第179話 つかみとった勝利



 やった。勝った。

 巨大な炎の竜が消えたとき、ゴライは大地に伏していた。

 僕らの勝利だー!


「ゴライ、戦闘不能! やりました。ついに決着です。強力なバリア合戦をくりひろげた両者でしたが、最後はギガファイアーブレスでキメました。勝者、かーくんパーティー。勝利の女神は、かーくんパーティーに微笑みましたッ!」


 ウットリ……賞賛の雨あられ〜。

 オーディエンスの歓声がやまない。

 もしかしたら、人生で一番輝いてる瞬間かも。


 ゴライはすぐに救護室に運ばれた。ふつうなら死亡するほどのダメージだけど、戦闘直後だから、呪文ですぐに蘇生するはずだ。


「去年、おととしとノーダメージを通してきたゴライが、ついに敗れました。新星あらわる! その名はかーくんパーティー!」


 えへへ。パーティーの名前、僕にしといてよかったー。幸せ。かーくん、かーくんと連呼される、この誉れ。


 そのあと、僕らは表彰式で、麗しのセイラ姫から金メダルをもらった。記念品の数々や賞状や、花束や。


 鯛やヒラメの舞踊り的な閉会式があったのち、一時間の休憩だ。

 僕らはまだ帰らない。何しろ、ここからがメインイベントだ。ワレスさんとの特別試合であーる。


 閉会式が終わったあと、僕らは休憩室で、開始時間を待った。休憩室には僕らのほか、蘭さんたちや、復活したゴライパーティーもいる。特別試合には一位から三位までのパーティーが出場するみたいだ。


「ねえ、猛。けっきょく、ゴライさんはゴドバじゃないのかな? 決勝戦のあいだ、とくに変な動きしなかったよね」

「まだわかんないぞ。特別試合のドサクサにまぎれてってこともある」

「そっか」


 僕らはテントの片すみでコソコソ話してるんだけど、ゴライさんたちのほうも、僕ら——というか、蘭さんを見ながらボソボソ話してる。


 僕らが仲間だとバレるといけないから、まだ蘭さんたちとはしゃべらないようにしてる。


 ヒマなんで、僕はなにげにスマホを見た。


「あれ? 充電できてる?」


 電源スイッチを入れる。

 つ……ついた! 起動したぞ! 見ると、充電量が50%になってる。まだ満タンではないものの、とりあえず、スマホが使える!


「猛。特別試合まで、あと何分?」

「四十五分かな」


 四十五分でどれだけのが書けるだろうか?

 とにかく、書かないと! 早く蘭さんの体力をもとに戻してあげるんだ!


 僕はそれから試合開始まで、必死になってを書いた。

 研究所に到着したところまでだったからねぇ。そこで僕の特技がバレちゃった。

 長かったなぁ。あれからいろいろあった。うん。


 必殺両手打ちをいかして、フリック、フリック。


 僕の秘密を知られて、蘭さんの数値書きかえたら失敗して、研究所攻略!


 けど、ギガゴーレムを奪われちゃって、盗賊団のアジトまで追うものの、ゴドバに持ち逃げされちゃう。


 エレキテルの街で、どうにかこうにか、ギガゴーレムを停止させる僕らであった。このとき、ワレスさんがゴドバの腕をチョッキーン!


 その夜、貴族区の子どもが誘拐されて、スラム街に行くことになって、井戸のなかでグレートマッドドクターと戦った。


 えーと、でもそこにはもう子どもたちはいなくて、エレキテル港へかけつける。

 で、僕だけ船に乗りこんで、そこで猛と再会したんだ。


 船の魔物を制圧して、僕らは子どもたちとともに、あやうく漂流。ヒノクニに来て、特訓しつつ武闘大会に出場して優勝! なんと、優勝! くどいけど優勝! 今に至る、と。


 はあはあ。めっちゃ、かけ足だった。人生でこんなに高速で小説書いたことがあっただろうか? 誤字脱字はあとでなおそう。


 さあ、じゃあ、やっと、ここから再会した蘭さんの数値でも書きなおそうかなっと。


「試合開始時間です。参加者の皆さんは会場へお集まりください」


 ああっ、今から……今からだったのに。

 でも、しかたない。蘭さんが行っちゃったから、くわしいステータスが見れないよ。


 僕はスマホをミャーコ(ポシェット)にあずけて、会場へと出ていくのであった。

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