第11話 クラスメイトからの
職員室で転校の挨拶など諸々の行事を終え、職員室まで迎えに来た美咲と一緒に教室まで向かっていた。
何故か教頭先生には『くれぐれも学校を破壊しないように! いいですね、四季島さん!』と念を押された。
たぶん原因は私の隣を楽しそうに歩いている美咲。
「いや~見事な高校デビューだったね、碧。クラス中の皆が噂してるよ」
「ようなかけん。もう美咲の所為で目立ってしもうたやなか。しかも噂話まで……」
「あはは、メンゴメンゴ。あと方言でてるよ」
「はっ!?」
咄嗟に口を抑えて態とらしく咳払いする。
誰かに方言聞かれたらイジメられる! きっと。
「別に方言聞かれたからって大丈夫だよ。私だって語尾に方言たまに出るよ?」
「美咲はコミュ力高かけん……美咲はコミュ力高いから大丈夫なの。私みたいな子は東京だとイジメられる。東京は怖い所だって博多じゃ有名なんだから」
「大丈夫大丈夫、皆良い子だから。てか博多で有名ってウケる」
咄嗟に「博多ばバカにする人は博多に泣くばい」って博多弁が出そうになって瞬間、階段を駆け上がってくる男子と出会す。
茶髪にピアス、そしてモデル雑誌にありそうな髪型。正しく高校ヒエラルキートップで間違いない男子。
ぶつかりそうになりオ私がドオドしてると美咲が男子に話し掛ける。
「お、ヒロミじゃん。リア充男子は堂々と遅刻か? また女の子泣かせてでもした?」
女ん子泣かしぇたっちゃ……流石はリア充男子!
ヒロミと呼ばれた男子は悪びれる様子もなく笑いながら美咲に言い返した。
「人聞き悪りぃな。お前と違ってちゃんと来てるよ。それに女の子は泣かせてない……少なくとも今月はな」
「うわ~女の敵だね。私だってちゃんと来てるし、ヒロミと違ってズル休みしてないから」
「ま、そうだな。お前は体力バカで風邪も寄り付かねぇからな。それに俺の場合は女子に呼ばれてデート。彼氏いないお前と違ってな、あはは」
「はぁ!? ばりムカ!」
え? ……ばりムカって美咲、博多弁出てるよ。
「で、この可愛い女の子は誰? お前そっち系だった?」
そっち系って何!? どっち系!?
リア充男子が美咲の陰に隠れている私を見ている。
「バカな事言わない。この子は従姉妹の四季島碧。碧、このリア充男子は
「ひでぇ紹介だな。皆はヒロミって呼んでるからそれでよろしく、碧。美咲とは同じ演劇部でクラスも同じだから。ちなみに小学校からの幼馴染み……で合ってるよな、美咲?」
早速名前呼びのリア充オーラ全開のヒロミに私は美咲の陰にまた隠れてリア充の光を避ける。
「あーはいはい、合ってる合ってる。あんたと幼馴染みってだけで私の黒歴史……いや、黒友達だわ」
「あはは、ひでぇな。ま、俺は先に教室行ってるからな。また後でな碧」
ヒロミが私に向かって手を振るが、美咲が追い払う様にシッシッと素振りする。
「碧に手を出したらヒロミでも怒るからね。分かった?」
「へいへい。怖い番犬がいるからな、ははは」
笑いながら背を向けて歩き、ヒロミは手を振りながら行ってしまった。
「いい、碧。ヒロミは良いヤツだけど気をつけてよね。女子には甘い言葉で誘うから」
「だ、大丈夫。良い人だと思うけどオーラが凄くて……」
そうリア充オーラが強過ぎで引っ込み思案の私には無理ばい!
「でもヒロミって演劇部の中じゃ演技が上手いんだよね。悔しいけど運動神経良いしイケメンで、おまけに勉強も出来る」
「あはは……それは凄いね」
勉強も出来て運動神経も良か……そしてイケメン。
東京んリア充は凄かね。
******
教室まで行くと早速沙織先生が私の事を皆に紹介してくれた。
騒ぐ男の子とキャーキャー騒いでいる女の子達。
東京の高校生は凄か!
