第15話 第3章 同窓会 1 紳士達の同窓会
二人の似非紳士が居酒屋の隅で何やら相談している。
「でな、近藤のやつ、まだ関西に居てんねん」
「そうかー、確か、近藤の親父さんは自営業だったよな」
と、先程まで手術室で耳の穴を手術していた男が答える。
「ちゃうちゃう、あいつの親父さんはちっちゃい町工場の工場長や」
と、関西訛りのきつい上等なスーツに身を包んだ紳士もどきが言う。
「そーかー、零細企業で大変なんじゃないか?」
と無責任に耳鼻科医が言う。
「せやねん、それでな、相談があってな、お前を呼んだんや」
何処かズッコケタ感じを身なりで隠しきれない男が言う。
「あーそー、で、相談て?」
関西風イントネーションを含んだ標準語で医者が聞く。
「結局な、同窓会言うても四人しか集まらへんみたいな感じになってきてん。それでな、近藤だけ関西やん。せやしな、ワシ等二人で近藤を招待したろかなって思てんねん。ほら、市木も天涯孤独人や言うてるけど、結局の所、定職についてない単なる風来坊やん。それやったら、ワシ等二人で交通費と宿泊費を払ろたって、招待したろかいなって思うねんけど、どう?」
「うーん、それは良い考えだと思うけど。会費はどうするんだい」
「それは、全員で割り勘の会費制や」
「なるほどー、市木も近藤も会費だけは同額に払ってもらうって事だね」
「せやねん、で、近藤のことは市木には秘密にしといてな。あいつにバレたら、私も近藤の旅費と宿泊費を払うぞ、とか言うてややこしそうやん」
「だなー、確かにそういうところあるよなぁ。でもバレたら、あいつ怒るぞ」
「だからや、近藤にも宴会の場では、この事はすっかり忘れて、茶を濁すようなことは言うなや、って念押ししとこ思うねん」
「そーねー、分かった、賛成だ」
「よっしゃ!決まりやな。ほなら、その段取りで進めていくわ」
「うん、そーだね、よろしく頼むよ」
「任しとき! ワシを誰や思うてんねん」
「宝石屋さんの丸山社長だろ?」
「誰が仕事の話ししてんねん」
「あー、違うかったんだ」
と耳鼻科医の梅本が答えた。
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