第177話 決勝戦3



 僕らの決勝戦は続く。

 さあ、こっちの番だ。


 まず、ポロンとハープをひいて、たまりんが歌う。ユラユラしてるから何かと思ったら、歌って踊るっていう詩人と踊り子の特性をあわせた特技だ。パーティー全体のHPとMPを50前後回復してくれる。HPの回復量はさほどじゃないけど、MPの50はわりと大きい。


 その上で、『元気いっぱい』を猛にかけた。自分の技で傷ついてた猛が全回復。

 これで、こっちもほぼ無傷。

 ふりだしに戻る。

 うーん。これは長期戦になるな。


「どうする? 猛」

「とりあえず、引き分けに持ちこめるのはわかったよ。このまま、おたがいに相手を倒すことができずに一時間たてば、制限時間が来て引き分けになる」

「ああ。そうだったねぇ」


 でも、引き分けじゃスッキリしないんだよねぇ。

 できれば、勝ちたい……。

 だからと言って、有効な技がなんにもないんじゃなぁ。


「あと使ってない技って、なんだろうな?」と、猛が言うので、僕は考えた。

「個人でしか使えない、生まれつきの特技じゃない? 兄ちゃん、なんかないの?」

「あるけど、たぶん、試合で使ったらルール違反になるやつだ」

「えっ? どんなの?」

「念写だよ」

「ああー!」


 そう。念写。それは兄ちゃんの最大の特技だ。現実世界でもそれができてしまう兄ちゃんは、やっぱり化け物だろうか?


「えーと、こっちで使うと、どんな技?」

「戦闘中の敵をカードのなかに封印する。そのカードを使って、封じこめた敵を使役できる」

「悪魔! 悪魔じゃん!」

「ははは。だから、ルール違反だって言ってるだろ」


「うーん。僕の特技は戦闘に特化したのないし。どれも補助的なやつ。アジのお医者さんは?」

「お医者さんはみんなの状態異常を治す技だよ。本を読むは自分の数値あげ。理系はマジックの効果があがる」

「うーん。アジも補助系かぁ」


 生来特技はたまに、ランクあがることで、急にまったく違う効果をもたらすこともある。だけど、今、この試合では役に立ちそうもない。


「あっ、ちょっと待てよ」


 急に猛が言いだした。

「特技の優先順って、生来特技、職業特技、レベル高いほうだろ?」

「そうだったね」


 さっき講義を聞いたばかりだ。


「それが何か?」

「反射カウンターは、格闘王の職業特技なんだよ」

「うん。そうだね」


「職業特技ってのは基本的にランクアップしない」

「うん。そうかもしんない。あがったとこ見たことないね」


「つまり、職業特技同士は本人のレベルの高いほうが優先されるんだ」

「うん。だから?」


 猛は哀れむような目で僕を見た。まだ気がつかないのかって顔。やめれー。


「だからさ。封じ噛みだよ。ぽよちゃんとゴライのレベル、どっちが高いんだ?」

「ああーッ!」


 そうか! ぽよちゃんのほうがレベル高ければ、封じ噛みで反射カウンターを……。


「ぽよちゃん!」

「キュイ!」


 ぽよちゃんのレベルは、59!

 ゴライは?

 ゴライは…………5、8。58だァーッ!


「ぽよちゃん! 封じ噛み!」

「キュイッ!」


 タタタタタ——

 走るぽよちゃん、勇ましいぞ。そして、ガブリ!


「行けた! 封じ噛み、反射カウンターすりぬけたー!」

「で、封じられたのはなんだ?」


 あっ、そうか。そこが大事なとこだ。

 封じ噛みじたいは、攻撃力ほとんどない。反射カウンターを封じて、そのすきに猛の攻撃をたたきこむんだ!


「えーと、ゴライって格闘王以外、なんにもマスターしてない。特技はほんとに三種類だけ」


 個人職については才能の有無で、だいぶ条件変わるみたいだ。つまり、ゴライは生まれついての天才武闘家。ありあまる才能で、武闘王を経ずして、格闘王の職業に開眼した。


 それで、三つしかない技のうち、色が薄くなってるのは……?


「……ダメだ。千手観音だ」


 むうっ。そうそう都合よくは行かないか。

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