「よーし、静まれ男子共。福岡からの転校生で名前は四季島碧だ。碧、皆に軽く自己紹介を」
沙織先生が黒板に私の名前を書き終わり壇上を譲ると、私は心臓の鼓動を感じながら壇上に上がる。
転校生は最初の掴み? が大事ってネットに書いてあったと。
深呼吸しながら息を吸うと皆が私を見ている。
咄嗟に言いながら頭を下げた。
「博多ん高校から来た。四季島碧ばい。よ、よろしゅうお願いします!!」
あれ!? 今なにか博多弁らしきものがこの口から出たよね!?
顔を徐々に上げると美咲が必死に笑いを堪えている。
やってしもうた……。
その瞬間クラス中の皆から笑いを浴びてしまう。
は~イジメ確定や。
ある意味、最初の掴み良かったと思う。ムードメーカーなら非常にオイシイだろう。
失敗したと思った矢先、教室に拍手が鳴り響く。
「碧、後ろ見て!」
「え?」
美咲に言われて振り向くと黒板に書いた私の名前の周りに向日葵の花が浮かび上がっては咲き誇った。
黒板アート魔法に私は一瞬何が起こったのか分からなかった。
すると美咲がタイミングを取った様に合図を送ると皆が一斉に。
「アオイちゃん、ようこそ立川北高校へ!!」
クラッカーがパンッパンッと鳴り、クラッカーから出た飾り達が私の頭に掛かっては、美咲の魔法だろうか。クラッカーを引っ張ると小さな花火が咲いた。
「みんな碧が今日来るって知ったから急いで準備したんだ。どうだ? 私の自慢の生徒達の歓迎は」
「はい……ばり嬉しか」
ついつい感動して博多弁で喋ってしまうが、そんな小さい事は関係ない。
今はだだ、ありのままを言葉に表した。
美咲が立ち上がりフィナーレを繰り出す。
「さぁ、みんな! これは昭和記念公園花火大会に向けた試作花火だ!」
美咲が両手を高く上げては広げると教室の天井が暗くなっては無数の花火がバンッ、バンッと鳴り響く。
まるで本当に花火を打ち上げてるみたいだ。
暫くすると花火玉が空中爆発せずに床に落ちては鼠花火みたいに炸裂する。
「美咲! これ本物か!?」
沙織先生の言葉に美咲は笑顔で親指を立てる。
「当たり前ですよ、先生。私の魔法花火は偽物なんかじゃ……」
「バカ! スプリンクラーが……ッ!?」
その瞬間、非常ベルが鳴り響き、天井のスプリンクラーから水が噴き出す。
悲鳴を上げながら教室の中を逃げ惑うクラスメイト。
おまけに美咲が打ち上げた魔法花火……鼠花火が床を駆け巡る様に破裂する。
「きゃー」「うわー」と悲鳴に叫びが入り雑じりながらだ。
暫くするとスプリンクラーが止まるが非常ベルが鳴っている為に先生達が何事かと集まる。
沙織先生は教頭先生に必死に頭を下げながら謝っており、当の美咲はずぶ濡れのクラスメイトに睨まれては。
「あはは……メンゴメンゴ。やり過ぎちゃった……かな?」
美咲の悪びれた様子もない顔。まるで何処かの洋菓子店のイメージキャラクターみたいな顔で舌を出している。
「やだな~みんな顔怖いよ……ちょっと!?」
美咲の手足を縛っては校庭のど真ん中に正座させる。
そして濡れた大量の教科書を膝に載っけては紙に墨字で『犯人』と書いて額に貼った。
「え~ん、みんな酷いよ~! 暑い《あづい》~! 碧、助けて~!!」
夏の太陽に焼かれながら校庭のど真ん中で許しを乞う美咲を私は眺めては静かに心の中で手を合わせた。
美咲……成仏しんしゃい。
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