディアは滅びました。国民は怪人に触れられると死んでしまう。都は正に阿鼻叫喚。国王は逃げてしまったと思われ。建物も命も蹂躙されて。……亡くなったエナジーアニマルは、そのままエナジーとして怪人に利用されます。本当に……酷かった。あの、幼い子供達の叫び声。隣で倒れる親達。今でも目を閉じると浮かんできます。わたしはその時、思ったのです」
そして。
このララディからは。その佇まいや喋り口調が。……見た目はぬいぐるみであるのだが。
これまで見てきた、エナジーアニマルの『ゆるふわ感』が無かった。咲枝もここでツッコミを入れる気分にはならない。
「……これ完全に、『攻め込まれてからエナリアを探していたんじゃ間に合わない』じゃないか、と」
「………………」
ツッコミたくなったが。
堪えた。
「そもそもですが、自国の危機に対して自衛手段を持たず、外国……異世界の『少年兵』を頼りにするシステムこそが元凶だと思うのです。伝統であるかもしれませんが、伝統を守っていては民は守れなかった。これまで上手く行ったからと言って、これからも問題無しと決め付けるのは非常に危険な思考停止だったのです」
それ全部。
アタシ前に言うたよな? と。口の中まで出掛かるが、なんとか堪える。
「ですが、今のままのエナジーアニマルでは軍を組織しても怪人には及びません。ですから私は、ウインディアの軍隊の体制が整うまでの防衛手段として、他種族に助けを求めようと、国を出たのです」
実際、結局は。今はまだ、助けが必要だ。だがこれまでとは違う。今までは、エナリアに助けを求め、危機が去ったら『それで終わり』だった。平和になった。良かった。一件落着。
……それでは何も変わらない。また危機に陥り、滅びるだけだ。
「ウインディアの外の世界は、わたしが今まで、国内で習ってきたものとは違っていました。ひと言で怪人と言っても、多種多様な国があり生活があり、考えがありました。『敵』『味方』なんて安易な二元論で、怪人を語ることはできなかったのです」
ウインディアは閉鎖的な国だった。平和で穏やかな風の吹く里と謳っているが。国外に目を向けず国防は他人任せの、杜撰な体制だった。
「わたしはその旅で、リッサやマッツン、他の同志を見付け、ウインディアに戻ってきました。マッツンはスパイとして潜入してもらっていたので、今回の新規幹部候補募集に狙いを付け、ここまで皆で入ってこれたのです」
「…………なるほど」
ララディによる説明が終わった。続いて皆の視線が、咲枝に集まった。
3代目エナリア1号に。
「ほなら、味方やんか」
まず初めに、それを確認したかった。だが先程のリッサと同じく、ララディも目を伏せた。
「……どうでしょう。微妙なのです。わたしの考えはまだ父にも告げていません。古くからの、軍隊を持たないという考えの強い国民に何の説明もできていません。わたしがやっていることは、外から見れば怪人を率いてウインディアの支配権を別の怪人グループと争っているだけです。……反逆罪でしょう。何にせよ、武力行使をしようとしているのですから」
「その通りよ。『国防はエナリア』が原則で常識で、伝説。もう1000年もそうしてきた。民意に反する革命を私達は行おうとしてる。私達が勝利した後、ウインディア正規軍は国内に留まり続けるんだから。反発は必至ね」
リッサも補足して説明する。
「まあ確かに、ぬいぐるみが軍隊ってイメージ無いもんなあ。アタシらの国でも、軍隊廃止されて100年も経ってへんけど。今からまた軍隊作るって、
「そうですわね。それが、1000年となると。……現実的に軍隊が必要だとしても、国民の感情はまた別の話ですし」
自衛隊は実質軍隊では? という話は一旦置いておいて。ララディの憂いは理解できる。日本も国防、安全保障はアメリカに頼る部分も大きい。エナリアに頼るウインディアと似た部分があるのだ。
そんな中で。誰かが『軍隊を作る』と言っても、中々話は進まないだろう。ウインディアの政治制度や法律は、咲枝達は詳しくないが。
「エナリアは、ウインディアの誰もが認める『伝説の戦士』です。英雄にして、恩人であり、愛すべきみんな大好きな『女の子』。国内でのエナリアの人気は凄まじく、他に軍隊を組織しようという発想すらありませんし、もしあっても一瞬で潰されます。けれど」
ララディはふわふわと浮かび、こちらへ寄ってきた。咲枝と綾水の手をふわりと取る。
「……この現状は。あなた達エナリアの優しさに付け込み、自分の身は自分で守るという当然の努力を思想の根本から怠った、わたし達エナジーアニマルへ下った『罰』です」
「……!」
その表情は。ぬいぐるみとは思えないほど悲痛だった。ぬいぐるみでは、無いのだが。
「本当に、申し訳ございませんでした……! ですがどうか。……どうか最後にもう一度だけ、力を貸してください。わたし達が、きちんと『国』を、立て直すまで」
咲枝は。
ウインディア特有の『語尾』を付けないララディを見て、感じて。
その『真剣さ』と『事態の逼迫さ』を痛感した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回予告!
『自国の危機に対して自衛手段を持たず、外国……異世界の『少年兵』を頼りにするシステムこそが元凶だと思うのです』
〈咲枝〉:↑これ、プ○キュアとか魔法少女モンで『皆気付いてるけど言っちゃいけないこと』ベストスリーに入る奴やん。言うてもうたやん。
〈綾水〉:そうなのですか? 他にも?
〈咲枝〉:『顔も家も割れとる女子中学生とか一瞬で暗殺できるやろ』とか、『ていうか大人は何やっとんねん』やな。そういうの真面目に考察するんがこの作品やで。批判したい訳やなくて、ジョーク作品やからな? ウチら全員、プ○キュア好きやからな?
〈ララディ〉:ええと。話を続けてよろしいでしょうか……。
〈咲枝〉:あっ。すまん。
〈みんな〉:次回!
『美少女エナジー戦士エナリア!』
第22話『変身! 歴代エナリアの昔話!』
〈綾水〉:来週も是非、お越しくださいませね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます