第12話 7 誕生日ケーキ



「あら、美咲ちゃんじゃないの。いらっしゃい」

「こんばんは、ご主人さんは奥でケーキ作りですか?」

「ううん、もう夜でしょ。旦那はね朝は早いけど、夕方には仕事終わって、そうねぇ、今頃はお風呂にでも入っているんじゃないかしら。そうそう、どれにする?」

「どれにしようかしら?」

「ごめんね、この時間だと選ぶ程残って無いよねぇ」

「あっ、此れ、ください」

「ロールケーキね、珍しいわね、いつもはショートケーキなのに」

「はい、それと、」

ローソクも買おうとしたが、恥ずかしがり屋の弟のことだ、きっと嫌がるに違いない。そう思うとローソクやチョコレートで出来たメッセージプレートなどはやめることにした。

「やっぱりいいです」

「そう、わかった。で、この前の話、考えといてね」

「はい、ありがとうございます」

どう言う訳か、この店の女主人とは気が合う。いつの間にか、人生相談までしてくれるようになった。美咲の家庭事情も知っている。無口な旦那も彼女のことが気になってならない様子だ。自然とこの店で働くように勧める形になっていた。そして美咲も自然とこの店で働くようになって行った。

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